プレイバックいのち・(37)女のしあわせ
姑のテルと夫の剛造の理解で
東京の病院を続けることになった岩田未希は
新たな意欲を燃やして再出発をしました。
しかし新興住宅地を控え、車時代を迎えて交通事故も多く
高原医院は急増する患者に充分な対処もできず
半年も経たないうちに、未希はもっと完全な医療体制を持った
施設を作りたいと密かな夢を抱くようになっていました。
昭和38(1963)年・夏──。
手術を終えたばかりの未希を、津田征子が訪ねてきます。
高原医院で看護婦見習いをしている昭子が
よく出前を届けて来てくれる荒井壮太と恋仲で
結婚したいらしいのですが、自分たちではとても相談できないからと
代わりに征子が未希にアドバイスを求めて来たのです。
昭和34(1959)年の春に集団就職で津軽から出てきた昭子は
3歳年上の壮太も似た境遇で同じような苦労を重ねて来ただけに
心が通じ合うのも早かったようです。
「2人の結婚を認めてあげてください!」
そう言って頭を下げる征子に、未希は
私よりもまずご両親のお気持ちが大事だと諭します。
しかし昭子の両親にはすでに報告していて
未希が認めたらいいと言っているし、
壮太の両親も、許可をもらって来ているらしいのです。
要は、結婚しても今まで通り働かせて欲しいわけです。
最終判断を求められて戸惑う未希は
2人揃って頭を下げに来た壮太と昭子に
反対したって一緒になるんでしょう? と
意地悪そうな笑みを浮かべ、心から祝福します。
高校の登山部の活動で、夏休みの登山を終えた岩田竜夫が
津軽に一時帰省をしました。
青森のりんごで大もうけする時代はとうに過ぎ去り
いろいろな品種で安価なりんごが販売される中、
高原から受け継いだ土地だからと必死に守る剛造を見て、
竜夫は父が頑固だと呆れています。
信吉の妻・松子が剛造を訪ね、
所有している田畑を売りたい、と言い出します。
東京に出稼ぎに出た夫が行方不明となって4年、
息子たちも農家を継ぐ意志はないらしいのです。
信吉の幼なじみでもある剛造は、一番真面目で
りんごのことを第一に考えていた信吉のためにも
金の工面なら自分が引き受けるから
田畑を売り払うのは待ってやって欲しいと頭を下げます。
そんな感じで他人の相談ごとを聞く父の姿を
少し小馬鹿にして見ている竜夫ですが、
典子の不満は、そんな父を放って東京で好き勝手にしている
母の未希に向かい始めています。
「父ちゃんもばっちゃんも典子も
東京で暮らせるようにしたらどうだ」
津軽から東京に戻って来た竜夫は、
思い切って未希に切り出します。
未希ももちろん、家族全員が一緒に暮らせるようにしたいと
考えてはいますが、今の状態ではとてもできる話ではありません。
鉄筋コンクリートの病院を作るのと同時に、
5人が暮らせる家も造りたいというのが未希の希望です。
秋が来て、昭子と壮太の結婚式当日となりました。
会場は村中ハル経営のダンスホールを借りて
立食パーティ風に手作りで仕上げました。
これからの結婚式は、アイデアで決まる。
そう確信したハルは、儲けが頭打ちであるダンスホールから
結婚式場経営に鞍替えしようかと本気で考えています。
大阪から東京にやって来た妊娠7ヶ月の妊婦が
早期陣痛で産気づいたものの、生まれた未熟児を
保育器もない高原医院ではどうすることもできず
死なせてしまった事例と、
交通事故で運ばれた患者をレントゲンで検査し
脳外科の治療ができない高原医院では仕方なく
救急車で大きな病院に転院させたものの、
あえなく落命した事例が連続して起き、
今の高原医院の設備で最善のことをしていくしかない現実と
もっともっと設備を整えていかなければならないという希望が
未希をいっそう苦しめることになります。
忙しい中をかいくぐり、未希はハルに相談に行きます。
ハルから借りている土地を譲り受け、周囲の田畑も買い上げて
今よりも何倍も大きな総合病院を作りたいと考えていたのです。
ハルもダンスホールを辞め、
結婚式場事業を始めようとしていた矢先で
似たもの同士ね、と笑う2人でした。
昭和38年も暮れようとしている時、
未希とハルは期せずして大きな夢を見ていました。
それは、翌年に東京オリンピックを控え
戦後最高の高度成長ブームにあった日本で
誰もが抱いていた飛躍への夢でした。
夢の見ることができる時代だったのです。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
三田 佳子 (岩田未希)
岸本 加世子 (津田征子)
渡辺 徹 (中川邦之)
石野 真子 (中川佐智)
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大坂 志郎 (工藤清吉)
赤木 春恵 (工藤イネ)
菅井 きん (岩田テル)
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伊武 雅刀 (岩田剛造)
柳生 博 (大場甚一郎)
泉 ピン子 (村中ハル)
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制作:澁谷 康生
演出:阿部 康彦
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