プレイバック山河燃ゆ・(28)アメリカ陸軍日本語学校
1943(昭和18)年5月・ミネソタ州ミネアポリス。
アメリカ陸軍日本語学校に入って行く
天羽賢治の姿があります。
賢治はここの学校教員として働いているのです。
陸軍兵士たちからもなかなか慕われているようで
受け持ちのクラスの生徒たちと明るく笑い合っています。
2月のガダルカナルの決戦のときの
日本軍が発した文書が届き、
オーソン相川は、賢治の受け持つクラスに
その翻訳を依頼します。
ここミネアポリスでは、マンザナール収容所のような
軟禁状態という息苦しい空間ではなく
自由に働きに出られるし、ショッピングも思いのままにでき
のびのびと暮らしていけるいい環境です。
賢治は、妻の天羽エミーが退屈していないかと
外に働きに出ることを提案してみますが、
エミーは専業主婦をとても楽しんでいます。
一方で、田宮梛子は日系人の働き口を探すボランティアに
応募してみたいとチャーリー田宮に相談します。
チャーリーはしぶしぶ承諾しますが、
やめろと言ったら即座に辞めさせるつもりです。
チャーリーは、いつまでもここの日本語学校の教官を
しているつもりはないのです。
オーストラリアにあるマッカーサー司令部(極東司令部)で
働きたいという気持ちを持っているのです。
情報部で働くことが広い人脈作りに役立つし
それが結果として出世につながっていくから、という理由です。
満州ハイラルに派遣された
忠が所属する鹿児島・西部第18部隊。
手榴弾を扱う訓練で、手の震えが止まらない伊佐新吉が
手を滑らせて手榴弾を部隊側に落としてしまい
みながウワッとのけぞる中、天羽 忠は危機一髪
手榴弾を野原に向かって投げ、事なきを得ます。
そんなこともあり、上官の評価がますます高まる忠です。
上官に殴られ、同じ部隊の兵士たちに慰められる新吉ですが
幼なじみの忠のことについてあれこれ聞かれるうちに
嬉しくなって、ついつい“柔道選手権のロサンゼルス代表”と
口を滑らせてしまいます。
敵国の地名が出てきたことで、兵士たちに動揺が走ります。
「忠どんはれっきとした薩摩隼人じゃ! 二世なんかじゃなかど!」
しかし、時すでに遅し、です。
上官のところから戻った忠は、鬼頭軍曹から何発も殴られます。
家族はみんなアメリカにはいるが、自分は正真正銘の日本兵……、と
言い訳すらさせてもらえません。
日系人の働き口を探しに、
ミネアポリス中を歩き探して回る梛子ですが、
くたくたになって自宅に戻ってきてみれば
チャーリーがジロー武藤とバーの女の子2人を
自宅に呼んで馬鹿騒ぎです。
好き勝手に振る舞う4人を見て、梛子は嫌気が差し
怒って3人を追い出してしまいます。
ベロンベロンに酔っぱらって3人を見送ったチャーリーは
自宅のドアを閉めるとスッとしらふに戻ります。
チャーリーは酒に酔っているふりをしていたのです。
酒に酔えば真実、本音を言ってくれる。
そうやって武藤から何かを聞き出そうとしていたようです。
梛子は、そこまでして出世は望まないとチャーリーに言います。
時として、チャーリーについて行けなくなる。
梛子の気持ちが、どんどんチャーリーから離れていきます。
チャーリーとしばらく距離を置きたいと
マンザナール収容所に戻ることを賢治に打ち明けますが、
今ならまだ引き返せるから、と思いとどまるように言われます。
帰宅した梛子は、夫が使っているタイプライターの下から
1,000ドルもの大金を見つけてしまいます。
それは、日本語学校教員の武藤が学校を辞めさせられまして
その報酬ではないか、と疑ってしまいます。
疑うと言えば、今日、夫の出張中に
梛子が相談するために賢治と会っていたことが
チャーリーの耳に入ってきたのも事実です。
「チャーリー、私のことが信じられないの?」
夫婦の亀裂は決定的になります。
休みの日。
賢治が自宅で鉢植えをいじっていると
梛子が旅行バッグを持って旅立つところを目撃します。
その背中には悲愴感というか寂しさが感じられ
賢治は声もかけられずに目で追っています。
山崎豊子 作『二つの祖国』より
脚本:市川 森一・香取 俊介
音楽:林 光
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[出演]
松本 幸四郎 (天羽賢治)
島田 陽子 (田宮梛子)
多岐川 裕美 (天羽エミー)
堤 大二郎 (天羽 勇)
にしきの あきら (ジロー武藤)
ポール・牧 (吉原上等兵)
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沢田 研二 (チャーリー田宮)
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矢崎 滋 (伊佐新吉)
綿引 勝彦 (鬼頭軍曹)
村井 国夫 (オーソン相川)
西田 敏行 (天羽 忠)
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制作:近藤 晋
演出:伊豫田 静弘
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