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2017年9月19日 (火)

プレイバック葵 -徳川三代-・(23)宮中重大事件

やんごとなき殿上人の中でも
摂政・関白の座に就くお家柄を
「摂関家」あるいは「五摂家」と言う。
(近衛・鷹司・九条・二条・一条)

“名門中の名門”の五摂家は鎌倉時代の中期に確立され
藤原氏の子孫によって脈々と受け継がれてきた。
この伝統を断ち切り、関白の座を横取りしたのが
武士の頭領・豊臣秀吉と豊臣秀次である。

徳川家康は、これをけしからんことだと心得て
関白の座を再び五摂家へ返上したのである。

しかし、武力財力ともに優位の江戸幕府は
露骨な人事介入を行い、今や五摂家の権威は有名無実、
関白の座と言っても形式的な飾り物と化しつつあった。
これは家康の謀略ではないか──。


慶長13(1608)年4月下旬、修築工事が完了した駿府城に
京都所司代・板倉勝重がやって来ました。
京都守護を司る京都所司代は警視総監、県公安委員長、
アメリカで言えばFBI長官という感じであります。

家康に指示されて勝重が調べ上げたところでは
公家衆の風紀は乱れに乱れ、真っ昼間から酒色に耽り
不義密通が頻繁に行われているとのこと。

それを唯した勝重に、関白は
そんなことはあるはずもない、
京都所司代ごときが何を言うかとご立腹。

「関白を……変えねばならんな」
家康はつぶやきます。

今の新将軍にとって、ねじ伏せるべき相手こそ
朝廷だと家康は考えているのです。
そして懸念すべき案件は、その朝廷と
今や負け犬となった豊臣家が結びつくことなのです。

家康が次の天皇に八条宮ではなく
政仁(ことひと)親王を推挙する理由は、
家康の娘・市姫を入内させ、朝廷と縁戚関係になり
徳川家の地位を上げたいためであります。

これをしくじれば徳川家の力は地に堕ちます。
ゆえに市姫入内は、関ヶ原のように
天下分け目の戦いと思って
取りかからなければなりません。


この年の暮れ、京都の高台院の屋敷に来客あり。
右大臣・九条忠栄と、正室の完子姫であります。

家康が関白の座をすげ替え、
忠栄に関白就任の内示があったそうです。
それは家康の強い奏請があればこそなのですが、
その裏では高台院の引き立てもあったと推測できます。

腐れ斬った公家衆を立て直すため、
幕府の後ろ盾で忠栄が大ナタを振るうのは
忸怩たる思いだと忠栄は吐露しますが、

たとえ天皇のご機嫌を損ねたとしても
後の世のためにもきっぱりと善悪を示しなさい、と
高台院は忠栄を叱咤激励します。


福島正則、加藤清正といった西国大名が
次々と城の修築を始めまして、
家康はそれを謀反の兆しかと疑念を持ち
慶長14(1609)年2月、秀忠に追及を命じます。

もとより両者にそんな思惑は一切なく
城も数年経てば柱は腐り石垣は崩れるもので
単純にそれを直したいと思った時期が
幕府の武器弾薬発注と重なっただけなのですが、

正則は、せっかく修繕した広島城の天守閣を
家康の見せしめとして打ち壊すと悔し涙を流します。
正則の根底には、現在の家康があるのは
関ヶ原の戦いでの福島勢の勝利があったればこそ、
という思いが残っているのです。


4月1日、
鹿児島城主・島津家久は家康の命により琉球に出兵。
首里城を陥落させます。

5月3日、若狭小浜城主・京極高次が病没。
正室お初の方は落飾し、常高院となります。


そして7月4日、
京都御所で重大な事件が発覚します。

忠栄が朝廷の乱れを正すべく天皇に報告したのですが
元関白の近衛信尹、前関白の鷹司信房、参議の烏丸光広は
男女の仲は恋し恋されの間柄、道ならぬ恋をしなければ
和歌も詠めぬと笑って聞き流そうとするのですが、

道ならぬ恋は世のひんしゅくを買い
公家の権威は地に堕ちる、と言う忠栄は
ついに爆弾を投げ入れます。
「天子様の女御に恋を仕掛けるは、これ邪恋にあらずや!」

後陽成天皇は御簾を上げさせ
板倉勝重が上げた報告書を忠栄に読ませます。

宮中内の見張り役の報告によれば、乱行を働いた公家衆は
この場にいる烏丸光広をはじめ、左近衛権中将・大炊御門頼国、
左近衛少将・花山院忠長と難波宗勝ら8人。
そして女官は、天皇の寵愛厚い新大典侍・広橋局、
権典侍・中院局、中内侍・水無瀬、菅内侍・唐橋局ら5人。

こうして未曾有のスキャンダルが内部告発により暴かれ
乱行に加担した公家衆は次々と官職を解かれ
女官たちもそれぞれの屋敷に押し込められます。

家康は、単に官位を剥奪しただけ、
屋敷に押し込めただけの処分に納得がいきません。
このままもみ消しにされるのだけはならぬと
加担した者をすべて引きずり出せと躍起になります。

公家方の窓口は武家伝奏の大納言・広橋兼勝ですが、
彼は事件の首謀者・広橋局の実父であります。
実父であれば寛大な処分を願うのも無理もないのですが、
京都所司代は相当な処分は行うと強気に圧力をかけます。


作:ジェームス 三木
音楽:岩代 太郎
題字:ジェームス 三木
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[出演]
西田 敏行 (徳川秀忠)
尾上 菊之助 (豊臣秀頼)
田村 亮 (藤堂高虎)
石倉 三郎 (青山忠俊)
石田 太郎 (大久保忠隣)
渡辺 いっけい (本多正純)
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鈴木 瑞穂 (板倉勝重)
保坂 尚輝 (大野治長)
苅谷 俊介 (加藤清正)
神山 繁 (本多正信)
金田 龍之介 (天海僧正)

波乃 久里子 (お初)

津川 雅彦 (徳川家康)
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中村 梅雀 (語り・水戸光圀)
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草笛 光子 (高台院)
蟹江 敬三 (福島正則)
林 隆三 (土井利勝)
小川 眞由美 (淀殿)
岩下 志麻 (お江)
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制作統括:川合 淳志
演出:尾崎 充信

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コメント

「天子様の女御に恋を仕掛けるは、これ邪恋にあらずや!」
その後の上奏文が読み上げられる際の烏丸光弘の「ぬ、濡れ衣じゃ!」とという際の醜態、上奏文が読み上げられるにつれ、怒りと驚きでみるみる顔が強張る後陽成天皇、それとともに恐怖で引きつる烏丸光弘、上奏文読み上げが終了して後陽成天皇が退席した後の近衛と鷹司の何とも言えない表情が見どころでありますよね。
あと、気になったのが烏丸光弘の「人を乞うればこそ相聞の歌も生まれる。恋せずして良い歌が詠めようか。」という発言なんですが、公家友達を誘って集団不義密通して人の心を打つ良い歌が詠めるものなんですかね。

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山城守さん、こんにちは。

悪事を暴露されてみるみる顔が変わっていくというシーンは、これまでにも何度となく見て来たものですが、やはり権力者の転落というのはどこか痛快ですね。特に権力的にも官位的にも下の者が上の者を告発するという、普段私たちがやりたくてうずうずして(?)いながら、負けてしまって言い出せないことが多いだけに、一般視聴者の代弁者になっているのかもしれません。
密通でいい歌……。いろいろな角度からの恋の歌を歌うためには、いろいろな恋愛を経験しなければならないと考えてのことなのでしょうけど(私自身、なぜ烏丸光弘の肩を持つのか謎ですが(笑))、糾弾されるということはそれだけの悪事というわけで、やってはいけないことを「内密に」やってしまったことで足元をすくわれたとしか。やはり正義は勝つんですよ(笑)。

投稿: ★山城守 | 2023年4月 2日 (日) 21:27

「ただの」不義密通なら「他人の配偶者と知っていても愛していた」というのが成立しますが、彼等がしたことは「今日はあの女官にしよう」等と公家仲間と相談して淫行を重ねただけですからね。どれだけ御役目に不誠実なんだか。

参議烏丸光弘を除けば犯人の公家は近衞府高官ですね。
近衞府は禁裏を警護する、今で言う皇宮警察のようなもの

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山城守さーん。こんにちは。

>どれだけ御役目に不誠実
高官にまで上り詰めたのだから、好き勝手やっていいよね! と考える高官と、いやいや高官だからいいとかないじゃんダメなものはダメよと考える高官……。江戸時代であっても内部告発があってよかったなと本気で思いますw 一度、帝の印象を悪くしてしまえば、今後に相当な影響を与えそうな気がします。

投稿: ★山城守 | 2023年4月 5日 (水) 22:35

私は、高官にはそれに相応しい品位と見識、能力があってほしいと思いますね。
これが1人か2人の近衛府高官が女官に身を焦がすほど懸想して、というのなら同情もできたんですが、「集団不義密通」では、「……」(https://www.youtube.com/watch?v=OEnILzXDoRU 太田裕美「夕焼け」)だの、「……」(出展同じ)だの、「……」(https://www.youtube.com/watch?v=ELOVsKYoZvY 同「雨だれ」)だの、「……」(出展同じ)だの言った処で何の説得力もない訳で、こんなもの恋愛でもなんでもありませんよね。

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山城守さーん、こんにちは。


>高官にはそれに相応しい品位と見識、能力があってほしい
確かに、それがすべてだと思いますね。

[追記]
コメント中、楽曲の歌詞の引用がありましたが、かつて当ブログで権利関係の侵害で警告を受けた事情もあり、こちらで修正をさせていただきました。予めご承知おきください。

投稿: ★山城守 | 2023年4月15日 (土) 19:09

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