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2019年12月20日 (金)

連続テレビ小説おしん・完結篇(292)~(297) [終]

おしんと仁が「スーパーたのくら」1号店を開いてから30年、
小規模ながらも各地に16店舗を有し、昭和58(1983)年の春には
百貨店並みの17店舗目をオープンすることができました。

しかし、同じ町に大手スーパーが進出し、
たのくらの客足はたちまち落ち始めます。
今まで築き上げてきたものすべてをつぎ込んできただけにたのくらの打撃は大きく、
昭和59(1984)年の新春も、田倉家には暗いものでした。

このままでは、今月末の約束手形分さえも支払えず
いつ不渡りを出してもおかしくない状況に陥っています。
ここは借入金を整理して、17号店と自宅を売り飛ばしてでも
1店舗でも2店舗でも残るようにしなければ生き残れません。

「今の世の中は、お金を持っている人だけが金儲けできるんだから」
丸裸になる覚悟が必要かもしれないというときですが、
何度も店を立ち上げ、何度もつぶしてきたおしんにとっては
ふふふっ、と笑う余裕さえ感じられます。

亡き夫・竜三が夢見た店も出すことができたし、
雄の恋人だった初子にも店を持たせることができました。
たのくらの全盛期を見ることができて、
おしんにはもはや、心残りはありません。

 

道子の求めに応じて、仁は道子と離婚することになりました。
道子のつらそうな顔を見るのもいやだし、
仁ひとりのほうがかえって動きやすいということもあります。
そして何よりも、支払えるうちに慰謝料を支払って
道子やあかね、みどりが苦労せずにすむようにしてあげたいという気持ちも大きいのです。

旅行から帰ってきてからというもの、
道子やあかね、みどりと会話することがなくなっていたおしんは、
仁と道子が離婚することを圭から初めて聞かされます。

丸裸にならなければならない今こそ、家族の絆が大切ではないのか、と
おしんは仁を諭します。
「贅沢な暮らしをしているときは家族はあってもなくてもいい、
これからが家族にとって大事な時なんだよ」

這いつくばってでも道子を引き留めろ、と
おしんは仁を見据えます。

 

田倉本家の事情を聞いた希望と初子は、道子の元にかけつけます。
突然の来訪に驚きつつ、道子の思いは変わりません。
「このまま一緒にいてもみじめな思いをするだけですし、
お互いを傷つけあうことにもなりますから」

希望と初子は、それぞれが所有する家や店の権利書を差し出し
借金返済の足しに、と言います。
田倉家のおかげで店を出したり窯元を立ち上げたりすることができたわけで
それぐらいはさせてほしい、というわけです。

それに、おしんがこの家にいたいという考えに甘えて
長い間、おしんのお世話を道子に押し付けてきたからこそ
その負担で離婚するというのは耐えられないわけです。
離婚だけは、なんとか踏みとどまってほしい。

今じゃすべてが遅すぎるんです、と道子は寂しげに笑います。
会社を動かす夫と、夫が頼る母とのはざまで
自分は単なるハウスキーパーだった、と。
「とにかく、おふたりにはお世話になりました。この話は二度ともう…」

 

田倉に意外な展開が待ち受けていました。
あかねとみどりが話し合った結果、仁の元で暮らすというのです。
慌てふためく道子ですが、困っている時だからこそ
父親を支えて助けてあげたい、という気持ちになったようです。

そんなとき、仁とおしんが帰宅しました。
「道子、話がある。茶を入れてくれないか」
おしんは、あかねとみどりの背中を押して
リビングに仁と道子のふたりきりにしてあげます。

仁が道子の求めに応じて離婚に踏み切ったのは、事業に失敗した男に
これ以降の苦楽を共にする甲斐性も、資格もないと思ったからです。
道子が別れたいという気持ちも理解できたからです。
情けない男だ、ということぐらいは自分でもわかっているつもりです。

そのうえで、仁はあえて道子に頭を下げます。
「頼む! もう一度おれと、出直してくれ」

今まで仁に背中を向けていた道子が、初めて仁と向き合います。
女は馬鹿だから、子育てが終わると自分の役目も終わったような気がして
不安になってつい、離婚を口にしてしまった、と。
だからこそ、離婚に反対してほしかったわけです。

翌朝、おしんのへやに道子がやってきました。
妻として仁についていく決心がついたようです。
「もうご心配はおかけしませんから」その言葉に
にっこりとほほ笑んでうなずくおしんです。

 

「今月の末で、たのくらを整理することにしました」
腹をくくった仁の言葉をだまってきくおしんや家族たちです。
当分は仮住まいということになりますが、仁は
おしんのことは希望か初子のところに、と勧めます。

おしんは、初子のところに身を寄せることになりました。
昔なじみの客もいまだに来店するし、
誰も知った人がいない希望の窯元よりは、おしんの気もまぎれるだろう、という配慮です。

そして浩太も、おしんの身を案じて連絡が入りますが、
月末でたのくらを整理する、とすがすがしい顔で言われると
あの時、土地を売却しなければ、という痛みが
浩太の心をえぐるのです。

 

おしんが浩太のところに行っている間、
おしんの身に何かがあったのではないだろうか、と
道子や孫娘たちは食事ものどを通らずに心配してくれていました。
こんな風に心配してくれたのは、初めてのことでした。

家族らしいふれあいを見せてくれる道子や孫娘たちに
おしんは安らぎを感じながらも、
別れて暮らす日が刻一刻と近づいてきていました。

 

1月末、手ごろな借家が見つかり
田倉家はあわただしく引っ越し作業に入ります。

そして夜、家族が全員集まって食事会が開かれます。
最後の晩餐ではありません。
田倉家、新しい門出のお祝いです。

そんなとき、浩太が田倉家までやってきました。
並木の大旦那がよくうちの敷居を跨げたものだ、と仁は怒りますが、
折り入って話がある、という浩太に
どんな内容のことなのか、おしんは不安な気持ちになります。

 

「17号店の店舗を肩代わりしてくれるという話があります」
浩太は仁に、穏やかに切り出します。
進出してきた大手スーパーが
いまの店舗の姉妹店として利用価値がある、と判断したようです。

いまのスーパーたのくらの足を引っ張っているのは
まちがいなく17号店なのですが、
その処理さえうまくいけば、スーパーたのくらの借金はほぼ消えてしまいます。
意外な申し出に、先ほどまで文句を言っていた仁も、黙ってしまいます。

17号店に費やした費用の半分ででも買い手がつけば、
あとの16店舗でなんとか切り抜けられると踏んだのですが、
たのくらが持て余している物件を買い取る企業なんてどこにもなく、
半ばあきらめかけていたところなのです。

仁さえよければさっそくに交渉に当たらせる、
私にお任せください、という浩太に、
仁は土下座してお礼を言います。
「ありがとうございます!」

 

浩太の尽力で、17号店は大手スーパーに買い取られることになり
3月のはじめにはすべての取引が終わり
スーパーたのくらは今までの16店舗で経営を立て直すことになりました。

おしんと仁、希望と圭、初子と禎で、
加賀屋の加代の墓前に報告に行きます。

 

おしんと浩太は、伊勢の海岸を歩きます。

浩太は、もしおしんと一緒になっていたら
もっと違う人生になっていた、とつぶやきますが、
おしんは今でも、これでよかったのだ、と思っています。
別々に生きてきたからこそ、いつまでもいいお友だちでいられたのです。

「同じ思い出を温め合えるのは、浩太さんだけになってしまいました」
「本当に誰もいなくなってしまいましたね」

ふと、犬の鳴き声にふたりがふり返ると、
犬の散歩をしている女性が立っていました。
お散歩でいらっしゃいますか、という言葉に、微笑みを返すふたりです。
「お幸せそうですね。どうぞいつまでも、お元気で」

 

──完──

 

作:橋田 壽賀子

音楽:坂田 晃一

語り手:奈良岡 朋子

考証:小木 新造
演奏:新室内楽協会
──────────
[出演]

乙羽 信子 (おしん)

高橋 悦史 (仁)

浅芽 陽子 (道子)

野村 万之丞 (希望)

佐々木 愛 (初子)

吉野 由樹子 (禎)
桐原 史雄 (辰則)

宮本 宗明 (剛)
鈴木 美江 (あかね)
川上 麻衣子 (みどり)

鳳プロ
劇団ひまわり
劇団いろは

大橋 吾郎 (圭)

渡瀬 恒彦 (浩太)
──────────
制作:岡本 由紀子

美術:田坂 光善
技術:白石 健二
効果:水野 春久

照明:増田 栄治
カメラ:沖中 正悦
音声:近藤 直光
記録:佐伯 和枝

演出:江口 浩之

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