« vol.249・ありがとう | トップページ | 大河ドラマ西郷どん・(26)西郷、京へ 〜いざ革命の舞台に〜 »

2018年7月13日 (金)

プレイバックいのち・(02)母と娘

終戦を迎え、東京からすし詰めの列車で
青森へ帰郷した未希と佐智姉妹ですが、

その道中で乗り合わせた幸せそうな村中ハルが
一転、入水騒ぎを起こして高原家に転がり込んできました。
そして流産してしまいます。

使用人の工藤清吉は、
未希たちを帰郷の道中でいろいろ助けてくれたご恩のある人だから
できるだけのことはして差し上げなければ、と
親身になって動いてくれています。

気を失ったように眠っていたハルは目を覚まし
おぼつかない足取りで、
未希たちがいる囲炉裏の間までやってきました。

母の高原千恵や工藤イネは、
2〜3日は安静にしていないと、と心配します。
赤ちゃんは残念なことになりましたが、
母体が健康になれば、旦那さんも喜ぶでしょう。

ハルは、やはり自分は流産したのだとショックを受けますが
反応がこれまでと真逆です。
「よかった産まれて来なくて」

自分の命なのだから、生かそうが縮めようが自分の勝手だ、と
ハルはほとんど自棄になっています。
話を聞いていた清吉は、思わず平手打ちしてしまいます。
「あンたぜいたくだよ、罰当たりだ!」

自分がどんな目に遭ったかもしらないくせに! と
涙をポロポロ流しながら、清吉を睨みつけます。
未希は落ち着いて、ハルの身に何があったのかを聞き出します。

ハルの話では、東京の大空襲で父と母、弟や妹たちも亡くなり
ハルだけは土浦の軍事工場に出ていたので助かったらしく、
唯一の身寄りとなる夫を訪ねて青森へ向かったわけですが、
俺の子どもだって証拠がどこにある!? と追い返されたのです。

「そんな時、女はどうしたらいいの!?
 お腹断ち割って見せたって証拠なんてありゃしないのよ!」
佐智も千恵も清吉も、一同絶句します。

そんなに死にたいのならもう止めませんから、と
イネは笑って、用意しておいたおかゆをハルの前に置きます。
「腹が減っては、死ぬ元気も出ねばせ」

あれだけ強情に、死ぬんだと言いはっていたハルが
イネの笑顔で、生きててよかったと言わせるのですから
すごいし素晴らしいですね。

まだ世の中にはいい人がいるんだって思うから
生きようって気持ちになれた、と
ハルは、未希の手を握って礼を言います。


夕方、畑に出てトマトをもいでいた千恵が倒れました。
嘔吐もしているようで、未希や佐智、そしてハルも心配しますが
薬を服用して何とか落ち着きを取り戻すという状態です。

イネによれば、最近は続けて起きているようで
未希は千恵に早く医者に見せることを勧めますが
荷馬車に揺られて一日かけて弘前まで出るのは
健常者でさえひと苦労です。

翌朝、未希は弘前の中川酒造に出向き
下宿している軍医の坂口一成に相談してみます。

坂口は、往診で出かけてもいいが
そういった事情なら、設備整う陸軍病院で
検査をしたほうがいいかもしれない、と言ってくれます。


そして未希は、青森の港町へ。

ハルのもう一人の命の恩人である
ハルが入水したときに助けてくれた
浜村直彦を訪ね歩くのです。

イカを干している直彦を見つけ、声をかけます。
ハルを助けてくれたお礼を言う未希ですが
「助けてもらったのは私の方かもしれません」と直彦。

家は代々職業軍人で、直彦もそうだったのですが
飛行機事故でケガを負い、それが癒えた頃に終戦を迎え
これからの人生に失望して死ぬつもりだったようです。

浜辺を歩いていた直彦は、目の前で
服のまま海に転落する女が沈んでいくのを見て
必死になって助けたのだそうです。

そんな直彦は今、医者になりたいと勉学に励んでいます。
前向きに歩んでいく直彦を見て、
未希はなにか清々しい気持ちになります。


未希が家に帰って来ると、佐智が駆け寄ってきて
ハルが明日東京に帰ると言い出したことを告げ口します。

東京には知り合いが何人かいるし、寒くならないうちに東京に出て
生活の目処を立てて生きていきたいというハルの言葉を聞いて
何だか無性に腹が立ってきた未希は、
飢え死にでも何でもしたらいい、もう止めないとふくれます。

「ハルさん明日東京に帰るんですって。
 ハルさんにはハルさんの生き方があるの」
イネにそう言って、そのまま母の居室に向かいます。

朝早く起きたせいで、今日は少し早めに休んでいる千恵。
未希が居室に行くと、ふとんはもぬけの殻です。
未希が振り返ると、土間で吐血した千恵が倒れていました。
「お母さん……」


未希は坂口に連絡を取ろうとしますが
陸軍病院にも中川酒造にも留守のようで
戻り次第連絡をくれるように段取りをつけます。

陸軍病院に来てくれればすぐに診察できるように手配します、
という坂口の言葉を信じて、その準備にとりかかるのです。

千恵に付き添うというイネですが、
足の不自由な佐智のこともあるし、
どこから連絡がくるかも分からないので
イネには家で留守番してもらうとして、

千恵の付き添いは、ハルが務めることになりました。
ああ見えて15歳から3年ほど病院に奉公していたようで
荷馬車に揺られるなら何が必要、入院となったときにはこれが必要と
意外にテキパキとイネに指示をして、頼りがいがあります。


陸軍病院に担ぎ込まれた千恵は、
それでも急患扱いですぐに検査してくれたわけですが、
その検査結果を見て、坂口はさも言いにくそうに未希を見つめます。

坂口は、未希の父が満州で
未だに連絡が取れない状況を確認した上で
あなたに言うしかないですな、と深いため息をつきます。

千恵は、かなり進行した胃がんでした。
この状態で手術をしても、患者を苦しませるだけ、という
重度の症状です。
「精一杯、お母さんに好きなことをさせておあげになった方が」

未希には、坂口の言葉が耳に入らず
あとどれぐらいの命なのですか、と聞こうにも言葉にならず
これは何かの間違いだ、ああ夢を見ているのかもしれないと
祈るように思っている未希でした。


作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
──────────
[出演]
三田 佳子 (高原未希)
石野 真子 (高原佐智)
役所 広司 (浜村直彦)
渡辺 徹 (中川邦之)
──────────
久我 美子 (高原千恵)
大坂 志郎 (工藤清吉)
赤木 春恵 (工藤イネ)
小林 千登勢 (浜村とも子)

伊武 雅刀 (岩田剛造)
吉 幾三 (八木金太)
泉 ピン子 (村中ハル)
宇津井 健 (坂口一成)
──────────
制作:澁谷 康生
演出:伊豫田 静弘

|

« vol.249・ありがとう | トップページ | 大河ドラマ西郷どん・(26)西郷、京へ 〜いざ革命の舞台に〜 »

NHK大河1986・いのち」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« vol.249・ありがとう | トップページ | 大河ドラマ西郷どん・(26)西郷、京へ 〜いざ革命の舞台に〜 »