連続テレビ小説おしん・試練篇(103)~(108)
大正11(1922)年9月1日、
田倉商会は子供服専門の店として新装開店し再出発。
和服だった子供服も活動的な洋服が普及し始め、
おしんがそれに目をつけての商売替えでした。
おしんが開いたお店ということもあり、
田倉竜三は会社を休んでまで裏方に徹し
世話になったからと喫茶アテネから染子たちが手伝いに来て
源右衛門は店の近くの通りでチラシ配りに精を出します。
賑わった割には上着が2着とスカートが1枚売れただけで
完売には程遠い販売量ですが、おしんには手ごたえを感じていました。
おしんは竜三の寝顔を見ながらつぶやきます。
「あなた……好き。大好き」
新しく立ち上げた子供服のお店ですが、
10日経っても全く売れませんでした。
おしんは半ば諦めかけていました。
しかしこれがきっかけで竜三とともに仕事ができ
夫婦仲が取り戻せるのなら無駄ではなかったと
おしんは考えていました。
そこに、大野屋という会社から仕入れ担当が二人やってきました。
子供服から家具雑貨に至るまで扱っているお店らしいのですが
子供服の需要が高まる中、それに答えられるだけの低価格な商品を
探し回っていたとのことで、
おしんが売る子供服は、活動的で着やすくて、愛らしくて仕立てが丁寧
しかも子供服となれば消耗も激しいのですが低価格であるという、
大野屋のお眼鏡にかなった商品なのです。
つまり、大野屋で商品を販売できないかという商談です。
おしんはとまどいながら、竜三に相談するまでは
結論を先延ばししようと考えていますが、
大野屋に話が行ったのは、竜三の仲介があったかららしく
それであれば大野屋は竜三と直接話をする、ということで決着。
おしんとしては、自ら製作した洋服を
自分の手で一枚一枚販売したかったという気持ちがあるのですが
竜三は、出来のすばらしい商品を眠らせておくのはもったいないし
売れればおしんとしても自信が出てくるだろう、と考えてのことです。
竜三は、知り合いの縫い子さんを4人追加で手配をし
さらにミシンを3台追加納入します。
これまではおしんに縫い子さん2人の計3人で回していたものを
これからは縫い子さん2人に新人4人の計6人で回すわけです。
出産近いおしんにも、休養を与えたい竜三の気持ちなのです。
とはいえ、おしんは新しい服のデザインを考えたりと忙しさは変わりません。
おしんの頭の中には、メーカーである田倉商会よりも
販売代理店である大野屋のほうが儲けが2倍以上あるというのが
なかなか納得できないことではあるのですが。
そうこうしているうちに、注文が殺到するようになり
作業場を拡大し、ミシンをさらに5台入れて対応に追われています。
竜三は、新たに中学校の制服の縫製を受注してきまして
これまでの受注でさえあっぷあっぷしているのに
これ以上受けてしまえばもうパンクするとおしんは訴えますが、
夜間眠っているみしんを稼働させれば
それでいいじゃないか、と竜三はいいます。
これまで残響なしを第一に掲げてきた田倉商会ですが
ここでその理論が破綻してしまいます。
従業員が体調不良で倒れて、その穴埋めにおしんが入っている
そんな現状も知らずに竜三が事業拡大だけを見ているものですから
一度は同じ方向を見つめていた夫婦でしたが、徐々に
方角が違って、夫婦もすれ違いが起きだします。
日頃は言いたくても飲み込む源右衛門ですが、
今回はさすがに竜三に説教します。
もうけた金で佐賀の母に物を買ってやる前に
田倉商会に功績があったおしんに買ってやるべきだし、
佐賀の母というなら、おしんの山形の母にも何か買うべきだし
自分中心で物事を考えるのは竜三の悪い癖だとし、
土台がしっかりする前に、建物を高く高く建て増ししたところで
土台が揺るげば簡単に崩れ落ちてしまう、と源右衛門は訴えます。
今は新規事業を受けることよりも、これまでの事業を
確かなものにするために着実に儲けを出していくことである、と。
竜三は源右衛門の諫言を聞き入れ、中学校制服の縫合を断ります。
そして、これで好きなものを買え、と金を手渡すのですが
その気持ちがうれしかったおしんは、この金で佐賀のお母さんに
何か買ってあげましょうね、と言い、竜三を喜ばせます。
山形から、おしんの母・ふじが上京してきました。
父・作蔵の死でおしんが山形に帰省してから
2年ぶりの再会でした。
ふじにとっては初めての状況で、竜三とも初対面です。
ふじが自分から上京してきたわけではなく
竜三が、初めてのお産に立ち向かう心細いおしんを力づけようと
他人よりも身内であるふじを呼んだというのと、
おしんの暮らしぶりをふじに見せたかったというのがあります。
竜三に旅費を工面してもらって、それでふじは庄治にも
大きな顔をして山形を発つことができたのですが、
上野駅の改札口で待っています、と手紙にあったものの、
お互いに顔を見たことがなかったため、
お母さん
よく来てくださいました
私が田倉竜三です
その紙を掲げて立って待っていてくれました。
そんな竜三のやさしさに感動したふじは
その紙きれは一生の宝物です。
奥の片付けも終わり、建物内を案内して
おしんとふじには竜三が高級料理でもてなしてくれます。
おしんの前途は洋々に感じていました。
おしんおばあちゃんは圭と東京の遊覧船に乗っています。
おしんとふじも、東京見物を行っていますが、
親子で行った見物旅もあの時が最初で最後でした。
田倉家とふじは、無事に大正12(1923)年の初春を迎えます。
体調不良の従業員の代わりに、ミシン台に座るおしん。
源右衛門はふじに、何とか止めてほしいと懇願しますが、
さすがはおしんの母親、ふじは全く動じません。
「構わないでけらっしゃい。つらかったらやめるから」
何度か襲ってくる陣痛に耐えながら、
おしんはミシン板を踏んでいました。
誰かが休むとおしんが穴埋めに入って、指定の期日までに
しっかりと仕上げるというのが信用につながるのです。
とはいえ、ついにおしんは産気づきます。
やはりぎりぎりまで耐えてきたせいか
産婆さんが到着する前に、出産しました。
母親になれて、おしんは幸せの絶頂期にいました。
しかしこの幸せを崩すようなことがあろうとは
夢にも思っていない、おしんでした。
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作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
田中 裕子 (おしん)
泉 ピン子 (ふじ)
並木 史朗 (竜三)
今福 将雄 (源右衛門)
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大橋 吾郎 (圭)
乙羽 信子 (おしん)
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制作:岡本 由紀子
演出:竹本 稔
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