連続テレビ小説おしん・青春篇(49)〜(54)
16歳という若さで山形を出奔して上京したおしんの記憶を辿って
おばあちゃんのおしんと圭も山形を出発。
上野駅に到着したふたりは、
駅前通りから浅草寺に向かって歩きます。
当時も歩いたであろう道を歩きながら
死んだ姉の紹介で髪結いになろうと
決意したかつての自分の姿を
おしんは思い出していました。
上京したおしんは、地図を頼りに
「髪結 長谷川たか」と掲げられた看板を見て
ようやくたどり着いたと安心します。
しかし、いざ店に入って事情を話せば
もう人手は足りてるから帰れと追い出され、
主人のたかが出先から帰って来て突撃しても
同じことの繰り返しです。
どうやら得体の知れない娘が
以前同じようにやって来て、
ろくも働きもしないのに飯だけ食わせてもらい
挙げ句に店の金を盗んで逃げたっていうことがあったらしく、
店側もやむを得ずやっているという事情はあるものの
諦めきれないおしんは、店の裏手に回り
消えかかっている薪に竹筒で再び燃え上がらせますが、
店の者たちに余計なことはするなと怒られてしまいます。
しかし、後には引けないおしんは、姉の遺言で
髪結いを仕込んでもらいに来たとたかに談判。
「仕事はいちいち人に言われなくたって
自分で先へ先へとやるようでなきゃ務まりゃしないんだよ」
ほらまた火が消えちまうよ、と言うたかに
おしんは喜んで手伝います。
おしんはその言葉通り、率先して働き
待っている間に入れるお茶は美味だと褒められ、
また下駄も磨いてくれるので、なかなか気が利くと評判です。
髪結いの一日はとにかくハードです。
昼飯も、ちょっと代わっている間にバババとかき込む感じで
そのタイミングを失ってしまうと、食べそびれてしまいます。
ただ、飯はたくさん炊いているので、たくさん食べられます。
たかは、行く当てのないものを追い出すわけにもいかないので
おしんをいったんは引き受けることにします。
素性が分からないおしんではありますが、
強い身元引受人があったって店の金を持ち逃げする者もいるわけで、
おしんに素性やら身元引受人やらは不要です。
ただ、出てってくれと言ったらすっぱり諦めろ、と言い置きます。
仕事は教えられなくても見て覚えろ、と言われたので
朝は夜明け前から飯炊き、拭き掃除、鏡磨きをし
昼はもっぱら髪結いをじっくりと見ています。
13歳のおりつは、
おしんが仕事を手伝うのをよくは思っていません。
おしんがいろいろ気がついて仕事をこなせばこなすほど
それまで下働きで働いていた13歳のおりつは仕事をなくし
下働きは2人もいらないので1人あぶれるとしたら
おりつが追い出されてしまう。
それに気づいたおしんは、おりつの立場を考えて
やはりここから出て行くとたかに伝えますが、
たかは、豪快に大笑いします。
下働きなんてヤル気さえあるなら何人でも面倒は見るつもりです。
多少仕事がのろくても、少々手際が悪くっても
それを理由に見捨てるようなことはしません。
おりつは13歳なんだから、時間をかけて仕込めばいいのです。
たかは、下働きは1人でいいから1人追い出すなんていう
了見の狭い女主人ではなかったのです。
「そんなこと言う暇があったら、鏡台でも磨いたらどうなんだい」
捨て台詞のつもりでしたが、実際に磨かれている鏡台を見て
こりゃ一本取られた、と笑うたかでした。
たかの気持ちを聞いて以来、
おしんは遠慮なく働けるようになりました。
そしておりつとは、お店の仕事はおりつ、台所はおしんと分担します。
表に出る仕事をおりつに任せ、おしんは裏方に徹したのです。
それが後から来た者の務めだと、おしんは理解していました。
それ以降、おりつとも関係は良好です。
そしてそんなおしんの気遣いが、
いつしか先輩たちの心をも開かせます。
16歳のおしんが今から下働きで奉公して
お客の髪に触らせてもらえるのが19〜20歳、
それからしばらくは髪を伸ばすだけの仕事が続き、
一人前になったときには、すでに結婚適齢期は過ぎています。
しかも一人前になったからといっても
すぐ給金をもらえるわけではなく、
御礼奉公がしばらく続くので、
そう考えると、今から髪結いの修行をするには遅すぎると言えます。
先輩たちから、これからのおしんの苦労を知っているからこそ
悪いことは言わないからダメだと思ったら
他に行った方がいいとアドバイスを受けますが、
おしんの耳には、どうやら届いていないようです。
出身は小作なので、太陽相手の商売だと
どうしても出来不出来が大きく分かれてしまいますが、
手に技術を持っていれば、天候に関係なく稼ぐことが出来ます。
おしんは、そういう意味でもがんばりたいようです。
着物屋に仕立て直しに出す着物を
おしんが縫い直しすることになり、
急ぎでというたかの注文を受けて
3日夜なべして仕上げます。
それだけではなく、季節の花などを上手く生けるし、
おしんは帳簿を作り、つけにしてもらった食材費を
月末に正しく支払えるように記帳します。
たかは、学校も行かず、しかしお針の手も立つし
花も作法にかなっているし字も書けるし料理もできる
おしんのことを考えると、髪結いでなくても
他に身を立てる方法はいくらでもあると思うのですが、
何年かかっても、
男を頼らずに髪結いで独立できるように頑張っていきたい、と
おしんは言います。
「あんたさえその気だったら、ウチにいてもいいよ」
ようやく、たかに修行を認められます。
おしんは、その嬉しさを故郷の母へ向けて
手紙をしたためます。
東京の路地裏を歩き回って、
おしんが修行した髪結いの店の跡地を探す
おばあちゃんのおしんと圭。
おしんは、玄関先で掃き掃除をしている
若き自分の姿を見たような気がしました。
大晦日、たかは鏡台を1つ増やすことにし
すき手を3年頑張ったお袖に仕上げを任せることにし、
その代わりに髪すきをおしんにさせることにします。
大晦日は髪結いの最も忙しい一日でして、
朝暗いうちから店を開け、
元旦の昼過ぎまで営業を続けるという
食事するヒマがないほどに多忙な一日であります。
最後のお客さんが帰った後は、髪結いの先輩たちが
ぐったり座り込み、ただ眠いだけでしたが、
おしんはそうは言っていられません。
裏方の仕事、雑煮を作る仕事もあるのです。
あとは明日からの通常営業に備えて
元旦の営業を終え、休憩に入ったころ
すき手になったばかりのおけいとお夏が
店を辞めたいと言って来ました。
彼女たちは何年も下働きで奉公を続け、
ようやくすき手に昇格した下積みがあります。
しかし3ヶ月かそこら働いただけのおしんが
いくら手先が器用だからとすき手に昇格してしまっては
二人ともおもしろくないのです。
それを漏れ聞いたおしんは、たかに
二人が抜けることで店に迷惑がかかるのであれば
自分もこの店にいられないから辞めさせてくれと言い、
その代わりに二人に続けてくれるように懇願します。
おしんがかわいがられる分、
それに嫉妬し関係にほころびが出てくる。
和を尊重すれば、おしんの発言は最もなのですが、
力がものを言うという立場のたかは、
他を押しのけるような力がなければ意味がないと
見込んだおしんに呆れてしまいます。
その日以降、たかはおしんに
髪すきの仕事を与えませんでした。
チャンスを失った形のおしんでしたが、
集団の中での厳しさと悟り、覚悟したのです。
おしんがたかの家に奉公に来て2年が経過しました。
おしんは相変わらず下働きで、髪に触ることも許されず
18歳の働き盛りを過ごしていました。
髪を取り巻く風潮で、これまでの日本髪から
ウェーブをかける洋髪が大人気だそうです。
おしんは将来に不安を抱えていた時、
実家のふじから手紙が届きます。
酒田・加賀屋の跡継ぎとなった小夜が
肺炎で亡くなったそうです。
加代も未だに行方知れずで
加賀屋のみなさんはみな落胆している、と。
それを聞いたおしんは、居ても立ってもいられず
たかに借金の相談をします。
小夜はおしんの背中でお育てしたお嬢さまであり
大奥様も若奥様も大変お世話になった御仁……。
どれだけ大切な人か、という説明が終わらないうちに
たかは財布から金を取り出し、おしんの前に差し出します。
これまで不満を言わずに働いてくれた自分の気持ちだ、と。
おしんは、たかの心に感謝をしつつ、酒田へ向かいます。
2年ぶりの酒田です。
みのは落ち着いているように見えますが、
加代のことになると半ば狂ったように
居場所を知らないかと問いつめてきます。
分からないと知ると、
今度はおしんがここに戻って来てくれ、と。
そう泣きつかれても困惑しきりのおしんです。
久々にくにと過ごす酒田の夜、
くにはおしんに、人の幸せは物や金でないと諭します。
大切なのは悔いない生き方をするということ。
もしも加代がそんな生き方をしているのであれば
くには、加代のことを喜んで諦める。
辛い日日を送っていたら、何とか力になってやってほしい。
もし加代と会ったら伝えて欲しいとおしんに頼みます。
おしんが上野駅に戻って来た時、
駅前で男たちが何やら騒いでいるのを耳にします。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
田中 裕子 (おしん)
渡辺 美佐子 (たか)
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泉 ピン子 (ふじ)
小林 千登勢 (みの)
長岡 輝子 (くに)
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伊東 四朗 (作造)
大橋 吾郎 (圭)
乙羽 信子 (おしん)
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制作:岡本 由紀子
演出:竹本 稔
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