プレイバックいのち・(06)落日の家
高原未希と工藤清吉の話し合いは着地点を見いだせず
帰宅したばかりの坂口一成に相談してみることになりました。
11万円以上の財産を持つ者に対して課税されるそうで
来年の3月15日までに納めるように、と決まったそうです。
高原家では畑や宅地などで163万円の財産を持つので
累進課税で57.2万の税金を納めなければならないのです。
未希は納めるお金がないのなら土地で納めるしかないと主張し
清吉は、満州から高原正道が帰ってくるまでは
土地は1反でも多く残したい、と言っているわけです。
翌朝、未希はハルと清吉とともに津軽に帰郷します。
ようやく機動に乗った医学の授業に心残りはありましたが
普段は冷静沈着の清吉の動揺ぶりを見ると、
高原家のことも心配になってきたのです。
帰郷した翌日、清吉のかけ声で
分家の弘道や、他家に嫁いだ叔母たちが高原家に集まり
正道が不在だから、ひとまずは未希や自分たちで
守れることを守っていこうと決めますが、
高原家の土地など財産がいくらで、税額がいくらで、と
清吉がまとめた紙に目を通した親戚たちは
一様に、土地は隠しておけばバレねえよ! とか
財産税は土地で払っておいた方がいいよ! など言いたい放題。
最後の責任は未希になすりつけるだけだから困ったものです。
ひとり萱の外に置かれているのが高原佐智でして、
たまたま訪問してきた中川邦之を捕まえて
農地改革とは何か、と思い切って尋ねてみます。
「これからは一人ひとりがたくましくならねば生きていけない時代」
さっちゃんも覚悟をしておいた方がいいよ、と
邦之は佐智にアドバイスします。
親戚たちが帰り、ようやく落ち着きを取り戻した頃
岩田剛造が未希を訪ねてやってきます。
剛造はりんご畑を見せたいと未希を誘い
未希もその誘いに乗るわけですが、
剛造の目的は、もちろんりんご畑なんかではなく。
昭和20年11月23日までに地主が自分の土地にいない場合は
「不在地主」という扱いとなり、地主の土地は
一切認められないということなるかもしれない、というのです。
未希や佐智は東京から高原家に帰ってきていたので
それが認められればいいのですが、認められなかったら……。
もし納税までに帰って来れる当てがあれば、
満州に居なければならなかった特別な事情を勘案してもくれましょうが、
帰ってこられなければ、それこそ大量な土地を手放すことにもなります。
剛造はラジオの尋ね人に正道の情報を送って、
居場所を知っている人がいないかどうかも調べてくれていました。
農地改革の全てをそこで取り仕切る「市町村納税委員会」が作られ、
地主から3人、自作農から2人、
小作人から5人で公募があったそうで剛造も立候補したそうです。
11月23日の選挙で当選したら、高原家にいい風が吹くよう動くつもりです。
選挙に立候補することで、清吉たちからは
恩知らずと非難を浴びるかもしれませんが
未希にだけは、剛造自身の真意を知っていて欲しかったのです。
「ありがと剛ちゃん。でも剛ちゃんがそんなに苦しむことはないのよ」
なるようにしかならないんだもの、と未希はニッコリ微笑みます。
ただ、農地改革という、長年地主制度に慣れてきた人たちにとって
容易には信じられない大変革が目の前に迫ってきていました。
未希もはじめは高をくくっていましたが、津軽に帰ってきて
避けようのない厳しい現実として未希の前に立ちはだかります。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
三田 佳子 (高原未希)
石野 真子 (高原佐智)
渡辺 徹 (中川邦之)
山咲 千里 (岩田初子)
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大坂 志郎 (工藤清吉)
赤木 春恵 (工藤イネ)
野際 陽子 (坂口美代)
菅井 きん (岩田テル)
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伊武 雅刀 (岩田剛造)
吉 幾三 (八木金太)
泉 ピン子 (村中ハル)
宇津井 健 (坂口一成)
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制作:澁谷 康生
演出:富沢 正幸
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