大河ドラマ西郷どん・(21)別れの唄 〜使命か? 愛か? 揺れる西郷・愛加那の覚悟〜
愛加那と夫婦となり、格好も髪型も
すっかり大島の男になった西郷吉之助(菊池源吾)。
海辺で釣りをしていた吉之助ですが、なんかそわそわしている様子。
そう、身ごもった愛加那が産気づいていたのです。
初めて見るわが子。
初めてこの手で抱くわが子。
「こいがおいの子か……愛加那、お手柄じゃ」
赤子が誕生して7日目、
イジャシハジメと呼ばれる祝いの儀式が行われます。
奄美大島に来て2年、吉之助はついに父となったのです。
吉之助は、赤子に菊太郎と名付けようと考えています。
菊池源吾の「菊」は、生まれてきたのが
男の子でも女の子でも入れようと思っていまして、
それに長男坊だから「太郎」なのですが、
そりゃいかん、と龍 佐民はつぶやき
代わりに「菊次郎」の名を提案します。
吉之助はいずれ薩摩に戻る人でありますが
島の妻は薩摩本土に連れて帰ることができない決まりなので
吉之助が薩摩に帰れば、薩摩で正妻を迎えることになるでしょう。
そうなると、正妻以外の傍系が太郎という正統の名を名乗るのは
いかがなものか、といいたいわけです。
それは吉之助が大島で生きていくと表明したところで
政治の潮目が変われば、いつか必ず大島を出て行く。
そして大島に残らず、薩摩に戻ることは
大きくなった菊次郎が薩摩に渡れるためでもあります。
吉之助は何かいいたげでしたが、
菊次郎にしましょう、と愛加那がニッコリ笑うと
何も言えなくなってしまいます。
♪果報なくとぅ あらしたぼれ (幸せなことがありますように)
汝きゃが先々 (あなたの未来に)
そのころの薩摩では、島津久光が
小松帯刀を中心に優れた若者を取り立てて
藩政治の中枢を担わせていました。
異例の出世を遂げた大久保正助は、
久光から「一蔵」という名を賜ります。
誠忠組としての忠義を示す時が来ただけでなく
吉之助を大島から呼び戻すお許しを得て
あとは呼びに島に向かうだけとなります。
薩摩から、さとうきびを搾り取る鉄の輪が
いくつも届けられました。
かつて吉之助が一蔵に依頼していたものが
ようやく届いたのです。
大喜びする吉之助と大島の農民たち。
しかし届いたのは鉄の輪だけではなく、
一蔵も一緒でした──。
「殿の命にごわす」
すぐ薩摩に戻ってきてくいやい、と一蔵は厳しい表情です。
吉之助は、殿からの書状に一礼しながら
それはできん、と断ります。
それでも一蔵は引き下がりません。
現在の薩摩は、幕府の顔色をうかがって
吉之助を見捨てた時のような薩摩ではなく
鉄砲も大砲も揃い、ようやく斉彬の遺志を成すことができる環境です。
あとは、西郷吉之助その人だけです。
斉彬のお庭番として諸侯と渡り歩いた吉之助がいてこそなのです。
吉之助は、すぐ後ろで黙って会話を聞いていた愛加那を呼び
大島の素晴らしさを語ります。
薩摩藩には途方もない金があり、それは大島から搾り取ったものですが
大島のみんなはとてもよく笑います。
唄も踊りも美しく、憎いはずの薩摩出身の自分にまで優しくしてくれます。
砂糖や作物は薩摩に全部召し上げられますが、
海には魚が、山には猪がいて、いつでも命をいただけます。
吉之助はこの大島で、生きる力をもらったわけです。
「おいにとってここは……極楽じゃ」
愛加那は吉之助を見つめます。
吉之助が薩摩で作らせた鉄の輪の力はすさまじく、
搾り取れる砂糖の量も、作業効率も格段に上がります。
楽しそうに踊る吉之助をチラリと見て
一蔵はとぼとぼと帰っていきますが、
愛加那は一蔵を追いかけ、菊池源吾は帰らないと主張します。
一蔵は、吉之助が帰らないことは分かっているのです。
分かっているのですが、
薩摩のために戻ってきてもらわなければならないのです。
「西郷吉之助は薩摩の宝でごわす。吉之助さぁを返してたもんせ」
頭を下げる一蔵に、愛加那はとまどいます。
見送った吉之助は、大島に流される前に一蔵が
自分が薩摩を変えて呼び戻すから
生きてくれ、と説得されたことを思い出します。
戻った吉之助に、愛加那は
一蔵から預かった箱を渡します。
中には、かつて斉彬から授かって保管していた
脇差しが入っていました。
ついに薩摩から迎えに来たな、とユタはつぶやき
愛加那に、お前は一人ではない、と励まします。
それは、愛加那と菊次郎の二人を意味しているのではなく
もうひとり、愛加那のお腹に宿した新しい命も加えての三人です。
お腹を優しくさすりながら家に戻った愛加那ですが
口ではこの島に残るだの、お前たちと一緒だの言いながら
吉之助の気持ちが薩摩に飛んでいることを見抜きます。
旦那さまは薩摩に戻ってください、と叫んで
愛加那は走って出て行きます。
しばらく愛加那は帰ってきませんでした。
愛加那と菊次郎は、しばらく龍 佐民が預かっています。
愛加那は、つわりがひどいですが、まぁ元気に暮らしています。
つわり、と聞いて吉之助は驚きますが
吉之助をますます大島に縛り付けてしまう、と
愛加那はついにお腹の子のことを言えなかったのでしょう。
佐民は、吉之助が自分たちにたくさんの夢を見せてくれた、と感謝し
あなたがいるべき場所はここではない、と諭します。
吉之助は、自分の思いを素直に愛加那にぶつけようとしますが、
何も言わなくても、愛加那にはずっと前から分かっていました。
薩摩に帰る、と。
役目が終わったら、愛加那と菊次郎とお腹の子がいるこの島へ
必ず戻って来る、と約束する吉之助に、愛加那は
♪果報なくとぅ あらしたぼれ (幸せなことがありますように)
汝きゃが先々 (あなたの未来に)
と歌って送り出します。
旅立ちの日。
愛加那は吉之助の髪をとき、吉之助は脇差しを差して浜辺へ。
大島の子どもたちから長老まで全員が見送りにきてくれます。
♪行(い)きゅんにゃ加那
吾(わ)きゃこと忘れて 行きゅんにゃ加那
打っ発(うった)ちゃ打っ発ちゃ 行き苦しや
「行ってしまうのですか、愛しい人よ」
「私のことを忘れて行ってしまうのですが、愛しい人よ」
「発とう経とうとして行きづらいのです」
古くから大島に伝わる、旅立つ人を送る民謡です。
島の人たちはみんなでこの唄を歌って送り出します。
(大河ドラマ『翔ぶが如く』では第15回「南国の女」〜第16回「吉之助帰る」付近)
(大河ドラマ『篤姫』では第33回「皇女和宮」〜第34回「公家と武家」付近)
原作:林 真理子
脚本:中園 ミホ
脚本協力:三谷 昌登・小林 ミカ
音楽:富貴 晴美
タイトル映像・題字:L.S.W.F
語り:西田 敏行
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[出演]
鈴木 亮平 (西郷吉之助)
瑛太 (大久保一蔵)
二階堂 ふみ (愛加那)
北村 有起哉 (大山格之助)
高橋 光臣 (海江田武次)
堀井 新太 (村田新八)
渡部 豪太 (西郷吉二郎)
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町田 啓太 (小松帯刀)
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高橋 努 (富堅)
青木 崇高 (島津久光)
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秋山 菜津子 (ユタ)
木内 みどり (石千代金)
柄本 明 (龍 佐民)
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制作統括:櫻井 賢
:櫻井 壮一
プロデューサー:小西 千栄子
演出:石塚 嘉
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『西郷どん』
第22回「偉大な兄 地ごろな弟」
デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
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