大河ドラマ西郷どん・(03)子どもは国の宝 〜西郷家の大借金〜
薩摩藩主・島津斉興の悪政を正したい西郷吉之助は
江戸にいる島津斉彬に向け、何通もの意見書を書きつづりました。
このままにては早晩 百姓どもことごとく根絶は必定に候
日々の糧にもことかき候て いかに出精働き候えども
重き年貢納め候ごとあたわず候
その故に娘を売り候者もこれあり候
田畑を捨て 逃散する百姓も数多あり候──
吉之助は、1日も早い新藩主誕生を願っていました。
薩摩は日本一武士の割合が高い反面、それゆえ
侍の多くは百姓同様貧しい暮らしを送っていました。
下級武士の西郷家も貧しく、
加えて11人の大家族でありました。
祖父・西郷龍右衛門は、
イヤな咳をして寝込むようになりました。
その上、いつも元気な三男の西郷信吾まで……。
腹を下して止まらない信吾を薬師に見せる金がないのです。
無理して薬師に見せれば、龍右衛門が医者にかかれません。
刀を質に入れて、と吉之助は言いますが、
武士が刀を手放すなど考えられません。
ちょうど帰って来た父の西郷吉兵衛は
思い切って借金すると言い出すし、
吉之助は借金するぐらいなら家を売った方がまだいいと言い
親子ゲンカが始まります。
江戸城。
阿部正弘──老中首座。
幕府における最大の権力者です。
薩摩から江戸に戻った斉彬は
異国との密貿易、琉球出兵についての偽りの申立てなど
斉興の悪政がつづられている書状を阿部に渡します。
「父、斉興を良きように」
あまりに借金! 借金! 言う吉兵衛に
お隣さんの大久保次右衛門は
どこの物好きがお前に金を貸すのか、と冷静に言います。
それはそうなのですが、啖呵を切ってしまったので
薩摩藩家老の赤山靭負の口利きで、金を貸してくれる商人・
板垣与三次を紹介してくれることになりました。
が、武士の威厳はなくしたらいかん、と
吉兵衛は上から目線で100両貸せと言い
板垣屋はそっぽを向いてしまいます。
そのまま立ち去ろうとする板垣屋に、
吉之助は土下座して懇願。
その熱意に打たれた板垣屋は
100両を貸すことにします。
この後、この100両の返済にはかなり苦しみ
明治維新後まで続いたと記録にあります。
暮らしは決して楽にはならなかったのです。
帰り道、吉之助は芋泥棒とよばれた
中村半次郎という少年と出会います。
父は下級武士ながら藩の金を使い込んで捕らえられ
島流しとなって土地は没収されたわけです。
半次郎が畑から取った芋も、
もともとは半次郎の家が所有していた畑であり
自分の家の作物だからという理由ですが、
追いかけて来た農民たちを木刀で倒し、去っていきます。
その半次郎に、吉之助はもう一度出会うことになります。
西郷家の下男として働いてくれた熊吉の奉公に
御礼をすべく、借りた金で買った米を実家に届けた翌朝、
半次郎たち家族が逃げ出そうとしていたのです。
もうこの土地では生きていけない、と。
この時代、無断で藩の外に飛び出す行為は
固く禁じられており、武士なら脱藩、
百姓では逃散(走り)と言われていました。
郡方書役助というお役目をいただいている以上、
脱藩や逃散は見逃すわけにはいかない吉之助。
脱藩は見つかったら死罪であると分かっている吉之助は
ひとまず家族を荷車に乗せて、皆に見つかる前に家に戻します。
吉之助の根底には、子どもは国の宝、という
斉彬の考えが沁みわたっているのです。
そのころ、斉彬は江戸藩邸で
立て続けに3人の子どもを亡くしています。
そして今、寛之助まで亡くしました。
呪詛調伏の札が見つかり、
薩摩藩主の座を斉彬ではなく久光に譲らせたい
久光の母・由羅の陰謀ではないかと噂が立ちます。
吉之助は役所に呼び出しを食らい
逃散の手伝いをしたと詰問されますが、
そのピンチを助けてくれたのは赤山でした。
吉之助は、さらに赤山に
半次郎の家が所有していた畑を
赤山の力で安堵してもらえないかと頭を下げます。
農民が貧しくて大変なのとおなじように
武士も貧しくて大変である、と。
武士は逃げることも出来ず、暮らしのために
刀を鍬に持ち替えて畑を耕さなければなりませんが、
その畑も取り上げられたとあっては
もう生活していくことが出来ません。
なんとかしてみる、と赤山は笑います。
12月、老中阿部は
江戸城に調所広郷を呼びつけます。
調所は、異国との密貿易、琉球出兵まで
書かれてあることはすべて事実だと認めますが、
それは藩主斉興には関わりなく
すべて自分がやったこと、と譲りません。
薩摩まで検分に行くぞ、と脅す阿部ですが、
調所はその日の夜、服毒して亡くなります。
不正は全て自分の独断でしたことであると
全ての責任を被ったのです。
斉彬が調所を追い詰めて殺したと
斉興は、斉彬に味方する者たちを
次々と処罰していきます。
切腹や島流しなど、総勢50名。
世に言う『お由羅騒動』──。
有馬新七や村田新八、大久保正助らが吉之助宅に集まり
これからの薩摩についてこそこそと話していたところ
吉兵衛が無表情で帰宅しました。
「赤山様にな、切腹のご沙汰が下った」
赤山靭負、薩摩の未来を担うべき
貴い命の火が消えました。
嘉永元(1848)年12月19日、
調所広郷が江戸の薩摩藩邸で服毒自殺をする。
明治10(1877)年9月24日、
西南戦争で西郷隆盛が討ち死にするまで
あと28年9ヶ月──。
(大河ドラマ『翔ぶが如く』では第1回「薩摩藩お家騒動」付近)
(大河ドラマ『篤姫』では第2回「桜島の誓い」付近)
原作:林 真理子
脚本:中園 ミホ
脚本協力:三谷 昌登・小林 ミカ
音楽:富貴 晴美
タイトル映像・題字:L.S.W.F
語り:西田 敏行
──────────
[出演]
鈴木 亮平 (西郷吉之助)
瑛 太 (大久保正助)
黒木 華 (岩山 糸)
桜庭 ななみ (西郷 琴)
北村 有起哉 (大山格之助)
高橋 光臣 (有村俊斎)
渡部 豪太 (西郷吉二郎)
堀井 新太 (村田新八)
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塚地 武雅 (熊吉)
水野 久美 (西郷きみ)
大村 崑 (西郷龍右衛門)
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沢村 一樹 (赤山靭負)
戸田 菜穂 (喜久)
岡本 富士太 (板垣与三次)
青木 崇高 (島津久光)
小柳 ルミ子 (由羅)
藤木 直人 (阿部正弘)
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鹿賀 丈史 (島津斉興)
竜 雷太 (調所広郷)
佐々木 すみ江 (イシ)
平田 満 (大久保次右衛門)
風間 杜夫 (西郷吉兵衛)
松坂 慶子 (西郷満佐)
渡辺 謙 (島津斉彬)
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制作統括:櫻井 賢
:櫻井 壮一
プロデューサー:小西 千栄子
演出:野田 雄介
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『西郷どん』
第4回「新しき藩主」
デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
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