プレイバック山河燃ゆ・(35)兄弟対決
1945(昭和20)年4月・ルソン島。
天羽 忠が所属している大山大隊は
1ヶ月も前に玉砕電報を打って
ほとんどの兵士は戦死、あるいは戦病死を遂げていました。
落野中尉、鬼頭軍曹、忠たちは最後の出撃に際して
鉄砲を隠し、ポケットに自決用の手榴弾を入れて
アメリカ軍斬り込みの準備に入ります。
そして夜遅く、米軍キャンプに手榴弾を無数に投げ込み
斬り込みを行います。
斬り込みに入り、武器庫から手榴弾を奪い取って引き下がる。
その繰り返しです。
しかし、このせいで落野中尉が落命します。
捕虜となった伊佐新吉たち日本軍兵士には
兵役を課さず、毎日ごちそうをたらふく食べさせ
表情が和らいだところに、その様子を写真に収めます。
まるで修学旅行のようです。
天羽賢治は、そうして撮影した写真をビラに載せ
さらに投降を促します。
その写真を手に、鬼頭軍曹が忠に近づきます。
手渡された写真をよく見ると、その中央に座っているのは
伊佐新吉ではありませんか。
忠は、少なからず衝撃を受けます。
とそこに、アメリカ軍戦車が通りかかり
忠は爆弾を戦車のすぐ目の前に置いて走り去りますが
アメリカ軍兵士からの銃撃を受け、倒れてしまいます。
アメリカ・ツールレーク収容所では
賢治から送られた手紙を呼んだ天羽乙七が
厳しい表情です。
賢治の手紙によれば、ルソン島バギオに
忠が日本人兵士として来ているらしいのです。
天羽テルも、その手紙を呼んで泣き崩れます。
兄と弟が敵味方で……父も母もショックが大きいです。
突然の雨に目を覚ました忠。
鬼頭軍曹の介抱を受けていました。
おいの肩につかまれ、と
鬼頭軍曹は忠を支えて歩いていきます。
十字架が無数に並ぶ墓地で小休止をとっていたふたりは
米軍兵士の姿を見かけると、スッと戦闘態勢に入ります。
しかし大勢の中にふたりだけだと、
アッという間に見つけられてしまいます。
手榴弾を投げ、そちらに気を取られている間に
逆の方から回り込んで鉄砲を構える忠ですが、
銃口の先に立っていたのは、賢治でした。
「……兄さん」
「忠、オレだ! ……会いたかった! ずっと探していたんだ」
一斉射撃を行う兵士には
彼が自分の弟であることを叫び、
攻撃を一時的にやめさせ、
賢治は丸腰で忠の方に歩いていきます。
忠の方は忠の方で、鬼頭軍曹が状況が分かっておらず
誰だ!? と忠を問いつめるのですが、
忠は賢治に銃を構えているばかりで、
問いには答えません。
ふたりが山の中に消え、賢治たちはふたりを追いかけます。
物陰に隠れていた鬼頭軍曹が短刀を手に賢治に襲いかかり
賢治は驚いて転び、鉄砲を撃ちますが、運悪く
鬼頭軍曹をはねのけた忠の足に被弾します。
賢治が忠の元に駆け寄っているスキを見て
チェストー! と叫びながら鬼頭軍曹は駆け出しますが
米軍兵士の銃弾を浴び、倒れます。
賢治は米軍野戦病院に忠を運び、
忠の手当てをします。
出血多量で一時的に意識を失っていますが
すぐに意識は取り戻し、命は取り留めました。
足の骨には異常はありませんが、銃弾が足の奥にまで
入り込んでおり、劣悪な環境では手術で除去はできません。
賢治は身勝手は承知で、マニラの病院に移して欲しいと
医師に掛け合います。
見舞いに来た賢治は、家族みんなが
日本に残った忠のことを心配していたと伝えますが、
忠は、兄が日本に弓を引くとは思わなかった、とつぶやきます。
「オレを撃つぐらいなら、なぜ殺さなかった」
どうしてこうなった、と大粒の涙を流します。
昭和20(1945)年4月26日、
フィリピン・ルソン島の戦いで、
日本軍が集結したバギオが陥落する。
昭和20(1945)年8月15日、
日本がポツダム宣言を受諾し第二次世界大戦が終結する。
あと3ヶ月──。
山崎豊子 作『二つの祖国』より
脚本:市川 森一・香取 俊介
音楽:林 光
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[出演]
松本 幸四郎 (天羽賢治)
矢崎 滋 (伊佐新吉)
村野 武範 (落野中尉)
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沢田 研二 (チャーリー田宮)
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綿引 勝彦 (鬼頭軍曹)
津島 恵子 (天羽テル)
三船 敏郎 (天羽乙七)
西田 敏行 (天羽 忠)
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制作:近藤 晋
演出:佐藤 幹夫
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コメント
落野中隊長は中将ではなく中尉です。
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Françoise Arneurさん、こんにちは。
ご指摘ありがとうございます。
オンデマンドにて本作映像を確認し、第32~35回の計4話分の「中将」を「中尉」に修正しました。
大変失礼いたしました。
投稿: ★Françoise Arneur | 2023年8月22日 (火) 00:01