プレイバック葵 -徳川三代-・(28)大坂冬の陣
慶長19(1614)年、秋。
風雲急を告げる大坂城には関ヶ原で敗北した旧大名
あるいは浪々の身を託(かこ)つ旧家臣が
手勢を集めて続々と乗り込んだ。
さて、これらの浪士軍団が
苦戦を覚悟で大坂に集結したのは
どのような存念であったのか。
豊臣家大事の面々が関ヶ原の合戦で大敗を喫し恨み辛みの14年、
徳川の天下を快く思わず今こそ一矢報いんと
錆びた鎧のほこりを払い痩せ馬にむち打って
馳せ参じたのは、これぞ「男の花道」「武門の誉れ」……?
しかしこれは綺麗ごとに過ぎず、もっとリアルに考えれば。
武運拙く戦い敗れ、お家は断絶、家禄は没収、
失業浪人路頭に迷い、楊枝削りだ傘張りだ、
食うや食わずのアルバイト、
そこに突然天の声、豊臣方についたらば
お金上げるよいくらでも、おいしい仕事が待ってるよ、
浪人たちは我先に、なりふり構わず駆けつけた……?
いやいやこれは身もふたもない。ポエムがない。
大坂城は武士の憧れ、太閤殿下が金に糸目をつけず
精魂の限りを尽くして難攻不落の城を築いた。
浪人生活さらりと捨てて、武士の身分に再び戻り
一旗揚げたい大坂城、一か八かの大勝負──。
慶長19(1614)年10月15日・大坂城。
去る12日に堺奉行所を襲撃して
多数の武器弾薬を手に入れた大坂方は
片桐且元軍を迎え撃って敗走させます。
大野治長が立てた計画によると
徳川家康軍が大坂に到着する前に摂津茨木城を攻め落とし
一部の兵を京に差し向け、洛中を焼き払うというもの。
意見を求められた真田幸村は
敵の十数万に味方は7万程度で勝ち目のない戦ゆえに
一気に二条城を落とし、宇治瀬田を抑えて西国との往来を遮断。
出ばなを挫いて戦果を上げれば西国大名も味方になる、と答えます。
豊臣秀頼には天王寺辺りにまで出馬してもらえれば
幸村の計画は完璧なのですが、治長は淀殿が認めぬと大反対。
太閤秀吉が心血注いで築き上げた鉄壁の大坂城を守らずして
外に打って出るのは心得難し、と大いに水を差します。
秀頼は、治長に全てを一任します。
将軍徳川秀忠は、大坂の陣への参陣を望んで
家康へその出馬の希望を伝えます。
秀忠は、やはり関ヶ原の合戦での失態が尾を引いて
それを挽回したいのですが、軍勢は有り余っているし
その一人ひとりが恩賞目当てであるので
秀忠が加わると大坂65万石を分配できなくなるわけです。
好きにせい、と家康は秀忠に伝えます。
それを受け、秀忠は松平忠輝を江戸城に呼び
秀忠不在のときの留守居役を命じます。
忠輝は兄弟5人のうち自分のみが松平姓だと
家康に疎まれていると悔し涙を流します。
秀忠は、弟の涙を見ると
いずれ家康に取りなしてやるから、としか言えません。
21日、大坂方は城の周辺を焼き払います。
そして23日、家康は伏見城に入ります。
それに合わせて家臣たちも伏見城入りしますが、
その中に、豊臣家重臣だった片桐且元の姿が……。
且元は、豊臣家が徳川に楯突いてきたのは
不忠な大野兄弟らがいるためであるので、
どうか秀頼の命だけは助けて欲しい、と頭を下げます。
秀忠は10万の軍勢を率いて猛然と西に向かい
江戸を出発してわずか5日目には
遠江掛川まで達します。
「早い……早いぞ!!」
11月9日。
幸村は大坂城に南側の弱点があることに気づき
そこに曲輪を築くことを提案します。
これがいわゆる「真田丸」です。
11日、秀忠軍が二条城に到着します。
「あほーッ! たわけ! うつけ!! 間抜け!!!」
家康はたいそうご立腹です。
くたくたに疲れ切った兵士と口から泡吹く馬が
戦の役に立つかと考えれば、自ずと答えが出てきます。
わずか11日で10万の大軍を上洛させたのは無謀なのです。
16日、家康は大和法隆寺、秀忠は摂津岡山、
伊達政宗は橋本を南下中。
17日、家康は摂津住吉、秀忠は摂津平野、
藤堂高虎は天王寺。
18日、家康と秀忠は摂津茶臼山で合流──。
そしてついに家康の号令により戦いが始まります。
26日、今福の戦い。
そして真田丸の戦い。
淀殿は、秀吉の遺物である甲冑を身にまとい
城内の兵たちの士気を上げようと躍起です。
徳川忠直と前田利政の軍勢に意思の疎通が図れず
藤堂高虎の軍勢がとばっちりを受けて
合わせて2,000の兵を失ってしまいます。
家康は、カラ鉄砲を撃ちまくるなどして敵の逃げ道を塞いで
敵が疲れるのをじっと待つ作戦を立てます。
その上で家康は、大坂城に忍びの者を忍び込ませ
千姫の居場所を確かめさせます。
家康によるフェイント作戦は功を奏し
連日連夜のかけ声やカラ鉄砲の音で
大坂方はへとへとに疲れ始めます。
兵たちが疲弊し投げやりな気持ちになってきた今こそ
常高院は和睦を提案しますが、淀殿に突っぱねられます。
浪人衆たちが騒ぎ立てる、と
あくまでも戦うことを主張する淀殿ですが、
島津や伊達、浅野ら大名たちが豊臣に味方するという
治長の読みは、まったく外れていたのです。
「母上……この戦、先が見えておりまする」
秀頼の一言で、和睦となります。
豊臣から家康に和睦の提案がありますが、
淀殿が江戸に下向するのは可ながら
浪人衆に褒美をやらなければならないので
知行を増やせ、と言ってきています。
返答に及ばず、と家康はそっぽを向いてしまいます。
「大砲じゃ。大筒を本丸に打ち込め」
家康は高虎に命じます。
本丸命中の報告を受けた秀忠は、
愛娘の千姫を思って涙を流します。
作:ジェームス 三木
音楽:岩代 太郎
題字:ジェームス 三木
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[出演]
西田 敏行 (徳川秀忠)
尾上 菊之助 (豊臣秀頼)
田村 亮 (藤堂高虎)
すま けい (伊達政宗)
渡辺 いっけい (本多正純)
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西郷 輝彦 (真田幸村)
保坂 尚輝 (大野治長)
鈴木 瑞穂 (板倉勝重)
神山 繁 (本多正信)
波乃 久里子 (常高院)
津川 雅彦 (徳川家康)
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中村 梅雀 (語り・水戸光圀)
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林 隆三 (土井利勝)
小林 稔侍 (片桐且元)
小川 眞由美 (淀殿)
岩下 志麻 (お江)
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制作統括:川合 淳志
演出:尾崎 充信
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