プレイバック山河燃ゆ・(45)ワシントン・ハイツ
東京代々木にある「ワシントン・ハイツ」。
天羽賢治が帰宅すると、酒をあおっていたのか
天羽エミーはうがいをし、香水を身体中に振って
夕ごはんの支度を始めます。
リビングにはおひなさまの小さな飾りが。
井本梛子が昼間に持ってきてくれたようで
エミーは少しムッとしています。
「京都へ行ったんですって?」
息子アーサーの寝顔を見に行った賢治の後を追いかけて
梛子から聞いたわ、とエミーは声低く聞いてみます。
賢治は、東京から一緒に行ったのではなく
偶然京都で会ったのだ、とアーサーを見つめながら答えますが
言い訳は聞きたくない、とエミーがプイッとキッチンへ戻ると
賢治は何も言えません。
「戦争で人を殺しても殺人罪にはならない」
合法的殺人と見なされる、と
東郷茂徳弁護人のブレイクニイ少佐は説明します。
どんなに忌まわしい殺人でも正当化され
過去に犯罪として責任を問われたことはない、と。
真珠湾のキッド提督の死が殺人に値するなら
広島に原爆を落とした爆撃手はどうなのか?
投下を計画した参謀長、国家元首はどうか?
彼らに殺人罪の意識はあるのか? と言葉強く主張します。
梛子とはもう会わない方がいい。
そう考えた賢治は梛子の働くオフィスに電話してみますが
欠勤しているらしく、つながりません。
賢治はチャーリー田宮を酒に誘い、もう会わないと決めたことを
チャーリーから梛子に伝えてもらおうと頼み込みます。
帰宅すると、そこには三島啓介とマリー田宮が遊びにきていました。
刑死した川辺庄平が生前、自分の田舎町に教師としてきてくれと
啓介に話していたらしく、教育基本法が公布されるのをいい機会に
九州松浦に向かってそこで教員をする決意をしたようです。
エミーは始めこそキッチンで隠れて酒を飲んでいましたが
途中から賢治や啓介、マリーたちに混じって酒を呑み始めます。
ワシントン・ハイツのゲートまで啓介たちを見送りに行き
賢治が戻ってきてみると、先ほどまで並々あった酒が空に……。
最近酒が過ぎるエミーがとても心配です。
翌日出社した賢治は、速記録503ページから
ブレイクニイ弁護人による原爆問題に関する発言部分が
なくなっていることに気づきます。
賢治自身は発言を詳細にメモしていたので、間違いありません。
同僚たちは、速記録からその部分が抹消されていたのなら
原爆問題はある意味、天皇の戦争責任問題以上に
デリケートな問題だから意図的にやったんだろう、と
まるで他人事です。
部長に確認すると、裁判長からの命令で削除したそうです。
削除命令が会ったのは、原爆使用をヘーグ条約違反だと
糾弾したためか、と賢治は食い下がります。
法廷で現実に議論された問題なのに、と。
モニターとはいえ公正に裁判を審理する立場だ、と言う賢治に
キミはアメリカ陸軍中尉なんだぞ、と部長はあきれ顔です。
「いつでも軍服を脱ぐ覚悟はあります」
賢治は部長を見据えます。
広田弘毅弁護人のスミスは、冒頭に
証人尋問に対する“法廷の不当な干渉”に抗議する、と発言したところ
裁判長が烈火の如く怒り出し、その侮辱に値する発言を
撤回し陳謝しなければ退席させると命じます。
スミス弁護人としては、“法廷の不当な干渉”という発言については
一般的な法廷用語であり、法廷を侮辱する意図はないと弁明。
しかし裁判長は、同僚裁判官と協議した上で
スミス弁護人を審理から除外すると決定し、命令を下します。
考えを改めるつもりもないし、
改めなければならない理由にも納得できないスミス弁護人は、
その決定がつまり広田の弁護人を外されたと見なして
さっさと退席します。
ざわつく裁判所内。
「なんという措置だ」
賢治は顔を曇らせます。
チャーリー田宮の妹・マリー田宮は
教壇に戻る三島啓介とともに九州に旅立ちます。
妹を幸せにしてやろうという兄の願いは踏みにじられ
チャーリーは見送りにも行ってやるもんか、と頑に拒絶し
その代わりに賢治が東京駅まで見送りに行きます。
「正直言って僕は寂しいよ。キミたちふたりと別れるのは」
涙を浮かべる賢治に
ふらりと九州へ来るといいよ、と啓介とマリーが励まします。
中佐夫人のバースデーパーティが行われていて
エミーとチャーリーが出席しています。
ブランデーを浴びるように飲み続けて酔っぱらい
東京駅から急いでやってきた賢治を見ると
妻のことより友人が大事? と乱れ始めます。
ひとまず家に帰ろうと、エミーを抱えて家に戻りますが
エミーは自分がアルコール中毒で、入院していたこともあること
その原因となったのが昼間に白人からレイプされたことを告白。
どうして話してくれなかったんだ、と賢治はひどく衝撃を受けますが
梛子とのことを疑うエミーは、
自分と別れる口実ができたわね、と自暴自棄に陥ります。
「アメリカに帰ろう……今すぐ」
モニターも辞め、軍服も脱ぐ。
エミーのためを思ったその本気の決意は、
エミー自身をさらに追い詰めます。
山崎豊子 作『二つの祖国』より
脚本:市川 森一
音楽:林 光
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[出演]
松本 幸四郎 (天羽賢治)
島田 陽子 (井本梛子)
手塚 理美 (マリー田宮)
かとう かずこ (井本広子)
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多岐川 裕美 (天羽エミー)
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篠田 三郎 (三島啓介)
宮口 精二 (清瀬一郎)
沢田 研二 (チャーリー田宮)
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制作:近藤 晋
演出:伊豫田 静弘
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