連続テレビ小説おしん・完結篇(268)~(273)
【完結編】
セルフサービスの店が1周年の記念セールを迎えた
昭和32(1957)年の春から、いつか10年の歳月が流れていました。
おしんもすでに67歳となり、田倉家もさまざまに変貌しつつ、
昭和42(1967)年の春が巡ってきていました。
オープンしたてのころは、無休でがむしゃらに働いたものですが
今は従業員の方が強くなり、定休日を設けて
ゆっくり休ませる時代に変わりつつありました。
田倉の人間だけで集まって、
老体のおしんを慰めようという会合を開くことにしたのですが、
初子は今まで通り、おしんとともに田倉家を、スーパーたのくらを盛り立てている重要人物のひとりです。
仁はすっかり副社長らしい風貌に変わり、落ち着いてはいますが、
相変わらずマイペースで自己中心的な道子は「私行くのやめるわ」と言い出すし
長男の剛にいたっては、友だちの家に遊びに行きたいなどと言い出す始末。
妹のあかねとみどりもまだまだ世話が焼ける年代です。
そして焼き物の道を歩き続ける希望も、長男の圭を連れて田倉へ。
百合はお留守番です。
年月は経ても、百合は変わらず田倉家の敷居をまたいでいないのでしょうか。
田倉商店から独立して崎田食料品店を営む辰則と禎は
結婚したころの初々しさは消え、
ちょっぴりせかせかした感じの夫婦に。
それを子どもたちの弘と始が見て呆れています。
田倉家に続々と親族が集まりだしますが、
仁は、希望と圭が到着する前に話しておきたいことがある、と
先に乾杯を済ませてしまいます。
「いよいよチェーン店を出すことにしたからね」
開店当初の借金もこの春にようやく完済し
駅前の土地も残っているので2号店を出したい、という仁の夢なのですが
慎重なおしんは、なかなか首を縦には振りません。
そんな重苦しい空気を切り裂いたのは、
今、こちらに向かっているはずの希望が出品した作品が
なんとかという展覧会で特選に選ばれたという吉報を、
百合が電話で知らせてきた時でした。
おしんは仁に、チェーン店を出したいならいいよ、と心変わりです。
その代わり、条件があるそうです。
「もし希望が独立したいと言い出したら、母さん窯を持たせてやりたい。
これには誰も文句は言わないこと」
おしんはついに、希望の実家である
加賀屋を再興させてやれませんでした。
寂しいながらもひとりろくろを回し続け、
それに寄り添ってきた百合ともども不憫でならなかったのです。
おしんはさっそく、師匠の栄造のところに出向き、
これまでの教育のお礼を申し述べるとともに、
希望を独立させてやりたい気持ちをぶつけます。
希望を独り立ちさせてやらなければならない責務と、
おしん自身が67歳となり、わが身に何かがあった時
頼れる人間は誰もいなくなってしまうという事情をくんで
そういうことでしたら、と栄造は力になってくれます。
仁は、人に貸している一等地に2号店を立てたいのですが、
そこは社長・おしんの古くからの知り合いがいるらしく
仁は立ち退き料として銀行から大金を借り、
他店が出店する前に抑えておきたい心づもりです。
辰則は、社長とよくよく相談なさったほうが、と遠慮がちに言いますが
こうと決めた時の仁は、聞く耳を持ちません。
「今度こそ引退してもらう。
いつまでも田倉を牛耳られたんじゃおしまいなんだよ」
希望のところから帰ってきたおしんに、
仁は思い切って引退を勧告します。
しかしその言葉が、おしんをがっかりさせ
その日から店に出るのをやめてしまいます。
その時、事務所に包丁振り回している女が乱入したとかで
社長であるおしんが対応してみると、
住んでいる土地から立ち退けという文書を見せられます。
女は警察によって確保されました。
その文書は、名前こそ田倉しんになっていますが
仁が代わりに発行したに違いありません。
おしんは仁をにらみつけ、ほほを殴ります。
竜三と商売を始めたころ、いろいろと助けてもらった恩人で、
事業に失敗し、地道にやりなおすということで
形ばかりに土地を担保に入れ、おしんが金を用立てたのです。
女からすれば、今さら立ち退けというのも無理ない話なのです。
おしんは、初子のために残しておいた株券を持って
並木家の浩太のところに出向き、
希望の独立資金として株券を譲渡し、
資金を援助してほしいと願い出ます。
浩太は、加代の子どもであればまんざら無関係というわけでもない、と
その申し出を受け、なんとかしてくれることになりました。
やがて、2号店・3号店の建設が始まり、
希望の窯と住まいの工事も進められることになりました。
おしんが今まで得てきたすべてのものを投じての、
新しい賭けでもありました。
2号店・3号店が相次いでオープンし、
スーパーたのくらはその底力が評価されて
初日から客が集まる大盛況です。
希望の家も完成し、おしんと初子で見に行きます。
百合はとても喜んでいて、何度もおしんに頭を下げています。
夕ご飯までちょうだいし、おしんと初子は満足げに家路につきますが、
仁が血相を変えて走ってきました。
「百合が…交通事故で…」
おしんと初子が駆けつけた時には、
百合はすでに亡くなっていました。
新居の台所の電球が切れているからと、
買いに向かった時に事故に遭ったのです。
夜遅いため、翌日お通夜、翌々日告別式となりますが、
おしんは、仁と道子が参列するのを猛烈に拒みます。
「仁、お前、百合の前に出られた義理か!」
作:橋田 壽賀子
音楽:坂田 晃一
語り手:奈良岡 朋子
──────────
[出演]
乙羽 信子 (おしん)
高橋 悦史 (仁)
浅芽 陽子 (道子)
野村 万之丞 (希望)
──────────
大友 柳太朗 (栄造)
渡瀬 恒彦 (浩太)
──────────
制作:岡本 由紀子
演出:吉村 文孝
| 固定リンク
「NHK朝ドラ1983・おしん」カテゴリの記事
- 連続テレビ小説おしん・アナザーストーリーズ『運命の分岐点』(後編)(2019.12.27)
- 連続テレビ小説おしん・アナザーストーリーズ『運命の分岐点』(前編)(2019.12.24)
- 連続テレビ小説おしん・完結篇(292)~(297) [終](2019.12.20)
- 連続テレビ小説おしん・完結篇(286)~(291)(2019.12.13)
- 連続テレビ小説おしん・完結篇(280)~(285)(2019.12.06)
コメント