連続テレビ小説おしん・青春篇(43)〜(48)
おしんは、駆け出していました。
みのは、その手紙を居間に置いておいたと言っていましたが
居間にない、ということは、浩太からの手紙だと感づいて
加代が勝手に封を開けて読んだに違いありません。
手元にないので、あくまでおしんの推測になりますが、
安田浩太からの手紙が来たということは
まさに今、あるいは近々
この酒田にやってくることを意味しているはずなのです。
おしんは、浩太の定宿を訪ねますが
女将は、泊まってもいないし、来る予定も聞いていない、と。
であれば残る選択肢はひとつ、あの酒田の海岸です。
そして手紙には、会える日時が記入してあるはずなのです。
しかし加代の手に渡った今
その日時がいつなのか、おしんには分かりませんでした。
「思うところあって家を出ます。探さないでください。
結婚するつもりも、加賀屋を継ぐつもりもありません」
加賀屋に戻ったおしんは、みのに呼ばれ
加代の置き手紙を見せられます。
憔悴しきっているみのに頼まれ
おしんは、加代がどこにいったのかを知るために
まずは最寄りの駅に向かいます。
加賀屋の娘といえばけっこう有名なようで
「さっき上野ゆきの切符買ったなぁ」と
駅員は話してくれますが、連れかどうかは分からないものの
若い男も上野ゆきの切符を買っていったと教えてくれます。
おしんは、その若い男こそ浩太だと確信しますが
上野ゆきの列車はすでに駅を出発しています。
信じたくないものの、加代の部屋を捜索してみると
着物などがごっそりなくなっているので
みのは、加代が家出したと納得せざるをえません。
くには、苦労を知らない加代のことだから
金が無くなり食うものが無くなれば
帰ってくるしかないのだからとさほど心配はしていません。
「金が無くなるのを待つんだな」
しかし、浩太のことを秘めていたおしんにとって
加代の出奔以来の加賀屋での暮らしは針の筵でしたが、
10日が経っても浩太からも加代からも何の音沙汰もなく
おしんは焦っていました。
おしんと結納を交わした桜井家では、
自慢の庭に咲いた自慢の菖蒲を見る会を開くとかで
おしんにその手伝いに来て欲しいとの申し出があり
くにはニッコリして頷きます。
手伝いというのは単なる口実で、
おしんを櫻井家の嫁として
町の有力者たちに顔見せする目的だというのです。
その菖蒲を見る会も無事に終わり、
会の場が座敷に移り、おしんは後片付けをしていた時
ベロンベロンに酔っぱらったフィアンセの坊っちゃん・徳男が
おしんに抱きつくなど悪ふざけをしてきました。
いくら実質的な夫婦だと言っても、おしんには耐えられず
ヤ! と手を振りほどいて押し出すと、
徳男は池に落ちてしまいます。
そのスキに、おしんは走って加賀屋に戻ります。
夫となる男を池に突き落とすとはどういう了見だと
恐ろしいほどの剣幕で櫻井家から連絡があり、
おしんとの婚約を破棄させてもらう、ということになりました。
くには、私も一緒に行ってあげるから
今から行って詫びを入れて来よう、と言うと
詫びるつもりはない、と
おしんはくにに初めて真っ向から反抗します。
「長えこと可愛がっていただきましたけんど、
お暇をいただきたく思います」
加代が、おしんが胸に秘めた恋人・浩太と東京に行ったことを
このまま誰にも話さずにいるとは思うのですが、
それが毎朝、くにや清太郎・みのたちを騙しているようで
いたたまれないのです。
おしんはひとり故郷へ帰ってきました。
8年ぶりの実家であるはずなのに、敷居は高かったのです。
加賀屋を辞め、結婚話も立ち消えになり
父・作造も兄・庄治もおしんの帰郷を喜ぶはずがないのです。
おしんは、祖母・なかの位牌に手を合わせると
結婚話も断られ、加賀屋を辞めてきたことを打ち明けます。
作造に怒鳴られ、手を上げられる覚悟で話したのですが、
「ま、それはそれでええではないか」と肩すかしを食らいます。
おしんは帰郷して、姉のはるが製糸工場で肺結核を得て
工場から帰されたことを知ります。
すぐに医者を呼ばなければならない状況ですが
呼べるだけの金銭もありません。
おしんは、加賀屋を出るときに
くにに餞別としてもらった30円を出し、
これで医者に診せ薬をもらい、養生させようと言います。
医者は、肺結核に効く特効薬はなく
せめて美味いものを食わせて、今までの苦労を
いたわってやれというのが精一杯のところです。
稼いでいたはるが病気で帰され
おしんも加賀屋を辞めて戻って来ている上、
医者の勧めるように母親に会わせた方がいいからと
まだ加賀屋に奉公しているふじを呼び寄せたら、
自分の稼ぎしかねえじゃねえか! と庄治は当たり散らします。
庄治は、健康体に観戦すれば首くくらなければならぬと
家のために重労働をこなして来たはるを母屋に隔離させますが、
誰が何と言ってもはるの世話は自分がやると
おしんは庄治に反発します。
はるを何とかして元気づけたいおしんは
姉妹で女子トークして盛り上がります。
酒田からふじが慌てて帰ってきました。
母が帰ってきたからといって病気が治るわけでもなし
生活が楽になるどころか逆に苦しくなる一方で
庄治はふじに文句を言いますが、
ふじは庄治を平手打ちします。
そして今度は、小作と地主の関係に口が及んだおしんを
作造が何度も平手打ちする親子ゲンカに発展。
おしんは表情をなくしています。
翌朝、製糸工場を訪れたおしんは
はるとの女子トークで出てきた、
はるが恋する平野に面会を求めます。
はるが元気なうちに、見舞いに来てはくれないか。
平野ははるのことをどう思っているかは分かりませんが
はるは平野のことを好きなのです。
生きているうちに平野と再会させて
生きててよかったと思わせたいわけです。
「何を言っているのかよく分からないが……」
そうつぶやく平野は、
はるの気持ちには気づいていなかったようです。
おしんは、平野の見舞いを断念します。
それがある日、花束を持って平野が訪ねて来てくれました。
咳き込みながら大量に吐血して、
意識もあるのかないのかはっきりしない時でしたが、
ともかく生きているうちに間に合ってよかったです。
気づいたはるは、平野が見舞いに来てくれたことをとても喜んで
また元気になって一緒に働くぞ! と幸せそうな笑顔です。
平野は、また読んだ本の話をしてやるからね、と励まし
話し疲れただろうから、と少し休むように勧めます。
再奉公先を探していたおしんに、勝次が話を持ってきました。
料理屋で男性客の酒の相手をするもので、3年間です。
客に気に入られれば一晩の売上も10円近くになるし
そのまま玉の輿に乗って嫁入りする者もいるそうです。
はるは、おしんに勝次の話に乗ってはだめだ、
断れ、と声をかけます。
製紙工場の女工たちも、勝次の口車に乗せられて
売られていった娘たちも非常に多いという話です。
しかし作造は、話を受けてしまいました。
はるは、もともと自分に話があっていた
髪結いの仕事をおしんに譲ります。
はるはその夜、19歳という短い生涯を閉じました。
おしんは、やせ細った身体を振り絞っておしんに伝えてきた
はるの言葉を繰り返していました。
はるの野辺の送りが済んだ後、ふじに
髪結いの仕事で東京に出る決意を明らかにしたおしん。
荷物は持たず、身ひとつで、とアドバイスを受けます。
荷物は落ち着いてから、母親が後から持っていく手はずです。
朝早く、おしんは旅立ちます。
心細い、ひとりでの旅立ちです。
これからどんな暮らしが待っているのか
16歳のおしんには分かりませんでしたが、
もう二度と故郷には帰れない、ということだけは
おしんにも分かっていました。
おばあちゃんとなったおしんは、圭と
谷村家(おしんの実家の姓)の墓をお参りします。
はるが亡くなったときにこの墓を立てた
作造も、ふじも、庄治も
今はみんなお墓の中に入ってしまいました。
出身の村が誰もいなくなり、廃村になって
墓をこちらの寺に移しましたが、
おしんはこの墓をお参りしたのは初めてです。
今でははるのことを思い出してあげられるのは
自分(=おしん)しかいないのだから、と
おしんは墓の手入れを始めます。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
田中 裕子 (おしん)
泉 ピン子 (ふじ)
千野 弘美 (はる)
吉岡 祐一 (庄治)
宮沢 元 (医師)
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長岡 輝子 (くに)
渡瀬 恒彦 (浩太)
伊東 四朗 (作造)
大橋 吾郎 (圭)
乙羽 信子 (おしん)
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制作:岡本 由紀子
演出:小林 平八郎
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