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2018年11月16日 (金)

プレイバックいのち・(38)女ふたり

戦後20年近く、それぞれ選んだ道は違っても
同じ時代の苦難をともにくぐり抜けて来た岩田未希と村中ハルは
今までただ夢中で築き上げて来たものから
またさらに大きく飛躍しようとしていました。

未希は人の命を預かる医者として
より完全な医療設備を持った総合病院への夢を、
そしてハルは結婚式場の経営に
新しい意欲を燃やしていました。

それは、未希にとってもハルにとっても
一世一代の大きな賭けでした。


青森から八木金太がハルのダンスホールに遊びにきました。

ダンスホールに飽きたハルが
夢がある結婚式場へ経営軸を移すことは、
金太からすれば非常に惜しいことではあるのですが、
そのための自社ビル改築の話を聞いた金太は
懐から500万円の小切手をハルに差し出します。

ドブに捨てることになるかもよ、と躊躇するハルに
金太もハルのお金で稼がせてもらったのだから
金を返したと思えばいいンだ、と全く気にしていません。
恩に着る、とハルは涙を浮かべます。

その代わり、ハルが所有していて高原医院が建っている土地は
すぐにでも名義変更して未希に譲ることにします。


未希は、理想で設計図を描き
鉄筋3階建て、総面積450坪、総建築費2,540万、
内科・外科(整形・脳)・産婦人科・皮膚科・泌尿器科で

常勤6〜7名、非常勤6〜7名、
看護婦に事務系含め総勢45名という
大きな体制になりそうです。

そこで未希は、坂口教授に病院顧問になってもらい
その名前で銀行から融資を受けたいと考えているのです。
坂口は、自分の名前が活用できるならと承諾しますが、
資金は借りるわけで、ハルに返せるのか聞かれます。

「分からない。失敗するかもしれない」
未希はそれでも、前のみを見て歩き出します。


なかなか津軽に帰れなかった未希は、
正月後の日曜日に思い立って帰郷しました。

未希は、自分が望む夢のために
中川邦之が犠牲になっていると常々感じていて
病院が完成したら、自分の技術を発揮するために
出て来ないかと東京の病院に誘います。

かつての農村医療を目指した未希がそうであったように
邦之は、町立病院でも大学病院でもできない
村医者の役割にやりがいを感じていて、
東京に出て行く気持ちは全くありません。
未希の誘いを蹴って、青森に残る道を選びます。


岩田家ですが、日曜日ということもあって
剛造と典子が弘前に買い物に出かけているようです。
それは未希が岩田テルから聞いた話だったのですが、

実際は、未希が不在の間に
出稼ぎに出たまま蒸発してしまった信吉の妻・松子と
その子・豊の4人で買い物に出かけていったようなのです。

高原家に戻った時、工藤イネが
そろそろ家族で暮らすことを考えなければ
何かあってからでは手遅れだ、と遠回しに言っていることが
このことだったのだ、と未希は理解します。

現に多感の時期、母親不在の期間が長かったせいか
未希にべったりだった典子は
いつの間にか未希をないがしろにするようになり
未希より松子を信頼するようになっていました。

東京の病院を新築するのに合わせて、
住宅も新しく建てることにして
そこで家族みんなが暮らせるようにすると考えた未希でしたが、

りんご作りはもう頭打ちではないの? と剛造に聞けば
それ以外には能がない男が、東京で何ができるのかと返され
これ以上家族がバラバラになっているのは良くないと言えば
それなら母さんが帰ってくればいいと典子に反論されます。

ダメ押しで、母さんのことは諦めてる、と言われては
未希には説得の言葉が何も出てきません。


津軽から戻った未希は、新病院建設の準備に入ります。
新病院は新しく買収した用地に建て、
今の病院を残して診療を続けながら
新病院の完成を待つことになりました。

昭和39(1964)年10月10日、
東京オリンピックの開会式と同じ日
新病院建設の地鎮祭を行うことになりました。

10月1日には東海道新幹線も開通し、日本は国を挙げて
経済大国として繁栄への道をひた走っていました。
未希の新病院への夢も、そのような時代だからこそ実現でき
まさにひとつの時代の象徴ともいえます。


10月7日、アルコール中毒の
行き倒れの男が運ばれてきました。
未希が診察すると、見たことのある顔です。
「信ちゃん……信ちゃん!?」

翌朝目を覚ますと、未希の顔を見て震え出す信吉。
もう津軽に帰るつもりもないし、
自分のことなんか放っておいてくれと言わんばかりに
酒を要求する有り様です。

ただ、張り合っていた信吉が
同じように中学卒業後に出稼ぎに東京へ出てきていた
絹子や昭子の、元気そうな表情を見ると
信吉の目から大粒の涙があふれます。

数時間後、信吉は置き手紙をし
消えていなくなってしまいます。
しかしそれは後ろ向きなことからではなく
津軽に帰れる希望を持てた、と前向きなことでした。


作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
三田 佳子 (岩田未希)
岸本 加世子 (津田征子)
役所 広司 (浜村直彦)
渡辺 徹 (中川邦之)
石野 真子 (中川佐智)
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大坂 志郎 (工藤清吉)
赤木 春恵 (工藤イネ)
菅井 きん (岩田テル)
野際 陽子 (坂口美代)
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伊武 雅刀 (岩田剛造)
吉 幾三 (八木金太)
泉 ピン子 (村中ハル)
宇津井 健 (坂口一成)
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制作:澁谷 康生
演出:布施 実

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