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2018年7月17日 (火)

プレイバックいのち・(03)母よ!

弘前陸軍病院で検査を終えた母の高原千恵は
根っからの病院嫌いでありまして
検査疲れもあるだろうから、と
しばらく入院して療養する予定であったところ、

こんなところにいたら本当に病気になっちゃうわ、と
さっさと退院して帰りたい意向です。
入院なんて言われても帰ります、と言って
付き添ってきた工藤清吉や村中ハルを困らせます。


検査と診察した坂口一成に厳しい結果を示されて
あまりの衝撃に涙をポロポロ流す高原未希。

坂口は、あなたがしっかりしないと悟られてしまい
家族みんなが苦しむことになります、と叱咤しますが
未希は、覚悟をするためにも余命について尋ねます。

坂口は、その問いには答えず
自分もできる限りの手は尽くします、と言うばかりです。
「どれぐらい生きられるかはあなたの気持ちひとつなんですよ」


ひとまず弘前から全員で帰ってきました。

ハルも、入院するなら何が必要、と考えて準備していっただけに
それがすべて無駄になっちゃった、と笑っています。
千恵には、胃潰瘍ということで話を通していますが、
千恵の本当の病状を知っているのは、未希ただひとりです。

千恵が入院するなら、少しでも力になろうと
東京に帰る予定をいったん止めて、
しばらくは青森に残るつもりのハルでしたが、
入院の心配もないし、やっぱり帰ることにします。

それを未希に伝えると、目に涙をいっぱい溜めて
東京に帰らないで、と懇願してきました。
そこで千恵の本当の病状についてハルに打ち明けるわけです。

今の未希には、ハルのような力強い仲間が必要なのですが、
自分の都合勝手だけでハルを引き止めるのはよくない、と
未希は思い直します。
「ハルさんには、ハルさんの生き方があるんですものね」

未希の思いに胸を打たれたハルは、ここに残る決心をします。


一進一退を繰り返していた千恵の病状は
9月に入るといよいよ衰弱する一方となり、
未希はそれを複雑な思いを感じながら看護しています。

ちょっと時間ができたようで、
弘前から坂口が往診に来てくれます。
高原佐智がちょっぴり気になる中川邦之も一緒です。

診立てによると、腹部のしこりがまた増えているようで
激しい痛みが襲ってくると思われる、とのことです。

そこで改めて、坂口は千恵の入院を勧めます。
特に坂口は陸軍を除隊になり、東京に帰ることになったので
担当の内科医の管理の下で病状急変にも対応できるように
しておきたい、というのが坂口の正直な気持ちです。

千恵は家にいて療養していれば治ると信じているので
坂口の言うことは、いわば千恵には酷かもしれません。
もう覚悟はできています、と言う未希に、
坂口は、皮下注射する鎮痛剤を手渡します。

「先生のおかげで、母に人間らしい最期を迎えさせてやれます」
ありがとうございました、と
未希は一番の作り笑顔で坂口を見つめます。
坂口は、複雑そうな表情です。


9月26日、弘前にもアメリカ軍が進駐してきました。
そして未希たちが暮らす村にもやって来たのです。

高原家はひとまず全ての雨戸を締め切りますが
佐智が飼っている子犬のチビを庭に放したままだと
戸を開けて庭に出たところ、
そこにアメリカ兵が立っていました。

日本人を殺しにやって来たと思い込んでいるハルや
村の若い衆を読んできた清吉たちが
アメリカ兵たちをやっつけようと身構えていますが

英語を少し話せる未希は、この人たちが
自分たちをどうこうしようとやってきたわけではない、と
ハルや清吉たちを引き止めます。

アメリカ兵たちに村のことを聞かれた清吉は
本家と小作人との関係性や村全体の生産高を把握して
日本でどれぐらいになるのかを知りたいようだ、と笑います。
「いやあ、案ずるより生むが易しとはこのこと」


アメリカ兵の不安が消えた安心からか
千恵は岩木山に登りたいなどと言い出して
そんな無茶だ、とイネは必死に抵抗するのですが、
未希とハル、清吉の3人でお供して千恵を連れて行きます。

荷台に千恵を乗せ、3人が車を押して山を登っていきます。

鳥居までようやくたどり着きました。
ここから歩いて本殿へ参詣したいと言う千恵ですが
数歩歩けばへなへなと座り込んでしまいます。
そんな千恵を、未希はおぶって歩いていきます。

千恵は、父・正道と結婚式を挙げた時のこと
未希と佐智のお宮参りに来た時のことを思い出します。
「もう何の心残りもない」

未希は千恵をおぶって歩きながら、千恵がどうして
岩木山神社に執着したのかを知ります。
そして、千恵は自分自身の死期について悟っているのでは
ないだろうかという悪寒が未希の胸を凍らせます。

これで安心したか、千恵はみるみるうちに衰弱し始め
激しい痛みを訴えるようになります。
未希は坂口が都合しタンスの奥にしまっておいた鎮痛剤を
千恵に注射し、痛みを抑えます。


田所という男が高原家を訪問します。

若い頃から正道に世話になっていたらしく
終戦後に満州を脱出し、日本に帰ってきたわけです。

正道は満州の会社を畳むにあたって事後処理を終わらせ
社員家族の無事を見届けてから最後に帰国する予定で
田所は心配しているであろう未希たちに
それを伝えに来てくれたのです。

父の消息が分かっただけで未希は大喜びです。
正道が田所に預けた証拠のものを未希に預けると
未希は千恵の部屋に行ってそれを見せます。

正道が使っていた懐中時計を耳に当てます。
「心臓の音みたいね……よかったお元気で」
そしてかわいらしいオルゴールのメロディは
正道と結婚前、千恵がピアノで弾いたことがあるものです。

父さんに巡り会えてよかった、幸せだった、と言い残し
眠るようにこの世を去りました。
微笑みさえ浮かべている、優しい千恵の顔です。


千恵の枕元から、未希に宛てた手紙を見つけます。

──未希、ペンが持てるうちにこれを書いておきます。
お母さんがガンだと言うことは知っていました。
もう残り少ないいのちだと言うことも。

未希がお医者さまから聞かされて
誰よりも一番辛い思いをしていることも、
佐智にも清さんにも黙って明るく振る待っていてくれたこと、
どんなに感謝しているかしれません。

岩木山神社へもお参りさせてもらえて
お父さんにもあの時お別れをしました。
ありがとう。本当にありがとう。

未希、お父さんがお帰りになるまで
うちのことをお願いします。
清さん、イネさんにはお世話になりました。
ハルさんにもよくしていただきました。
よろしくお伝えください。

もうすぐ楽になるでしょう。
天国に召されたら、お母さんも
楽になったんだなあって喜んでください。
涙はもうたくさんですよ。

──母。


未希には、激しい後悔と憤りが拭き上げていました。

医者のいない村で病んだばかりに
ろくな手当ても受けさせてやれなかった母。
とうとう臨終にも医者に脈を取ってもらうことができずに
息を引き取った母。

未希には娘として悔やんでも悔やみきれない痛みでした。
その思いがやがて、未希に医者への道を選ばせるわけです。
それだけが、母への償いのような気がしていました。


作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
三田 佳子 (高原未希)
石野 真子 (高原佐智)
渡辺 徹 (中川邦之)
吉 幾三 (八木金太)
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久我 美子 (高原千恵)
大坂 志郎 (工藤清吉)
赤木 春恵 (工藤イネ)
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伊武 雅刀 (岩田剛造)
泉 ピン子 (村中ハル)
宇津井 健 (坂口一成)
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制作:澁谷 康生
演出:富沢 正幸

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