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2018年12月14日 (金)

プレイバックいのち・(46)ガン告知

昭和58(1983)年の春、高原病院に人間ドックが新設され
村中ハルが新設前の患者として受診することになりますが
思いがけずハルの卵巣腫瘍が発見されます。
卵巣のがんでした。

ハルには子宮筋腫ということにして
高原病院で開腹手術が行われますが、
すでにがん細胞は腹膜に転移していて
手の施しようのない状態でした。

終戦後40年近く、姉妹以上の友情で結ばれてきた
ハルの病状に、岩田未希は
医師として友人としてこれからどうしたらいいのか
ただ呆然とするだけでした。


坂口一成・美代夫妻がお見舞いに訪れます。
美代に、未希と話があるから先に帰ってなさい、と言い
坂口は未希と向き合います。

坂口と面と向かうと、未希はハルを思って号泣します。
ハルの病状を聞いた坂口は、あまりのことに閉口します。
できるだけのことはするつもりではあるが
ハルに何と伝えたら……と未希は迷っているのです。

卵巣がんの特効薬もあるし、治ることもあるわけで
絶望するほどのことではない、と言いつつ
ハルには伝えない方がいいだろう、とアドバイスします。
それは幾多の患者を診て来た坂口の実感です。

がんの告知を受けると、ほとんどの患者は
立ち直れないほどのショックを受けてしまいます。
それほど辛いものはないし、残酷なものはありません。
死ぬまで希望を持たせてあげることが何よりも大切です。

そのためにはまず、
未希が元気になってしっかりしなければなりません。
坂口は大きな愛情で未希を諭します。


ハルの手術後1週間が経過し
未希、大場甚一郎、岩田征子、浜村直彦の4人で
今後のことについて話し合いが持たれます。

腹水がたまっていることもあるので
早めに抗がん剤を投与しようということになりましたが、
ハルにこれが抗がん剤であるというのを
悟られないようにするのが絶対条件です。

未希と征子は、ハルにがんであることを伝えない意見ですが
大場と直彦は、ハルがもっと積極的にがんと
戦おうという気持ちを引き出すためにも
告知すべきだという考えです。

がんの恐ろしさはみんな知っていることでして、
告知すればハルがかわいそうだ、と征子は主張します。
できることならがんについて何も知らせないまま、
静かに逝かせてやりたい、と。

ひとまず、征子の意見を取り入れて
卵巣腫瘍は伏せて看護にあたることになりました。


手術後3週間。

特に子宮卵巣系には目立った悪化はなさそうですが
退院はもう少し先延ばしした方がよさそうです。
抗がん剤の副作用で腎臓に影響が出る以上、
食事療法は絶対不可欠です。

しかしハルは3週間後に退院できるという言葉を信じて
さっさと退院してしまいます。
ハルの結婚式場に穴を開けられないということもあって
入院ではなく通院でなんとか許可をもらったのです。


退院後1ヶ月。

1週間に1度は点滴を受けに来る、という約束で
退院したはずなのに、快気祝いだけ送りつけて
病院に来なくなってしまいました。

未希は坂口家に電話をし、
ハルに病院に来るように説得します。

ハルはあまり重く考えていないようで、
点滴打つだけなら近くの病院でもできるだろうからと
坂口に近くの病院を紹介してほしいと頼むのですが、

未希や征子がどんな思いでハルの治療に当たっているのか
どれだけ心配してくれているのか分かっているのかと
すべてを知っている坂口は、珍しくハルを叱ります。


ハルが病院に来なくなってしまった以上、
いよいよがんだと告知する時がきたようだ、と直彦。
それでも征子は、病院を変わりたいのなら
ハルの望み通りにしてあげたい、と告知には反対です。

しかし今度は、病院を変わる変わらないでもめまして
未希は、別の病院に友人のハルを預けるような
無責任なことだけはしたくない、と言い出します。

未希が医者になるために
ハルに援助してもらった力は計り知れず
最期までハルの面倒を見たい、と。

2〜3日時間をもらって、未希は弘前に向かいます。


弘前に向かった未希は、八木金太を呼び出します。
そしてハルが入院していたことを打ち明けるのですが
退院したことを知って、金太も安心顔です。

どこが悪かったんですか、と笑う金太に、
未希は厳しい表情を向けます。
「卵巣腫瘍。卵巣のがんなの」

がん……。
さっきまで笑顔だった金太の表情が、
いっぺんに固まります。

ただ、しっかりと治療を受けて医師の言うことを聞いてくれれば
まだ生きる望みはある、と聞いて
金太は自分が東京に行ってハルを説得する、と
その役目を買って出てくれます。

ハルさんはそんな弱い人でねェ。
ハルさんには生きてもらいす。死なしゃせん。
助かってもらいたいんです。助けてあげてください──。


久々に高原家に帰った未希。

なかなか帰省しない人間が、
突然帰って来たのでみな驚きますが、
弘前の病院に用があって、とごまかします。

工藤清吉やイネは大喜びですが、
中川邦之や佐智は、未希の言葉は信用できず
何かあったな、と疑っています。

オレには隠すことねえべ、と笑う岩田剛造に
人の命はどうなるか分からない、と言い出す未希。
「剛ちゃんは長生きしてね。いつまでも元気でいて」


未希は金太と東京に行き、ハルの結婚式場に向かいます。

もう治ったつもりでいるハルに、
手術したばかりなのに無理して! と怒り心頭の金太です。

そう簡単に死なせるわけにはいかねぇんだからな! と
金太の表情を見て、彼がただの見舞いに
来たわけではないということを察知したハル。

「医者の言うこと聞いてよく点滴打たねば……がん広がって」
そこでハルは、自分ががんに冒されていることを知ります。

「何で言ってくれなかったのよ!」
あまりのショックに目が泳ぐハルに、
未希も征子もハルにそんなひどいことが言えるか、と
金太が代弁してくれます。

でも、前向きなハルは
話してくれたことに感謝をし、
ワガママ言って迷惑をかけたことを詫びます。
「私の病気は私が治す」

そう言いつつ、ハルは余命が恐くて
大粒の涙を流して号泣します。


それから、ハルと未希たち医師団がタッグを組んで
がんとの闘いが始まりますが、経過は思わしくありません。
未希や征子は激しい焦燥に身を削られる思いでしたが
いつも明るく強いハルに、かえって救われていました。

やがて冬がきて、これ以上抗がん剤を使っては危険だという
タイムリミットである半年の期限がきました。
はるの腹膜のがん細胞は衰える気配もありません。

翌 昭和59(1984)年の夏ごろから
一進一退を繰り返しながらハルの病状は悪化し始め
がんの専門病院での診断も悲観的でした。


腹水が大量に溜まっていまして、
これからは衰弱が激しくなっていく一方です。

そろそろ入院させないと、と未希が考える一方で
征子は、仕事など最期まで好きなことを
させてあげたいと考えています。

そんな最中、結婚式場の案内で立っていたハルは
意識を失って倒れてしまいます。
腹水がたまって膀胱を圧迫し
尿が出ない状態になっていたのです。

緊急オペでどうにか助かりましたが、
腹水がたまったら来てくださいと言っていたのに
これからは気をつけてくださいね、と
征子は忠告します。

帰っていいですよ。入院するほどじゃありません。
そう言って送り出そうとする征子に
ハルはつい弱音が出てきます。
「もう私働けない……諦めた」

そして、動けるうちに津軽に行って
津軽で死にたい、とつぶやきます。
津軽が好きだったのに、慌ただしく帰って来てしまう。
清吉やイネ、邦之に佐智に会いたい……。

「分かった……行こう。征子と3人で」
未希はハルの手を握り、頷きます。
いま、ハルは自分の死期をはっきり感じていると
未希は思っていました。

ハルにどういう死を迎えさせてやれるのか。
それは終戦後苦楽を友にして来た親友として
そして医師としての最期の責任だと
未希は密かに覚悟していました。


作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
三田 佳子 (岩田未希)
岸本 加世子 (岩田征子)
役所 広司 (浜村直彦)
渡辺 徹 (中川邦之)
石野 真子 (中川佐智)
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大坂 志郎 (工藤清吉)
赤木 春恵 (工藤イネ)
柳生 博 (大場甚一郎)
新藤 栄作 (岩田竜夫)
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伊武 雅刀 (岩田剛造)
吉 幾三 (八木金太)
野際 陽子 (坂口美代)
泉 ピン子 (村中ハル)
宇津井 健 (坂口一成)
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制作:澁谷 康生
演出:伊豫田 静弘

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