連続テレビ小説おしん・少女篇(7)〜(12)
おしんが7歳の春、雪解けとともに
下流の街の材木問屋に奉公に出ることになりました。
初めこそ嫌がって、学校にいくンだ! と聞かないおしんでしたが
自分が方向に行かなければ、祖母のなかは食事を1回しか摂らないし
母のふじはお腹の中の子どもをとても育てられないと
せっかくの子どもを流産してしまえと冷たい川に身を浸ける始末。
そんな、本当に貧困の実態に向き合った結果
正義感の強いおしんは、考えを変えて
家族に少しでも楽に暮らしていけるように
奉公に出る、という結論に至ったわけです。
とはいえ、時代は明治40(1907)年
農村から幼い子供が奉公に出るというのは
この時代には特に珍しい話しではなかったのです。
父の作造は、どこかそれが当たり前というところがありますが
ふじは、おしんに申し訳なさを感じずにはいられません。
材木問屋のおしんの引き取り先から、
おしんの給金を前払いということで米一俵が届けられます。
ふじはせめて、おしんが奉公に出る前日
米を炊いてみんなで門出を祝います。
さらにふじは、作造に嫁いで来たときの着物で
夜通しでおしんに着物を縫ってあげます。
おしんは手のかからない子で、それに甘えて
何もしてあげられなかったのを悔いているようでした。
なかは、おしんの手に50銭銀貨を握らせます。
こんなことしかできないから、と
なかはおしんに持っていけと押し付けます。
最上川からいかだに乗って川を下ります。
おしんはいかだで立ち上がります。
「母ちゃん……母ちゃん!」
ふじは涙をこらえて、おしんが見えなくなるまで見送ります。
しばらくいかだで流れていくと、
作造が見送っている姿が見えます。
雪深い中を、追いかけて来る作造。
「おしん! すまぬ……すまねえ」
一番辛いのは、家族の前で涙を流す姿なんか見せられない
父ではないかと、おしんは感じました。
初めて作造の思いを察していました。
たった米一俵で、おばあちゃんは
いかだにのって売られていったのか。
そう呟く圭に、最上川を眺めながら、
おしんは圭に語りかけます。
「誰が悪いなんてないよ。どこも苦しかったんだ」
中川材木店にたどりついたおしんですが、
いかだ旅に酔い、危険な思いをしてぐったりしています。
しかし中川の者たちは、おしんが7歳で
身体が小さいことも気にしつつ
それでもみっちり仕込んでやる、と
初めから辛く当たります。
おしんが意識を取り戻すと、物置に寝かせられていました。
そこでおしんは、本当にひとりなんだと厳しい現実に直面します。
おしんの前に現れた、いかにも厳しそうな
使用人・つねに連れていかれた部屋では、
材木問屋の主・中川軍次とその妻・きんがいました。
おしんの仕事は、生まれたばかりの男の子のお守りです。
翌朝から、おしんの奉公生活が始まります。
主と奉公人たちが大根飯を食べている間に
おしんは掃除を済ませ、きんが出るまでの間に
早飯を済ませてしまわなければなりません。
おしんが飯にありつけるのは奉公人の中で最後であり
お櫃の中には飯がほとんど残っていません。
そんなおしんの姿を見ていた見習い・定次は
つねに仕込まれた方が奉公人の近道なんだから、と
厳しい言葉でも耐えろ、と何かとおしんを気にかけ、
何かあったらオレに言え、と笑顔で話しかけます。
赤子はおしんには重く、足が棒のようになります。
きんがお乳をやっている間、
川に出て赤子のおしめの洗濯をこなすおしんは
川の冷たさに身を震わせていました。
風呂も奉公人の中では最後で
ほんのわずかになった残り湯で風呂を浴び、掃除を済ませて
物置で身体を休める頃には、おしんはぐったりとしています。
小学校へ急ぐ子供たちに触発されて、
おしんは赤子をおぶったまま
小学校に入り、授業を覗き見しています。
もともとは小学校に入るはずだったので、
小学校とはどんなところなのか気にはなっていたのですが、
とても楽しそうなところです。
赤子が泣き出して、お乳の時間だと思い出し
慌てて家に戻るおしんですが、
中川材木店では、おしんと赤子がいなくなったと大騒ぎし
使用人総出で探し回っていたのです。
帰って来たのを迎えたのは、定次でした。
定次はオラがついていてやる、と
道に迷ったらしいから仕方ねえな、と穏便に済まそうとしますが、
つねはおしんを何度も平手打ちします。
その日の夕方、おしんがのぞき込んでいた小学校の松田先生が
中川材木店を訪れます。
もう二度と来ないから家の人には言わないで、と頼み込んだのに
小学校に無断で立ち入ったことを咎めに……とおしんは青ざめます。
松田先生は咎めに来たわけではなく、7歳という就学年齢を迎え
おしんを小学校に上げるように説得に来たのです。
軍次に呼ばれたおしんは、てっきり怒られるものと脅えていますが
明日から小学校に上がれ、と言われて
ここに奉公に来て本当に良かったと思っています。
しかしつねは反対です。
奉公人の分際で小学校に上がるなどと、聞いたことのない話です。
小学校に行くのなら昼飯抜きだな、と言うつねに
きんは、そんな酷いことは言うなと牽制します。
おしんは、たとえ昼飯を抜かれたとしても
それでも小学校に上がりたいんです。
任せられた仕事はすべてやる、その約束で
小学校に上がることになります。
担任の松田先生も、赤子をおぶって就学していた経験があり
そんなことからおしんに理解を示し
おしんが過ごしやすい環境を整えます。
そして放課後でもおしんに付き合って
学業の遅れを埋めるべくおしんに教え続けます。
おしんはその誘いにいそいそとやって来ては
けなげに勉強を続け、学力はみるみる向上していきます。
おしんが就学して1ヶ月、
つねによる昼飯抜きは相変わらず続いていましたが、
松田先生が芋など心ばかりの昼飯を持って来てくれます。
しかし、そんな幸せな期間も長くは続きません。
先生の贔屓も同級生には悪いように映り
赤子の鳴き声で勉強できないし、
子守りの来るところではないとみんなに責められます。
いじめっ子に殴られ、足を酷く腫らして帰って来たおしんは
もう小学校には行かない、と辞めてしまいます。
松田先生が様子を見に中川材木店に足を運びますが
いじめを受けたことは言わず、学校を去る決意を伝えます。
定次は、切った材木をいかだに組んで
川を流すついでに、おしんのしたためた手紙を
生家に立ち寄って届けることを約束します。
おしんは月の明かりを頼りに、手紙を書きます。
その手紙を持って、畑に出る前の作造とふじに会いに行った定次は
おしんが書いた手紙だ、と言って手渡します。
おしんが健在でいることも嬉しいニュースなのに
字をかけるようになったおしんに驚きます。
字が読めない作造とふじですが、だとしても
手紙をしたためてくれたのは親としてはとても嬉しいことです。
カタカナぐらいなら、と定次は代読してあげます。
腹いっぱい食わせてもらってる、と書いてあり
奉公に出してよかった、とふじは安心しますが、
うそ八百並べた手紙に、定次は伏し目がちになります。
おしんは、つらいって書いたって
家に帰れるわけではないのだから、と
安心させるように手紙を書いたのです。
つねの財布から50銭銀貨が無くなりました。
つねはおしんをはなから疑い、着物を脱がせて改めさせますが、
お守りの中から50銭銀貨が出てきて、盗人扱いされてしまいます。
おしんの気持ちの中で、何かが音を立てて崩れます。
盗人扱いされて、もうやってられないという気持ちになったわけです。
おしんは家には帰らず、雪道を知らぬ方向に進んで行くのでした。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
小林 綾子 (おしん)
泉 ピン子 (ふじ)
大路 三千緒 (なか)
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大橋 吾郎 (圭)
伊東 四朗 (作造)
乙羽 信子 (おしん)
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制作:岡本 由紀子
演出:小林 平八郎
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