連続テレビ小説おしん・再起篇(238)~(243)
昭和26(1951)年、
長男・雄の戦友であった川村が不慮の死を遂げ、
生前、川村に譲ってもらった土地は、いずれ
おしんや仁の新天地への足掛かりとなります。
4年の歳月が過ぎ、昭和30(1955)年。
おしんの跡を継いだ仁を中心に盛り立てていっていますが、
川村が譲ってくれた駅前一等地の土地に出店したいと
仁には野望がありました。
おしんは、わざわざ店の規模を広げて失敗するよりは
今のままでいいと思っていますが、
せっかく好景気に沸いているのに
手を広げないとはもったいない、というのです。
雄の命日に久々に帰ってきた希望は、
師匠のところに弟子入りをして5年が経ちましたが
今のところ引導を渡されてはいないので
案外筋がいいのかもしれません。
末の妹・禎は名古屋の女子大に進学して家を出て
入れ替わりに奉公として百合が田倉家にやってきました。
母親が亡くなって父親が再婚したために邪魔者扱いされて
家を出て奉公に上がってきた娘です。
けなげな百合を見ていると、おしんも初子も
自分が奉公に上がったばかりの頃を思い出し
かわいがっています。
大学を卒業していない仁は、少し焦っているのか
東京に勉強にいくと言い出します。
仁をおだてる希望や初子に
おしんは苦言を言い、一方で
仁を心配がる希望には
心配いらないよ、というおしん。
そして初子は、仁が東京へ出発する日の夜中、
仁が百合の部屋に入っていくのを目撃します。
まさに家政婦は見た! 状態ですが、
田倉家も新しい問題を抱え始めていたわけです。
東京へ出て行った仁は、
喫茶店で道子と待ち合わせしています。
道子の父親は衣料問屋に奉公し、一台で衣料品会社を立ち上げたらしく
似たような境遇の田倉商店については調査済みで
仁にもほれ込み、道子との結婚にも前向きなのです。
ただ仁は単に東京に道子を訪ねてきた
というわけではなさそうで、道子の父親から、仁に
「セミナーを受けさせろ」と言われているようなのです。
初子は百合のことをべた褒めしたうえで、
おしんに、仁と百合とのただならぬ関係について
こっそりと耳打ちします。
仁と百合ならお似合いだわ、と考えている初子に対し、
話を聞かされたおしんは、
初子が考える以上にショックだったのです。
ここは百合としっかり話をしておかなければ、と
めくじらを立てるおしんに、初子は
さも残念そうにつぶやきます。
「母さん変わった」
雄と初子の交際を夫・竜三に大反対された時も
おしんはふたりを認めてかばってくれました。
自分が竜三と結婚することを佐賀の清に報告しに行くと、
大反対され、いやがらせされ、悔しい思いをしました。
「人間って勝手なもんだね」
初子に言われて、ようやく気付いたおしんです。
東京で、仙造夫婦と道子と会う仁ですが、
名古屋から出てきた母親の言い分は、
そろそろしかるべき人を立てて
話を進めていきたい、ということでした。
おしんは、仕入れの帰り道に
衣料品店でバーゲンセールをやっていたらしく
初子と百合にブラウスを一着ずつ買ってきてあげます。
おしんは、百合という一人の女を、
息子の嫁として改めて評価していました。
しかし同時に、仁本人は、別の女性との縁談話を進めていたのです。
5日ほどして仁が帰宅します。
「母さん、大事な話があるんだ」
これからの店の経営方針について話しておきたいという仁に
おしんの目は実に冷ややかです。
時代は流通革命で、セルフサービス方式が主体になっていく。
機械化すれば人件費が浮く。
取扱点数が増えてもうけもけた違いに増えていく。
いいことづくめです。
しかしおしんにはおしんの言い分があります。
これまでたくさんの商売をしてきて、
関東大震災や戦争などで泣く泣く事業をつぶし
それでも復活してどうにかここまでやってきた。
その集大成がこの田倉商店であり、
接客をしてものを売り、御用聞きもし、
そのスタイルは変えるつもりはないのです。
おしんが目指したやり方で、業績が伸びているから満足なのです。
しょせんはこの店、おふくろのものなんだよな、と
仁はぽつりとこぼし、寝てしまいます。
おしんは、これ以上仁と話し合いをしても
自分がセルフサービスを知らなければ
話し合いにならないと、京都で行われるセミナーに
行ってみることにしました。
そしてセミナーから戻ってくると、
もぬけの殻の状態のおしんです。
対面販売がああも忙しければ、
時代はセルフサービスかもしれないと考え直したのです。
しかし機械化と言っても、それだけの資金がありません。
仁はそこで、驚くことを言い出します。
「俺の嫁さんになってくれる人のお父さんが出資してくれるって」
思わず、初子と目を合わせるおしんです。
「じゃあ百合のことはどう責任を取るんだい」
おしんは、仁が道子という女性がありながら
一時の迷いで百合と関係を持ってしまったことを責めます。
そんな中途半端な気持ちは、絶対に許してはなりません。
百合というひとりの女性を傷つけてしまった男の母親として
おしんは百合が気が済むようにしてあげたいと考えていますが
なかなか百合の本心を引き出せずに苦労しています。
「今日限り、お暇を頂戴いたします」
仁はなんて情けない男になってしまったのかね、と
おしんはため息まじりです。
自分たちふたりでうまく話をまとめようと思ったのに
おふくろや初っちゃんが入ってきたら
たちまちごちゃごちゃになってしまう…。
そうつぶやく仁に、おしんは平手打ちです。
翌朝早くに田倉商店を出て行った百合が向かった先は、
希望が弟子入りしている窯元です。
焼きあがった壺を運んでいる希望が
百合を見つけてくれました。
百合がおしんや初子に相談せず、
黙って家を出てきたことを知った希望は
理由を詮索せず、奉公場所を探してほしいという
百合の願い通りに動くことにしました。
東京から伊勢に戻って何の連絡もないことに
不信感を抱いた道子。
仙造は「田倉君は本気で道子と結婚するつもりがあるのか」と言い出し
今度の日曜日におしんに会いに来ることにします。
ひとりで慌てふためく仁ですが、
らちが明かなければ慰謝料を請求する
とまで言われたら、腹をくくって言うしかありません。
帰宅した仁を待っていたのは、おしんと初子、それと希望でした。
希望を頼って行ったのか、よかったな母さん、とか
母さんが口うるさいと我慢しきれないんだよ若い子は、と
あくまで理由を他人になすりつけようとするところが憎いですが、
希望がいる窯元はとかく弟子が多く、
師匠の奥様が、料理の作り手を一人増やそうかと
考えていたところだったそうなので、ちょうどそこに百合が入ることになりました。
「今度の日曜日会いに来るんだって。会ってみてよ」
道子のお父さん面白い人だから、と何の責任も感じない仁に
おしんはあきれてものも言えません。
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
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[出演]
乙羽 信子 (おしん)
田中 好子 (初子)
山下 真司 (仁)
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田中 美佐子 (道子)
長門 裕之 (仙造)
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制作:岡本 由紀子
演出:吉村 文孝
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