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2018年1月12日 (金)

プレイバック山河燃ゆ・(02)戒厳令

昭和21(1946)年5月、極東国際軍事裁判所での
天羽賢治による起訴状朗読が続けられています。

それを読み上げながら、賢治の脳裏には
昭和11(1936)年2月26日に湯河原・伊藤屋旅館で起きた
軍隊による襲撃事件が甦ります。


国家革新のため、憲兵隊たちが牧野伸顕を討伐に襲ったのです。

見張りの軍人の隙をつき、旅館の別館に踏み入れた賢治は
炎が迫る中、着物姿の女・三島典子を救出します。

騒ぎにようやく起きた天羽 忠も駆けつけますが、
別館から裏山へ逃げる人影を見て、
それが兄・賢治のものであると確信。

裏山へ向けて銃を構える憲兵隊に体当たりして
逆に憲兵隊に叩きのめされ、足をケガしてしまいます。


仲間と一緒に逃げたのですが、
途中ではぐれてしまったようです。

雪道を裸足で逃げてきた典子を見て
自分の下駄を典子に譲り、
着ていた学ランも着せてやります。

事件が起きた旅館に戻るのは危険すぎるので
小田原まで行って警察に助けを求める手もありますが、
それは典子が望まなかったので、
賢治はヒッチハイクで東京を目指すことにします。

賢治も宿に荷物を残していますが、
まぁ忠がいることだし、何とかなるでしょう。

しばらく待つと、1台の車がこちらに向かっています。
賢治は最近見たアメリカ映画のように
親指を立ててドライバーに合図を送りますが、
知ってか知らずか、黒い車は無情にも通過していきます。

ともかく、典子はどうして襲撃を受けたか分かりません。
もちろん賢治もそれは分からないわけですが、
自分たちを超えた何かが動いた、変わったのだろう、
ということしか理解できません。


総理大臣官邸も伊藤屋と同じように
岡田啓介首相が憲兵隊の襲撃を受け、
そして侍従長官邸でも同様に
鈴木貫太郎侍従長が襲撃されて重傷を負います。

斎藤 実 内大臣の私邸、高橋是清大蔵大臣の私邸、
渡辺錠太郎教育総監の私邸でも憲兵隊の襲撃があり、
三者とも死亡。

ただ、宮中では特に異変がなく
天皇陛下も無事の様子なので、
島木文弥が心配するようなクーデターには
発展しないだろうと東郷茂徳はホッとしています。


また車が見えてきました。
賢治が親指を立てて合図しても止まらなかったので、
今度は典子が止めてみることにします。

通り過ぎた……かに見えましたが、
通り過ぎたところで車は止まり
バックして戻ってきました。

乗っていたのは外国人ですが、
賢治は日系二世なので、英語は得意です。
東京まで行きたいが、途中まででもいいからと伝え
「どうぞ」と言葉をもらいます。

車に揺られながら、
賢治は軍隊に襲われて逃げてきたと言うと
運転していた外国人は急ブレーキをかけます。
「私はUAP通信社のジェームズ・トムソンです」

トムソンは熱海で事件の噂を聞いて湯河原に走ったものの
警官や消防団が規制をかけていて
入ることができなかったのだそうです。

トムソンといろいろ話しているうちに、
車はようやく東京に入ります。
そこでトムソンは号外を手にしまして、
それを賢治に渡します。

──陸軍省発表。
本日午前五時ごろ、一部青年将校らは
左記箇所を襲撃せり──。

途中、憲兵隊の検問で止められたジェームスの車。
後部座席に乗っていた賢治と典子は
強制的に下車させられます。

しかも典子の懐から拳銃が出てきたことで
二人を憲兵隊に強制連行しようとしたところで
久永大尉が通りかかります。

典子を内務官僚の娘と知っていたので
晴れて解放されることになり、
久永大尉が典子を自宅まで送ることになりました。

典子は賢治とトムソンに礼を言って
久永が乗る車に乗り換えるのですが、
典子と賢治はその後、再会することになります。


賢治は無事、下宿先の島木邸にたどり着きます。
湯河原での出来事はそこそこに、
湯河原に置いてきた忠に連絡をとります。

忠は忠で、賢治のことが心配だったのですが
とりあえず無事だということが分かって安心しました。
もう一泊して明朝早く発ったらどうか、との賢治の提案に
こちらもゴタゴタしているから
すぐに出発する、と言って電話を切ります。

そんな忠がいる湯河原には、三島啓介の姿がありました。
確か妹が伊藤屋に泊まっていたはず、と
わざわざ東京から迎えにきたのです。

しかし妹の姿はそこにはありませんでした。
実家に電話して、久永大尉が連れ帰ったことを知った啓介は
東京に戻ることにします。

電話を切った啓介ですが、
階段の上から荷物が一つ転がり落ちてきました。
階段から下りてきたのは忠です。

このままでは東京に帰れない、と困っていた忠ですが、
ボクも東京なんで、と啓介が送ることになりました。

東京に向かう車の中で、
忠はなお一層日本への思いを強くしています。
兄はアメリカへ帰りますが、自分は日本に残る。
そう言って父に詫びます。


ロサンゼルス・リトルトーキョー──。

チャーリー田宮は井本梛子とデートしています。

遊園地のメリーゴーランドに乗りながら、
梛子は、チャーリーが車の中で
畑中エミーとキスしていたウワサをそれとなく聞いてみますが、
本当じゃないよ、と軽く言われるだけです。

梛子としてはチャーリーと結婚するつもりでいるのですが、
正直、ちょっと不安を感じてしまいます。

その日の夜、チャーリーの誕生日パーティにやってきたエミーが
チャーリーと楽しげにダンスする姿を見て、
梛子はなお一層不安を強くします。


天皇陛下から勅命が下ります。

そもそも今回のクーデターは、国民の貧困を助け出そうと
腐敗した政治家を排して天皇親政を復活させんとしたもので
当然政治家を排除した後は天皇に直訴することになるわけですが、
天皇陛下はそれを拒否し、手向かうなと勅命を出したのです。

──戒嚴司令部發表

敕命が發せられたのである。
既に天皇陛下の御命令が發せられたのである。
お前達は上官の命令を正しいものと信じて絶對服從を
して、誠心誠意活動して來たのであろうが、
お前達の上官のした行爲は間違ってゐたのである。
既に敕命天皇陛下の御命令によって
お前達は皆原隊に復歸せよと仰せられたのである。
此上お前達が飽くまでも抵抗したならば、それは
敕命に反抗することとなり逆賊とならなければなら
ない。
正しいことをしてゐると信じてゐたのに、それが間違って
居ったと知ったならば、徒らに今迄の行がゝりや、義理
上からいつまでも反抗的態度をとって
天皇陛下にそむき奉り、逆賊としての汚名を
永久に受ける樣なことがあってはならない。
今からでも決して遲くはないから
直ちに抵抗をやめて軍旗の下に復歸する樣に
せよ。
そうしたら今迄の罪も許されるのである。
お前達の父兄は勿論のこと、国民全体もそれを
心から祈ってゐるのである。
速かに現在の位置を棄てゝ歸って來い──。


賢治の目の前には、
極東国際軍事裁判が続けられています。


昭和11(1936)年2月26日、
青年将校たちが下士官兵を率いて起こしたクーデター未遂事件
「二・二六事件」が発生する。

昭和20(1945)年8月15日、
日本がポツダム宣言を受諾し第二次世界大戦が終結する。


あと9年5ヶ月──。


山崎豊子 作『二つの祖国』より
脚本:市川 森一
音楽:林 光
──────────
[出演]
松本 幸四郎 (天羽賢治)
大原 麗子 (三島典子)
多岐川 裕美 (畑中エミー)
川谷 拓三 (川辺庄平)
堤 大二郎 (天羽 勇)
柏原 芳恵 (天羽春子)
柴田 恭兵 (荒木)
篠田 三郎 (三島啓介)
──────────
沢田 研二 (チャーリー田宮)

島田 陽子 (井本梛子)

鶴田 浩二 (東郷茂徳)
──────────
山内 明 (三島誠之介)
柳生 博 (白浜)
竜崎 勝 (久永大尉)
アグネス・チャン (張 美齢)
高森 和子 (ひさ)
津島 恵子 (天羽テル)
児玉 清 (島木文弥)

三船 敏郎 (天羽乙七)

西田 敏行 (天羽 忠)
──────────
制作:近藤 晋
演出:伊豫田 静弘

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