おしんと仁が「スーパーたのくら」1号店を開いてから30年、
小規模ながらも各地に16店舗を有し、昭和58(1983)年の春には
百貨店並みの17店舗目をオープンすることができました。
しかし、同じ町に大手スーパーが進出し、
たのくらの客足はたちまち落ち始めます。
今まで築き上げてきたものすべてをつぎ込んできただけにたのくらの打撃は大きく、
昭和59(1984)年の新春も、田倉家には暗いものでした。
このままでは、今月末の約束手形分さえも支払えず
いつ不渡りを出してもおかしくない状況に陥っています。
ここは借入金を整理して、17号店と自宅を売り飛ばしてでも
1店舗でも2店舗でも残るようにしなければ生き残れません。
「今の世の中は、お金を持っている人だけが金儲けできるんだから」
丸裸になる覚悟が必要かもしれないというときですが、
何度も店を立ち上げ、何度もつぶしてきたおしんにとっては
ふふふっ、と笑う余裕さえ感じられます。
亡き夫・竜三が夢見た店も出すことができたし、
雄の恋人だった初子にも店を持たせることができました。
たのくらの全盛期を見ることができて、
おしんにはもはや、心残りはありません。
道子の求めに応じて、仁は道子と離婚することになりました。
道子のつらそうな顔を見るのもいやだし、
仁ひとりのほうがかえって動きやすいということもあります。
そして何よりも、支払えるうちに慰謝料を支払って
道子やあかね、みどりが苦労せずにすむようにしてあげたいという気持ちも大きいのです。
旅行から帰ってきてからというもの、
道子やあかね、みどりと会話することがなくなっていたおしんは、
仁と道子が離婚することを圭から初めて聞かされます。
丸裸にならなければならない今こそ、家族の絆が大切ではないのか、と
おしんは仁を諭します。
「贅沢な暮らしをしているときは家族はあってもなくてもいい、
これからが家族にとって大事な時なんだよ」
這いつくばってでも道子を引き留めろ、と
おしんは仁を見据えます。
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