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2019年3月 3日 (日)

大河ドラマいだてん 東京オリムピック噺・(09)さらばシベリア鉄道 〜初の五輪へ! シベリア鉄道波乱の旅〜

明治45(1912)年5月16日、
「敵は幾万」の合唱に見送られた
韋駄天・金栗四三と痛快男子・三島弥彦。

日本人として初めてのオリンピックに出場するために
ユーラシア大陸を横断し、
はるか北欧のストックホルムを目指します。
その距離──8,000km。

2人の人気はもはや全国区でありまして
大きな駅にはオリンピック選手を一目見ようと人々が押しかけ
八丁味噌を贈る者やら扇にサインを求める者やら。

敦賀に向かう各地でこんなことがあったので
なかなか眠れない四三は
これから始まる旅の記録を日記に残すことにします。

“誰も経験したことのない暗中模索の旅”という想いを込めて
『盲目旅行・国際オリムピツク協議参加之記』と名づけられました。
これは日本にたった一つしかない、
オリンピック初参加の貴重な記録です。

ストックホルム青春編の開幕でございます!

五月十七日、快便。
早朝、福井県敦賀着。快晴なり。

敦賀で、なぜか同行して来た可児 徳とはお別れ。
活躍を祈りながら固い握手を交わします。
しかし、一行を追いかけてくるはずの
嘉納治五郎はついに現れず(笑)。


一行を乗せた船は、敦賀から2日間かけて
ロシアのウラジオストックに着き
シベリア鉄道に乗り換えます。

五月十九日、快便。気温五度、極寒なり。
嘉納先生の姿、浦監(ウラジオ)にもなし。
シベリア鉄道は二等車両、大森婦人は隣の女子寝台なり。
嘉納先生、ついに間に合わず。

ひと部屋4人の寝台に四三、弥彦、大森兵蔵の3人。
当然、空いた1つのベッドには、
誰だか分からないドイツ人のおじいさんが乗って来ます。

望みは絶たれし午後一時二十分、鐘の音三つ鳴り、
いよいよシベリア鉄道、西へ向かって走り出す。

同室のドイツ人のおじいさんは、
日本人がストックホルムオリンピックの選手団であることを知ると
ヤマトダマシー! ヤマトダマシー! と大喜びし、
食堂車で一杯やろう、とみんな連れていかれます。

食堂にて外国人の人相を見る。
ドイツ人は堂々として動じず。ロシア人は粗大で実に大陸的。
米国人の実に快活そうな気持ちの浅そうな趣き、
フランス人は老獪(ろうかい)にて分からず。
日本人は論外なり。

おじいさんはひとりでビールをがぶがぶと飲み
ウェイターに明細をもらって一目見ると
笑いながらそれを兵蔵のところに黙って置いて
ヤマトダマシー! ヤマトダマシー! と笑いながら帰っていきます。

「明日から自炊にしよう。ひとり2円ずつでいいよ」
当初、私がおごろう、と話していた兵蔵の手のひら返しに
えっ!? と驚く四三と弥彦でした。

夜、大森監督の咳と忌まわしきドイツ人の
鼾(いびき)が五月蝿(うるさ)くて眠れず。


熊本・池部家へ嫁いだスヤは
夫・池部重行のせきこみで目を覚まします。

戸を開け、朝日を浴びて大きく伸びをしていると
真っ正面に、姑・池部幾江が厳しい表情で座っています。

鶏が鳴かんけん寝過ごしました、と言い訳するスヤに幾江は
スヤは愉快な人だからのびのびやって構わないが
池部家には守ってもらわなければならないしきたりが
いくつかある、と指導を受けます。

タライに井戸から水を汲んできて
顔を洗い終わるまでタライを持っていないといけない、とか。
「お義母さんが?」
「あンたが! おるが顔ば洗うまで!!」


シベリア鉄道の旅、二日目。
朝起きてから寝るまでYシャツ、ネクタイ、背広革靴で肩が凝る。
三島氏の身支度の長さに閉口。
毎朝きっちり三十分を要する。まるで女子の如し。
やはり日本人は論外なり。

列車は間もなくハルピンに到着します。
兵蔵の提案でいったん途中下車することにします。
列車の長旅で身体もなまっていることだし、いいチャンスです。

ハルピンといえば、3年前の明治42(1909)年10月。
ハルピン駅で、初代内閣総理大臣・伊藤博文が
日本の朝鮮統治に不満を持つ朝鮮人によって撃たれます。

当時満州の地は、中国・ロシア・日本が覇権を争う
不安定な状態でした。


五月二十日、満州ハルピンに着く。
規模雄大なれど、不穏な空気が漂う。

せっかくなので、絵葉書を買いたいと
駅前を歩いているだけでロシア兵に銃を向けられ
恐い思いをしたふたりは、
さっさと用を済ませて再び駅に戻ってきました。

先刻までロシア兵に狼狽していたのにも関わらず、
三島氏の軽薄な振る舞いに呆れる。


義母・幾江に言われた通り、タライに水を汲んで
幾江が起きてくるのを待っているスヤは
下に引いてある新聞紙に、四三の記事があるのを見つけ
熟読してはクスッと微笑みます。

じき幾江が起きて来て、顔を洗おうとしたその時
庭から金栗実次が乱入してきました。
四三からの絵葉書が届いたのだそうです。

前略、シベリア鉄道の旅、四日目。
列車はバイカル湖に沿って進む。
その壮大なる景色に見惚れつつ、退屈を忘れたり。
バイカル湖は世界第一の湖にて四方は山、気温摂氏五度。

シベリア鉄道、五日目。いよいよヨーロッパ領に入る。
各自、なまった体をほぐす。
それが済んだらもはやする事なし。話題もなし。


5月25日、
相変わらず橘家円喬の移動の俥を引いていた美濃部孝蔵は
初給金として5厘(1銭の半分)をもらいます。
当時の車代は1日借りると50銭での、5厘です。

そして、初めて師匠に名前をもらいます。
『三遊亭朝太』
「私ん家知ってるかい? 明日から来な。俥はいいからね、手ぶらで」

噺家なんて水物だ、
食うことなんか後回しにして芸の苦労をしなきゃいけないと
この5厘が教えてくれたわけです。


五月二十六日、日本を出て、十日目。
全行程のちょうど、真ん中を過ぎる。

車内で、安仁子夫人による英会話レッスンが始まります。
そんな中、外国の若いお嬢さまたちが通路を過ぎて行くと
寝間着のまま飛び出して追いかける弥彦です。

人には気の合う人と否とあり。


余は西洋人が嫌いなり。半かじりは尚嫌いなり。
いかに西洋人のまねをしたとて日本人は日本人なり。
なんぞ真の西洋人ならんや、
むしろ日本人の元気あるを示し、特徴を示せよ。

四三の絵葉書が、東京師範学校の可児宛にも届きます。
「この“半かじり”とは大森氏のことかな、アハハハ」
「でしょうな。フフフ」
永井道明のボケに、受ける可児です。

しかし、本当のところは……兵蔵は肺を患っていて
このままではオリンピックを見られないということもあり得たため
兵蔵のオリンピック競技法という数百枚のレポートと引き換えに
選手団監督として治五郎が選任したのです。

むろん、安仁子はそのサポート役です。


五月二十八日、
大森氏の体調、回復の兆しを見せず。
ついに、安仁子さんが自炊の中止を申し出る。

ここで四三の怒りが爆発します。
監督はあんな風で病気だし、嘉納先生も不在。
弥彦は女子のケツを追いかけ回してばっかりで
そんな自分たちが日本の黎明の鏡になれるのか!?

ちょっと付き合いたまえ、と弥彦は
冷静に四三を食堂車に連れていきます。
「最後の晩餐だ、予算を気にせずに食おう」

目の前には高級料理が並んでいます。

テーブルマナーも様になっていて、
西洋人に負けとらん、と弥彦にお墨付きをもらいます。

走るのは僕たちだ、臆することなく
日ごろの成果を見せてやろう。
弥彦にそう言われて頷いた四三。
ブドウ酒も入って、弥彦と熱く語り合います。

「三島さん、頑張りまっしょ」
固い握手を交わします。


翌日、ロシアの首都、セントピータースバーグに着く。
六月二日、日本を発ち十七日目。
天気は日本晴れ、快便。
バルチック海を船で進み、
我らが目的の地、ストックホルムへ。

明治45(1912)年6月2日
スウェーデン・ストックホルム。

大使館の内田公使が出迎えに来る。
何より驚いたのは、子供から大人まで
誰もがオリムピックを知っていること。
みな一ヵ月後の開催を心待ちにしています。

内田公使が一行のために馬車を用意してくれていました。
一行はそれに乗って宿泊のホテルに向かいます。

翌朝、一行はガイドのダニエルに
競技が行われるスタジアムを案内してもらいます。

オリンピア・スタディオン、と呼ばれるグラウンドを見て
四三と弥彦は圧巻。
ここを走るのだね、という声も、感動で震えがちです。

四三は、実際に走る姿をイメージして
正装のままジョギングしてトラックの感じをつかみます。

必ずやあのポールに、
日の丸を挙げん決意を新たにする。


外務省に渡航の申請を提出している治五郎ですが、
未だに認可は下りません。
「私はここで! 何をやっているんだ! 団長だぞ!!」


※この物語は史実を基にしたフィクションです※


作:宮藤 官九郎
音楽:大友 良英
題字:横尾 忠則
噺(古今亭志ん生):ビート たけし
──────────
[出演]
中村 勘九郎 (金栗四三)
綾瀬 はるか (池部スヤ)
生田 斗真 (三島弥彦)
永山 絢斗 (野口源三郎)
──────────
森山 未来 (美濃部孝蔵(語り))
神木 隆之介 (五りん)
橋本 愛 (小梅)
峯田 和伸 (清さん)
川栄 李奈 (知恵)
松尾 スズキ (橘家円喬)
──────────
中村 獅童 (金栗実次)
──────────
杉本 哲太 (永井道明)
シャーロット・ケイト・フォックス (大森安仁子)
古舘 寛治 (可児 徳)
竹野内 豊 (大森兵蔵)
大竹 しのぶ (池部幾江)
役所 広司 (嘉納治五郎)
──────────
制作統括:訓覇 圭・清水 拓哉
プロデューサー:家富 未央・大越 大士
演出:大根 仁


◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『いだてん』
第10回「真夏の夜の夢」

デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
BS4K:午前9時〜

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