連続テレビ小説おしん・青春篇(85)〜(86)/試練篇(87)~(90)
父・作造の、ほんの形ばかりの初七日を済ませると
おしんは故郷を離れる日が近づいてきました。
母・ふじは、旅立つ娘に何もしてやれないといいながら
収穫した大豆を袋いっぱいに入れておしんに持たせます。
おしんのお金で兄・庄治夫婦の家を建てさせたのだから
大豆ぐらいでは文句を言わせるつもりはないのです。
おしんは、送金していたのは父母のためでありまして
今更兄に何かをしてもらうなどとは思っていません。
それよりも心配なのは、ふじのことです。
辛抱たまらなくなったら、東京へと説得します。
おしんは故郷を発ち、東京に帰る前に
酒田の米問屋・加賀屋に立ち寄って
結婚の報告をします。
以前加賀屋に寄った時は
病床に付していたくにも今ではすっかり元気になり、
おしんの嫁入りを喜んでくれます。
加代は、おしんと二人きりになると
夫の愚痴ばかりを連ねます。
夫は加賀屋の財産と結婚したのだと言って
自分には触れてくれないと寂しさをあらわにします。
そしてまだ安田浩太に未練があるようで
浩太が東京のアパートに戻ってきたのなら
知らせてくれればすぐに東京に飛んでいく、と言うのですが
おしんは無表情で、お帰りにはなりませんでした、と伝えます。
加代がそんな浮ついた気持でいるから
夫がおもしろくないのも当たり前です。
夫のことをあれこれ言う前に、まずは
加代が気持ちを改めるべきだとおしんは諭します。
そこに夫が帰ってきました。
芸者の小雪が身ごもったそうです。
飛び出した加代は、追いかけてきたおしんに訴えます。
「こんな目に遭っても、おら辛抱せねばなんねえんだよ」
おしんは加賀屋を後にして東京に帰る汽車の中で
加代の結婚生活を目の当たりにして
自分が田倉竜三との出会いの末に幸せな結婚をしたことを
改めて思い知らされたわけです。
東京に戻ったおしんは、田倉の人間になる、と宣言します。
実家のことは忘れて田倉家に仕えるようにと母に言われたのです。
髪結いの仕事も、支障が出るなら辞めてもいいと考えていますが
それはおしんの気持ちひとつだ、と竜三はおしんに一任します。
おしんは久々に喫茶アテネに向かい、
染子たちに長らくの不在を詫びます。
不在の間、ほかの髪結いに担当してもらったのですが
下手だし代金は高いしで不満だけが募っていたのですが、
髪結いは続けていいという竜三の許可をもらったおしんは
再びここでの出髪をすることにしました。
染子たちは沸き立ちます。
そしてふたりの結婚をお祝いしようと言い出します。
大げさなことは、と固辞するおしんでしたが、
意外にも竜三が、いいじゃないかと賛成してくれます。
おしんはその夜、身も心も竜三の妻になり
一生竜三についていくことが幸せなことだと
おしんは心から信じる気持ちになれたのです。
竜三とおしんは、髪結いのたかの店へ挨拶に出向きます。
おしんをここまで育ててくれた師匠であるので
夫婦そろって結婚の挨拶に行くのが礼儀だというのです。
たかは、ふたりの結婚をとても喜んでくれます。
おしんの出髪が好評であるうわさも耳にしていたそうで
それはそれはよかった、とりつと話していたところなのです。
おしんが洋髪をやりだしたころから
日本髪を結う客は少なくなってきていましたが、
ここ一年でめっきり少なくなり、あれだけたくさんいた先輩も
りつ以外はひとり残らず辞めていっている状態です。
「頼りになる男の人がいるってのが一番幸せなんだから」
お祝いの酒の用意をしながら、たかは寂しそうに笑います。
(青春篇・完)
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竜三とおしんの結婚生活は、やっとで落ち着き始めていました。
出髪は喫茶店の女給たちの何人かに減らし、
おしんはできるだけ家事に専念したのです。
田倉商会のことも手伝いながら、
店のことも覚えようとしていたのです。
田倉商会は、小売への売掛金が入ってきていないなど
決して順風な経営状態ではない中で、
それを知ってか知らずか、竜三は高級な洋菓子を買ってきたり
おしんに真っ赤な振袖を仕立てて贈ったりと金遣いが派手です。
おしんはその点で竜三をたしなめますが、
自分の才覚でここまで田倉商会を大きくしてきたのだから
源右衛門にもおしんにも会社のことには何も口を挟まさせないと
急に不機嫌になります。
染子が発起人と世話係となって、
竜三とおしんの結婚祝いの宴が設けられました。
乾杯の音頭のあと、竜三と一緒にダンスするの、と
女給たちが殺到します。
その代わり、今日で竜三のことは忘れるから、という条件で
おしんは快く竜三を「貸し出し」ます。
日本酒を飲みだしてから、源右衛門が陽気に踊りだし
その姿をみておしんは感慨深くいました。
最初こそ交際に大反対の立場でありながら
今ではおしんを受け入れてくれている源右衛門に
おしんは、源右衛門だけは裏切ることのないように
信頼される夫婦でいたいと決心します。
そこに、田倉商会の社員から情報が舞い込みます。
一番取引があった洋服屋が
明日にも破産宣告するらしいというのです。
それは売掛金が入らないことを意味しておりまして、
おしんはその洋服屋に債権者が押し掛ける前に
納めた布を引き取るように、今日のうちから
運送屋を手配しておくように指示を出します。
翌朝、その洋服屋を訪問したおしんは
売掛金を半年も納めていない以上
帳簿と照らし合わせて商品を引き取ると宣告し
実際に大八車に乗せて持ち帰ってきました。
ちょうど酔いから冷めた竜三は
その話を社員から聞き、おしんに手を上げます。
いくら取引先がつぶれそうだからといって
商品を引き上げてくるような真似はできない、と。
しかし、仮に取引先が健全であっても
商品引き上げでつぶれることもあると言われ
おしんは、納得できないまま
再び商品を納めることにしますが、
実際その洋服屋はうわさ通り破産宣告をし大混乱。
他の生地屋は、商品を引き上げてきたことで
先見の明がある、と持ち上げられます。
竜三は、この結末に相当堪えます。
挫折を知らない竜三が
この危機を乗り越えられるかどうか。
結婚早々、おしんが迎えた試練でした。
不景気が影響して、各方面からの代金請求が続いております。
源右衛門は一軒一軒丁寧に、納金の先延ばしを打診しますが
それではウチが持たない、と食い下がってきます。
田倉商会の経営状態は火の車で、
竜三は社員たちに暇を出し、辞めてもらいました。
代金回収もうまくいかなかったため、
しょんぼりしています。
そこに、たかの店からりつがやってきて
久々に日本髪の客が大勢やってきているものの
たかとりつではお店が回らないので、
おしんに手伝いに来てほしい、と依頼が来ます。
行ってやればよか、と竜三は言ってくれて
おしんは喜んでたかの店に向かいます。
手伝いをする、と名乗りを上げると
たかは黙ってうなずきます。
数日通い、なんとかやりくりすることができました。
たかはその分の手当てをおしんに渡します。
一度は断るおしんでしたが、結局はいただくことにします。
少額でも、のどから手が出るほど欲しい50円でした。
この金で滞っている支払いをしてほしいと
源右衛門に手渡すおしんですが、
竜三にしてみれば、会社の金のことを
たとえ妻でも心配してほしくはないわけです。
そこに多少のイラつきを覚えながら、
首が回らない現状ではどうしようもなく
結局はおしんの言うとおりにしかならない竜三です。
大正11(1922)年が明け、おしんは22歳になりました。
おしんはたかに頭を下げ、雇ってほしいと願い出ます。
せめておしんが家族が食べていく分を稼がないと
田倉はやっていけない状況なのです。
最初は断っていたたかですが、
おしんが来てくれるなら日本髪と洋髪をさせてもらい
これからの世を渡っていくしかないわけです。
竜三は、働くことには寛容ですが
その理由が金のためであるならば大反対です。
とはいえ、おしんがここでぼんやりしていたら
田倉は店をたたまなければならなくなってしまいます。
そうなれば佐賀に帰ることになりますが、
ふたりの結婚に反対していたあの義母・清のもとに帰るのは
さすがのおしんも不安が残るわけです。
おしんが働きに出るのは自分のためではなく
もちろんお店のためでもなく、夫婦のためだったのです。
しかしこのことが、のちに夫婦に影を落とすことになるとは
おしんもまだ知りませんでした。
<hr />
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
田中 裕子 (おしん)
泉 ピン子 (ふじ)
東 てる美 (加代)
並木 史朗 (竜三)
今福 将雄 (源右衛門)
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小林 千登勢 (みの)
渡辺 美佐子 (たか)
長岡 輝子 (くに)
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制作:岡本 由紀子
演出:小林 平八郎
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