連続テレビ小説おしん・試練篇(97)~(102)
東京はもうすっかり春です。
宿泊しているホテルの朝食も、何回目でしょうか。
圭は、ゆうべおしんおばあちゃんが話してくれた内容を思い出し
おしんおばあちゃんの顔をじっと見つめていました。
いったいこの人のどこに、そんなパワーがあったのか、と。
そのまま続けていればかなり儲かったはずの髪結いをさっさと辞め
収入減を一切絶って貧乏暮らしに落とすとは驚きです。
おかげで、本当に金がないことに気づかされた田倉竜三は
小作のせがれに頭を下げ、慌てて生活費を工面してきました。
それからというもの、竜三は人が変わったように
商売に意欲を出し始め、
それまで外国の生地しか扱わなかったのに
一円でも利益を出せるようにスタイルを変えたのです。
おしんの元には、近所の文房具の奥さまから
髪結いはせがわのたかのところでの評判を聞きつけたのか
出髪をしてほしいとの依頼が舞い込みますが、
一件でも受けてしまってはもう断れなくなってしまうと
おしんは申し訳なさそうに断ります。
おしんは源右衛門に、すべては竜三のためだと
納得してもらいます。
竜三が言うには、これからの時代は
生地そのものを卸すより、小学生などの学生服を売るほうが
もうけも出るらしい、という情報を持ち帰ります。
それにいたく賛同したおしんですが、生地を卸すのとはわけが違い、
完成された洋服として販売しなければ意味がないのです。
洋服として販売するためには、縫製の機械(ミシン)を使って
それを扱える職人によって作り出されるわけですが、
設備投資に金を費やすよりも、今の田倉商会をやめて
洋服屋で働いたほうが楽でいい、と竜三は考えます。
これでおしんも源右衛門も養えると鼻息荒いですが、
今まで会社のトップとして働いてきた竜三に
人の下に仕える仕事ができるわけがない、と
おしんも源右衛門も笑います。
路地裏でたたき売られている生地を見て、
おしんはそれを参考に計画を練ります。
竜三はいつも通りに外出し、源右衛門に
銀座でケーキを買ってきてほしいと頼んだおしんは
生地を持ち出して、露店でたたき売り出します。
はじめこそみな素通りでしたが、
そのうちに人が集まりだし、飛ぶように売れていきます。
しかし、なわばりを仕切るテキヤに
無許可で商いをしていたことをとがめられ
おしんはさんざんに殴られます。
なおもかみつくおしんに、親分が出てきました。
親分は子分が血気盛んにおしんに殴りかかるのを止め、
諭すように荷物まとめて帰るように勧めます。
翌朝、テキヤの親分が田倉商会を訪ねます。
おしんが引き上げる際、包み紙に印刷されていた
日本橋・田倉商会の文字を見て、やってきたようです。
昨晩やられてしまってふて寝していたおしんは
その声に呼び寄せられるように起き、表へ出ていきます。
テキヤの親分と聞いて恐れおののいていた竜三は
どうにか挨拶をして帰ってもらおうとしていますが、
親分の用は、昨晩の忘れ物として
売上金が入った巾着袋を届けることでした。
そもそもテキヤは、正式な手続きを踏んで
露天商になった者に販売の場所を提供する代わりに、
場所代をもらうことで商売にしている人たちですが、
もしもおしんのように無許可で販売しだしたら
売る場所などで競争が始まり、たちまち大混乱です。
混乱が起きないようにテキヤが見張っているわけで
それを理由に警察に届け出ているほどです。
「場所代払ったら商売できるかしら」
おしんは親分に食い下がります。
親分は、昨晩のけんかっ早いところを目撃しているので
自分の死んだ妹のように、一肌脱いでみることにします。
露天商の中で体を悪くして休んでいる露天商から
場所を譲り受けたと健から連絡があり、
露天商として商いできるように手配を受けたおしんは
源右衛門とともに荷物を持って売り尽くしに努めます。
おしんおばあちゃんと
神田にある露店の商店街に来た圭は
その後、わずか10日あまりで売り切ったと知らされます。
在庫を一掃したおしんは、商いをする自信につながり
田倉商会の事務所を作業場に変えることで
おしんの洋服屋の事業がスタートします。
ミシンの納入会社、職員の人材派遣、
洋服の型紙を作ってくれる会社、そして事務所の改築と
それぞれにおしんが当たり、話を進めていきます。
竜三は、いつまで夢物語を見ているんだと叱りますが
これまで培ってきた人脈をおしんに紹介するなど
裏ではおしんに協力をしています。
ミシンが納入され、試し縫いをしてみたおしん。
いい感じに仕上がります。
紳士服の店員として再出発をした竜三ですが
お世辞があまりうまくなく、客を次々に逃がします。
それで毎日がっかりして疲れて帰ってくるわけですが、
おしんが縫い上げた試作品を見て驚きます。
試作だからと布の品質を落としていますが
竜三はこの生地でも充分に生きていると表現します。
生地の品質、設備費や人件費を考えれば
おおよそ原価は5円といったところ。
大きさ違い、色違い、デザイン違いをそろえて
10日程度で売り切れば、採算ベースには到達できそうです。
これまではおしんが
洋服に手を出すことに反対していた竜三は
おしんの試作を見て、目を輝かせます。
世界大戦以降、女性の洋装時代が来ていましたが、
子どもたちが洋服を着だしたのは大正11(1922)年ごろ。
おしんはこの子ども服に目をつけ、製作と販売を
田倉商会の新しい仕事にしようとしていました。
ミシンの操作方法を教えてくれた職員が
田倉商会で洋服製作を手伝ってくれる女性を2人紹介し
竜三は竜三で、高めの生地を安く仕入れてきて
おしんに提供してくれます。
さっそく型紙があるものから製作を開始します。
手持無沙汰な源右衛門は、完成した洋服のすそで
まだ縫っていない部分を見つけます。
この部分は手縫いにするかミシンで縫うか聞くつもりだと知ると
「こげんもんできますばい」とたちまち縫ってしまいます。
おしんは久々に髪結いのたかの店に赴きます。
日本髪専門から洋髪に切り替えたたかの店もなかなか繁盛し
たかはおしんの様子をなかなか見に行けませんが、
噂だけは耳に入ってくるようです。
おしんは、子供服専門に鞍替えした田倉商会のチラシを
置かせてもらおうと厚かましくも現れたわけですが、
たかは、竜三と夫婦らしくなってきたことを喜びます。
「おしん、もう大丈夫だね」
大正11年9月1日、子供服専門の田倉商会開業の日。
たかからは花輪が届き、そのたかから話を聞いた染子たちは
開店日に店員の手伝いをしてくれます。
それよりも何よりも、今日のこの日を
竜三と無事に迎えられることが
おしんには幸せでした。
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作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
田中 裕子 (おしん)
並木 史朗 (竜三)
ガッツ 石松 (健)
今福 将雄 (源右衛門)
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渡辺 美佐子 (たか)
大橋 吾郎 (圭)
乙羽 信子 (おしん)
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制作:岡本 由紀子
演出:吉村 文孝
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