プレイバック山河燃ゆ・(47)焼跡の聖夜
チャーリー田宮が、ワシントン・ハイツの天羽家に
来たるクリスマスに向けてもみの木と、
息子のアーサーにプレゼントを買って届けにきました。
賢治はまだ裁判所から帰ってきていません。
いたのはアーサーとお手伝いさんで
天羽エミーの姿はありません。
チャーリーが聞けば、すでに休んでいると答えます。
体調でも悪いのか、と心配するチャーリーですが
言葉を濁すお手伝いさんを見て、フッと溜息を漏らします。
「……酒か」
そんな時にアメリカ人女性の来客です。
エミーには、ポーカーで作った200ドルの借金があるようで
返さないなら賢治が帰るまで待つ、と聞きませんが
チャーリーがその場を納めるために200ドル支払います。
「気前がいいのね。おヒマなときは来て、お酒あるわよ」
さんざん皮肉って帰っていきます。
チャーリーは、日本での生活に嫌気が差して
さんざん荒れているエミーを
ダンスクラブに誘います。
チャーリーは、久我山という子爵のご令嬢との結婚を
上司から勧められていますが、そのご令嬢と会う前に
エミーの気持ちを聞いてみます。
「オレが拾ってやろうか。アーサーも一緒に」
子連れのアル中女をからかうもんじゃないわ、と
初めこそ冗談で返していたエミーですが、
チャーリーがしつこくケンと別れろと言い続けます。
「できないわ……ケンを愛しているの」
顔を歪ませ、だけど見捨てないで、とつぶやきます。
ダンスクラブから戻ったときには、
賢治は帰ってきていました。
酒を飲んでいた上に、クラブでさらに酒に酔ったエミーは
お先に失礼するわ、とベッドルームに向かいます。
賢治ももみの木とクリスマスの飾りを
買って帰ってきたわけですが、
そこにはチャーリーからの
もみの木とクリスマスプレゼントがあります。
話があるから時間を作ってくれ、と言う賢治に
ココではダメなのか? とイジワルっぽく聞き返すチャーリーは
それが井本梛子のことであると察知します。
「ああ、分かった。こっちから連絡するよ」
極東国際軍事裁判所──。
元 外務大臣・東郷茂徳の口供書朗読です。
読み上げるのは東郷担当のブレイクニー弁護人が務めます。
「12月1日、御前会議において大戦の決定がなされた。
しかる後、いかにして戦闘開始を通告すべきかという
重要な手続きの問題が残されていた。
連絡会議において私が戦闘開始の時期につき質問をしたところ
杉山大将より次の日曜日ごろとの答えがあった。
そこで私は、戦闘開始の通告に関しては
通常の手続きによることが適当であると述べた。
私はこれを当然であると思ったのだが
永野軍令部総長から、戦争は奇襲でやるのだとの発言があり、
次いで伊藤軍令部次長は、大戦への効果を最大にするため
交渉を戦闘開始まで打ち切ってほしいと申し出た。
私はこの申し入れを拒絶し、
このやり方は通常の手続きに反し甚だ不当であるだけでなく、
我が国の名誉と威信にかけ甚だ不得策であると述べた。
しかしながら、永野軍令部総長は
戦争をする以上は是非勝たねばならないと強く主張し
誰も私の説に賛成しなかった。
海軍は米国に対し奇襲を加えようなどと
考えたことは全くないという立場をとっている。
この点に関する私の証言は他の被告の証言と
食い違っていることは明らかである。
その間の矛盾はもとより、法廷の判断するところであるが
私は私の生涯を通じ、正義と信じるところによって戦ってきた」
のちに東郷への反対尋問が行われますが
東郷は、海軍上層部の証言との食い違う主張であっても
単に事実を明らかにするだけだ、と
気持ちを強く持って答えていきます。
久我山子爵邸では、
令嬢とチャーリーとのお見合いが行われています。
久我山ファミリーは、家族で室内楽を演奏しますが
そのお返しに、とチャーリーが
何か演奏することになってしまいます。
チャーリーは内心、敗戦国に赤っ恥をさらされるなんて、と
困惑しますが、伏し目がちに答えます。
「じゃあ……ハーモニカを」
翌日、GHQ(連合軍総司令部)では
チャーリーが、マッカーサー元帥の名代として
天皇に拝謁するように上司から命じられます。
人間宣言をした天皇は
新憲法において日本国の象徴となったのですが
厄介なことに、連合国記者団が
会見と写真撮影を求めて来ているのです。
宮内府から連絡があり、GHQが天皇の意思を承り
それを回答としたいとのことです。
そんな大役はできない、と断るチャーリーに上司は
日系二世の軍人で天皇に拝謁した者はいないのだし
名誉なことだから断るな、と諭します。
皇居・仮宮殿に入ったチャーリーは
天皇が入室する前に目を伏せます。
そして自分が
連合国最高司令官・マッカーサー元帥の名代と名乗り
新憲法施行以来、天皇の日常について報道したいとの要求があって
天皇の忌憚なき気持ちを知らせて欲しいと言上します。
「今はいかなる取材にも答えたくありません」
天皇の意思を持ち帰り、今後は報道機関の接近から
GHQが守ることを約束します。
いったん退出しようと歩き出した天皇は、
チャーリーの方を振り返り
両親の出身地が広島であることを聞き
戦災に遭わなかったか、と気遣ってくれます。
チャーリーが顔を上げると
すでに天皇は退出していました。
広島の日赤病院では
療養中の梛子が少しずつ快方に向かっていました。
自分の本当の病名は原爆症ではないかと疑う梛子に
妹の井本広子は、梛子に投与している薬の種類まで説明して
原爆症ではないと伝えます。
梛子が信じたかどうか……、
しかしホントは被爆による急性白血病です。
賢治はチャーリーに、梛子の病気について伝えます。
見舞いに行ってやってくれ、と懇願する賢治に
チャーリーは、クリスマスには予定が入っているし
元帥の副官がヒロシマに行けばGHQ批判につながるからと拒絶。
予定というのは、久我山令嬢との婚約です。
一度は壊れた話でしたが、チャーリーが日系二世で初めて
天皇に拝謁したという話が届いた途端に
婚約が成立したということです。
とはいえ、エミーのことを考えたら
賢治も広島に行けそうにありません。
「親愛なる梛子へ クリスマスおめでとう
神の恵みが永遠にありますように」
賢治は、せめて梛子にクリスマスカードを送ります。
エミーが飲みに出かけた日の夜
賢治はアーサーとふたりでささやかにパーティをします。
山崎豊子 作『二つの祖国』より
脚本:市川 森一
音楽:林 光
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[出演]
松本 幸四郎 (天羽賢治)
島田 陽子 (井本梛子)
かとう かずこ (井本広子)
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沢田 研二 (チャーリー田宮)
多岐川 裕美 (天羽エミー)
鶴田 浩二 (東郷茂徳)
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渥美 國泰 (東条英機)
児玉 清 (島木文弥)
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制作:近藤 晋
演出:田島 照
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