連続テレビ小説おしん・少女篇(19)〜(24)
おしんを助け、雪の山中であたたかく庇護してくれた俊作が
おしんの目の前で射殺されます。
俊作がなぜこんな目に遭わなければならないか分からず、
ただ俊作を殺した憲兵たちが憎かったわけです。
悲しむヒマはなく、おしんは憲兵に連行されていきます。
取調室で何を聞いても、おしんはそれには答えず
「なしてあんちゃんば殺した!」と食って掛かります。
俊作は天皇陛下の命令に背いた逆賊だ、お前が知らないだけだ、と
言われても、俊作は猟師だと信じているおしんがいます。
軍人は軍隊から脱走すれば射殺される。
だからどっちみち射殺される運命になるわけですが、
俊作と暮らしていた家まで案内しろ、と言われても
行き倒れで助けてもらい、今日初めて山を下りて来たので
場所なんか分からない、と主張します。
もう埒があきません。
どうやら俊作はひとりで行動していたようです、と
憲兵から報告を受けた上役は、おしんを見て
もう帰してやれ、と命じます。
最期に俊作に会いたいと懇願しますが、線香も上げてあるし
遺体は両親が東京から引き取りに来ることが決まっていて
安心して帰りなさいと言われ、それに従うしかなさそうです。
ほどなくして、おしんは生家にたどり着きます。
薪を取りに外に出た兄がおしんを見て
「おしんが化けて出たあ!」と叫び、
作造とふじが外に駆けつけます。
「母ちゃん……」
死んだと思っていた娘が生きて戻って来た。
ふじには、それだけで充分でした。
しかし抱き合っているふじとおしんを引きはがし
おしんに平手打ちを食らわせた作造は
親と子でねえ、とっとと出て行け、と厳しく当たります。
ああやっぱりな、という表情でおしんは立ち上がり
来た道を引き返そうとします。
ふじは慌てておしんを止め、作造の気持ちが収まるまで
しばらく納屋で休んでなさい、と言います。
ふじは納屋に布団を運び込み、飯も運んできます。
しかし奉公先を出奔して今日までの長い期間
どこでどう暮らしていたのか。
親がついていて御礼も言わなければいけないので
ふじはおしんに経緯を聞きますが、
行き倒れているところを助けてくれた猟師のあんちゃんが
死んでしまったとつぶやきます。
ふじは根掘り葉掘り問い続けますが、
おしんの顔色が次第に悪くなり
7歳の子どもがひとりで生きて、口では言えない苦労も
して来たのだろうと祖母のなかに止められます。
夜、作造はそっと納屋の方に向かいます。
作造はおしんにふとんをかぶせ、安心して出て行きます。
家族の前では見せない、父親の姿です。
しかし翌朝、野良仕事に向かった作造は
おしんが脱走兵とともに逃げていて、
射殺されたらしいという噂でもちきりで
そんな恥知らずが! と平手打ち。
飛ばされた拍子に納屋の扉に激突し
流血して気絶してしまいます。
手荒な真似をしなくても、と作造に食って掛かるふじは
オレに反抗するのか、と言う作造に
ああ、と珍しく歯向かうふじです。
納屋の中でハーモニカを吹いていると、松造がひょっこり現れます。
ハーモニカの音で場所が分かったそうです。
おしんは、脱走兵がそんなに悪いことなのかと
松造に疑問をぶつけます。
松造はおだやかに、おしんでも分かるように
言葉を噛み砕きながら説明してくれます。
俊作の父親は立派な軍人で
俊作も軍人になれることは素晴らしいことだと思っていました。
そして203高地で戦場に出た際に、俊作の考えが変わってしまい
まるで商売のように人を殺す軍人が嫌になり、
ケガしたのをいい機会に、病院から抜け出たそうです。
俊作が脱走兵だと言われても、おしんだけは
本質は違うんだ、ということを知っていて欲しい。
松造はそれを伝えにやってきたのでした。
姉・はるが奉公先から帰ってきました。
期間を終えての帰宅ですが、
次は製紙工場に行くことが決まっています。
製紙工場はきついといううわさで有名ですが
朝早くから夜遅くまで働かなければならない奉公に比べると
工場が終われば寄宿舎でゆっくりできるし、
いくぶんか楽だと考えています。
だから、次姉・みつも来年は奉公を辞めさせて
製紙工場に行かせた方がいい、と作造に伝えます。
奉公なんてばかばかしくてやっていられない、と。
はるは、奉公先を辞めるときにおかみさんから
餞別にともらったお金を、おしんに手渡します。
勉強好きなおしんに、もっともっと勉強してもらいたくて
そのお金で石板と石筆を買え、と勧められたのです。
おしんはお守りの時間を見て街に石板と石筆を買いに出ます。
無事に帰ったおしんは、
俊作に向けた手紙を石板に書き綴り
それは夕飯の準備を忘れてしまうほど、
熱中していました。
ブラジル移民の話があり、申込をして来たという作造。
ブラジルという土地は、山形のように雪深く埋もれることもなく
年中温暖な気候で、土地も肥えているので
農作物もおもしろいように採れるというのです。
こんな村に、生きるか死ぬかの瀬戸際で暮らしていくより
新しく土地を得て、作物を育てて暮らしていける
そんな夢のような暮らしが待っているのです。
リウマチに悩むなかは、遠くの国に行けるわけはないので
ここに残るのなら次男三男の家に行ってもらうしかありません。
ふじは、作造のおふくろさまを捨ててまで
ブラジルなんて行こうとは思えず、大反対です。
なかが、消えました。
ブラジル移民の話で作造にさんざんに言われ、
兄の庄治にも、穀潰しが! と粗暴な態度だったので
さすがのなかも、それに堪えたのかもしれません。
なかがいなくなり、おしんはなかを探します。
弟たちが泣きながら指さす方に走り
途中の田んぼでは「川の方に行っただよー」と教えてもらい
たどりついた所では、なかは
ごつごつした岩から飛び降りるところでした。
次男三男のところに行っても
厄介者であることには変わりありません。
役立たずな自分なんかいないほうがいいんだ、と
おしんの前で涙を流すなかです。
おしんは、ずっとおばあちゃんのそばにいる、と言って
なかと抱き合って泣きます。
おしんは、貧乏というもののみじめさを思い知らされていました。
お金があれば母も祖母もこんな辛い思いはしなくていいのに、と。
それ以降、作造からブラジル移民の話は出なくなります。
その代わり、ふじが出稼ぎに出ることになりました。
母との別れも近づいた初秋のある日
生まれたばかりの末の妹・すみを養子に出し、
その翌日、出発の日がいよいよやってきました。
ふじは温泉宿の女中と言っていましたが、
本当の仕事が何なのか、おしんは知る由もありません。
その日から、母親の仕事はすべて
おしんが引き受けることになります。
寝る間もないほど多忙な日日になりますが、
その年の冬、おしんに次の奉公先が決まります。
山形酒田の米問屋で、2年の年季奉公で米5俵。
なかは反対ですが、これで少しはいいものを食べられると
おしんは喜んで奉公に行きます。
酒田に行く前に、おしんは母の出稼ぎ先に行きます。
子どもが行くところではないと作造にもなかにも反対されましたが、
どうしても会いたさが募って、抑えられなくなったのです。
こっそり持ち出した米を、途中の民家で泊めてもらったときに
炊いて握り飯にしてもらい、ふじのいる温泉宿にたどりつきます。
ふじは女中というより、客の酒の相手をするお仕事をしています。
女将に取り次いでもらうのですが、酒の相手をしているせいか
初めはおしんが来たと言っても取り合わないのですが、
おしん!? と思ったときには、身体が勝手に動いていました。
ふじがあまりに綺麗になっているので、
おしんは分かりませんでした。
母親という立場から、宿の女将の計らいで
おしんとふじのために一泊させようと
食事の用意までしてくれます。
ふじは、この仕事についていずれ分かるときがくるかもしれないが
作造やなか、おしんら子どもたちに顔向けできないような
恥ずかしいしごとはやってないから、
それだけは覚えていて欲しい、と伝えます。
父や祖母がなぜ会いに行くのを反対したのか
おばあちゃんとなったおしんには、分かる気がします。
しかしおしんの胸には、あの時のふじの言葉が
今もしっかりと残っています。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
小林 綾子 (おしん)
泉 ピン子 (ふじ)
大路 三千緒 (なか)
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中村 雅俊 (俊作)
大橋 吾郎 (圭)
伊東 四朗 (作造)
乙羽 信子 (おしん)
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制作:岡本 由紀子
演出:江口 浩之
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