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2019年12月15日 (日)

大河ドラマいだてん 東京オリムピック噺・(47)時間よ止まれ[終] ~雲一つない青空! 1964年大会開幕! 五輪物語が今夜完結~

1964(昭和39)年10月10日。

まーちゃんこと田畑政治は、
観客入場前の国立競技場にひとり立ち、
これまでの思いに浸っています。

前日までは、東京地方は雨と予報されていましたが、
みんなの希望がかなったのか、
雨も上がってうそのような晴れです。

「ばっ!」
そこに現れたのは、金栗四三です。
眠れなくて。おるもです! と言い合い、
照れ隠しに笑います。

大雨の予報で中止と決め込んでいた
航空自衛隊入間基地のブルーインパルス隊員たちは、
窓から差し込む朝日に、本番に向けて気合の入れ直し。

四三は、ベルリンから届けられた嘉納治五郎からのエアメールをまーちゃんに渡します。
『ついに念願は叶った。昭和15年、東京でオリンピックを開催する運びとなった──』
「田畑! 持って帰るぞオリンピックを。東京に!」
治五郎の興奮した声が、まーちゃんの脳裏にこだまします。

『君は今、熊本で切磋琢磨の日々だろうが、
是非とも上京して力を貸してくれ。
開会式の聖火ランナーを君に頼みたい』
まーちゃんは、へえー、と短い返事です。

しかし四三は、治五郎とのその約束だけをただひたすらに信じて
高齢になった今でも、いつでもその依頼を受けてもいいように
準備を怠りなく進めていたのですが、
結果的には四三は聖火ランナーには選ばれませんでした。

 

開会式まで、あと5時間。

そのころ、東 龍太郎東京都知事は羽田にいました。
不参加が決定したインドネシア選手団を、
空港まで見送りに来たのです。
最終的には東京オリンピック参加は94ヶ国、それでも過去最多です。

「これは記録映画ではない。ドキュメンタリーでもない。
劇映画だと思ってください」
映画制作を担当する市川 崑 監督は、
絵コンテを見せながら、撮影スタッフに指示を出します。

岩田幸彰は、開会式のスピーチを日本語でしたいという
IOCのブランテージ会長につきっきりです。
机の上には、治五郎の遺品でまーちゃんが譲り受けた懐中時計があります。
動いているということは、治五郎はまだ生きている証拠なのかもしれません。

聖火ランナー最終走者の坂井義則は、人目を避けるために
国立競技場の目の前にある水明亭の中でスタンバイ。
まーちゃんの元を離れた四三は、どぎゃんね? と様子をうかがいます。

 

午前10時、いよいよ開場。

『世界中の秋晴れを全部東京にもってきてしまったような、
すばらしい秋日和でございます。何か素晴らしいことが
始まりそうな、予感に満ち満ちました国立競技場であります。』
NHKの中継放送も始まりました。

スタジアムには、懐かしい顔が続々と集まり始めます。
まーちゃんが水泳の総監督だった時の選手、野田や大横田も。

 

午後1時50分、全国旗掲揚。
参加94ヶ国の国旗が一斉に掲げられます。

坂井は次第に顔色が悪くなっていきます。
金栗先生はなぜ走るんですか、と問われて
ため息交じりに、さびしそうに笑います。
「なんべんも考えたばってん、いっちょん分からん」

しかし、こんな大きな役目を、田畑元事務総長は自分に押し付けたのか。
ただ原爆投下の日に生まれたというだけで、
何もない自分を…。
「僕は、田畑さんを恨みます」

四三は一気に表情が曇りますが、
バケツに水いっぱい溜めて、坂井に頭からぶっかけます。
「なーんも考えんと、走ればよか!」

 

午後1時58分、天皇陛下御臨席。
日本国歌が流れた後、オリンピックテーマも演奏されます。
そして各国の選手団が入場してきます。

「あー、やっと見られる! やっと見られるよオリンピック…」
オリンピックへの派遣スタッフ候補者に何度も名前が挙がりながら、
結局のところは選考から漏れて見れず悔しい思いをした可児 徳も
感慨深い表情で式次第を見守ります。

 

午後2時35分、皇居前を出発した聖火は国立競技場を目指します。
そのころ、国立競技場には日本選手団が入場してきました。
日の丸を象徴する赤色のブレザーで、男子はズボン、女子はプリーツスカート。
入場する者、観客それぞれが万感の思いで歩き、見守ります。

坂井の視界に、聖火ランナーが見え始めました。
ランナーの鈴木久美江は、無事に聖火を点火して
坂井にエールを送ります。
「がんばって!」「はい!」

 

バー・ローズにはカラーテレビが備え付けられ、
カラー放送で見ることができるようになりました。
マリーは感動のあまり「ひゃっ!」と短い奇声を発します。

 

いよいよ坂井が陸上競技場に入ってきます。
「無限の未来と可能性を持った、19歳の若者、坂井義則君です」
中継でそう伝えられます。
不安はどこに行ったのか、堂々とした走りです。

そして163段の緑色のじゅうたんが敷かれた階段を軽やかに上り
聖火台の横に立った坂井は、ゆっくりと聖火を近づけ
大きく、美しく燃え始めます。

青空には、ブルーインパルスが飛んできて
見事に5つの輪を完成させます。
「はっはっはっ。みんな! ありがとう!」
隊員の松下治英は、5つの輪を上空から見下ろし、大満足です。

 

東京・芝の演芸場には、古今亭志ん生の姿がありました。
ここに来る途中でタクシーの中から五つの輪を見て
暮れでもないのに『富久』やろうかなぁ、とやる気です。

考えてみれば、『冨久』では浅草から日本橋まで走るというストーリーですが、
満州で寄席をやった時に、浅草から日本橋はせいぜい4~5kmだ、と指摘した兵隊がいて
浅草から芝まで、に変えてはどうか、と提案を受けたエピソードを話し、

オリンピックに出るんだ、と言っていたその兵隊は死んでしまいましたが
何かの縁でその息子が自分に弟子入りをし、
まげてしくじって、彼女作って孕ませてしくじって、という
裏事情まで話をしたのです。

これは、志ん生から五りんへの、帰ってこい、という
愛情あふれるメッセージなのかもしれません。

行き場を無くしていた五りんは、生まれてくる子どものためにも
日雇いの土管工事に精を出していましたが、
志ん生の娘・美津子は、芝で行われるテレビ寄席に戻ってくれば
『富久』のように許してもらえるかもしれないよ、と前もって伝えていたのです。

そして知恵の出産予定日でもある10月10日、
落語協会代表として聖火リレー隊に加わった五りんは
国立競技場から芝の演芸場まで走ってきました。

忘れねえで来たんだな。よし、出入りを許してやる、と志ん生が言うと
五りんははにかみながら答えます。
「志ん生の『富久』どうだったかい」「絶品でした」

実は『富久』は片道のお話ではありませんで、往復するわけですが
うまい具合に、知恵が産気づいたと浅草の病院から連絡が入ります。
五りんは、今走ってきた道を逆走して病院に急行。
無事に女の子が生まれたころにたどり着きます。

『富久』やっている最中に産まれた知恵の子だからということで
富恵、と名付けられます。

 

オリンピックのマラソンは、同時中継という技術で
選手たちが競技場を出たら帰ってくるまで待つしかないのか、と
治五郎がかつて言っていた問題は一応はクリア。
しかし割り当てのテレビカメラは1台なので、映っているのは1位のアベベだけ。

円谷幸吉が2位を走っていたことを、競技場やテレビ前の面々は
選手たちが競技場に戻ってきて初めて知ることになるのですが、
途中で英国選手に抜かれて3着というのでも、マラソン界では善戦したと言えるでしょう。

そして10月23日、女子バレーボール決勝。
試合前、“人道上許しがたき鬼の大松は今日で卒業”とエールを送ります。
「勝って、嫁に行け!」

結果は、金メダル! 日本チームの優勝です。
選手たちの胸に金メダルが輝き、優勝の日の丸が揚がります。

鬼の大松を卒業した監督は、
うっとうしいぐらいに選手の世話を焼き、
父親を亡くした河西選手の結婚式では、父親の代わりとして親族列に並びました。

 

10月24日、閉会式当日。

北ローデシアがイギリスから独立し、ザンビア共和国になります。
プラカードを新国名にしてくれ、という選手の熱い思いを
受け取ったまーちゃんは、独立記念日だからと
方々に働きかけをします。
「こういうところをおろそかにしないのが平和の祭典じゃないのかね」

新国旗は、国旗担当が事前に情報収集していたので何とか調達したのですが、
選手たちは競技を終えた解放感から言うことをまったく聞かない。
迫りくる時間に、ついにゲートを開放してしまい
しっちゃかめっちゃかになってしまいます。

ところが、この入り乱れての行進が
世界中から称賛されたというのです。
「そこには、国境を越え、宗教を超えました美しい姿があります。
このような美しい姿を見たことはありません」(中継)

 

まーちゃんを呼ぶ、治五郎の声がしてきました。
これが、君が世界に見せたい日本かね。
そう問いかける治五郎に、まーちゃんは胸を張ります。
「はい。いかがですか」

 

東京オリンピックが、ようやく終わりました。
聖火の火も、徐々に消されていきます。
俺のオリンピックがみんなのオリンピックになった!
まーちゃんは、涙を流します。

家にいた菊枝は、陸上競技場の模型を見ながら
頭を下げます。
「ご苦労さまでした」

 

東京オリンピックから3年後。

まーちゃんは河童に逆戻り。
日本水泳連盟名誉会長として、後進の育成に力を注ぎます。

熊本の四三のもとに、一通の手紙が届きます。

『金栗四三選手 あなたは1912年7月14日、
マラソン競技において競技場をスタートした後、一切の報告がなされておらず、
今まだどこかを走り続けていると想定されます。
当委員会は、マラソン競技の完走を要請いたします』

1912年のオリンピックを祝う式典が行われ、四三は
55年ぶりにストックホルムを走ります。
どうやら『消えた日本人』として名前が残っているらしいのです。

「金栗四三がスタジアムに現れました。
決意は固く、まっしぐらに進みます。
彼の後ろには何万キロの道のりが
長い長い年月があります」

記録は54年8ヶ月6日、5時間32分20秒3。
みんなが四三を拍手で出迎えます。

 


 

作:宮藤 官九郎

 

音楽:大友 良英

 

題字:横尾 忠則

 

噺(古今亭志ん生):ビート たけし

 

テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:下村 竜也

テーマ音楽編曲:工藤 直子

演奏:大友良英スペシャルビッグバンド
  :芳垣安洋オルケスタ・ナッジ!ナッジ!
  :渡辺貞夫クインテッド

タイトルバック画:山口 晃
タイトルバック製作:上田 大樹

スポーツ史考証:真田 久
       :大林 太朗

劇中地図製作:武藤 文昭
風俗考証:天野 隆子

時代考証:古川 隆久

撮影協力:熊本県
    :静岡県
    :日本スポーツ協会

    :日本陸上競技連盟
    :日本水泳連盟
    :講道館

映像提供:日本オリンピック委員会

    :映画「東京オリンピック」
     監督:市川 崑
     脚本:和田 夏十・白坂 依志夫・谷川 俊太郎・市川 崑

    :映画「東京オリンピック」未使用素材
    :資料映像バンク

    :毎日新聞社
    :諸岡 忠治
    :SVI

資料協力:朝日新聞社

資料提供:長谷川 孝道
    :筑波大学
    :日本スポーツ振興センター

    :秩父宮記念スポーツ博物館
    :東京都
    :航空自衛隊入間基地

    :国土地理院
    :Getty

 

──────────

 

[出演]

 

阿部 サダヲ (田畑政治)

 

中村 勘九郎 (金栗四三)

 

綾瀬 はるか (池部スヤ)

 

松坂 桃李 (岩田幸彰)

 

麻生 久美子 (田畑菊枝)

 

安藤 サクラ (河西昌枝)

 

徳井 義実 (大松博文)

 

斎藤 工 (高石勝男)

 

林 遣都 (大横田 勉)

 

三浦 貴大 (野田一雄)

 

大東 俊介 (鶴田義行)

 

角田 晃広 (森西栄一)
平原 テツ (大島鎌吉)

川島 海荷 (大河原やす子)
吉川 愛 (田畑あつ子)

須藤 蓮 (吹浦忠正)
マイケル・ソウッチ (ブランテージ)

アリオン (ヨンベ)
マックス (ウランダ)

 

森山 未來 (語り・美濃部強次)

 

神木 隆之介 (五りん)

 

荒川 良々 (今松)

 

川栄 李奈 (知恵)

 

池波 志乃 (りん)

 

小泉 今日子 (美津子)

 

堺 小春 (谷田絹子)
泉川 実穂 (宮本恵美子)

松永 渚 (半田百合子)
田中 シェン (松村好子)

北向 珠夕 (磯部サタ)
渡辺 悠子 (エミ)

石田 法嗣 (西村克重)
関口 アナン (淡野 徹)

 

生田 斗真 (三島弥彦(回想))

 

杉咲 花 (シマ・りく(回想))

 

仲野 太賀 (小松 勝(回想))

 

中村 七之助 (三遊亭圓生(回想))

 

エドワルト・マナル
ゴン・パパ
ダーシャ・テラニシ

井上 拓哉
斉藤 一平

ストームライダー
山田プロ
麗タレントプロモーション
テアトルアカデミー

劇団東俳
フラッシュアップ
ミライピクチャーズ
オフィス海風

グループエコー
劇団ひまわり
KМ企画
フリー・ウエイブ

トライストーン
アートキャップ
キャストプラン
アティチュード

 

桐谷 健太 (河野一郎)

 

永山 絢斗 (野口源三郎)

 

駿河 太郎 (松下治英)

 

井之脇 海 (坂井義則)

 

カンニング 竹山 (水明亭店主)

 

吹越 満 (係員)

 

宮藤 官九郎 (新タクシー運転手)

 

三谷 幸喜 (市川 崑)

 

清田 みくり (鈴木久美江)
政岡 泰志 (北出アナウンサー)

滝本 ゆに (河西まさ代)
佐藤 真弓 (黒坂ちょう(写真))

武野 汐那
山西 規喜
布施谷 唯
晴瑠

石塚 義高
玉りんど
山本 由奈
栗田 晴行

久野 倫太郎
山野 はるみ
隅之倉 ひろみ
安藤 輪子

金井 美樹
芋生 悠
中澤 準
上條 靖弥

伍藤 奏
福島 星蘭

三島 諒
吉田 真理
迫田 萌美
鈴木 広海

川手 淳平
村岡 哲至
森山 晶之
安田 智之

山川 真里果
梅津 翔
伊勢村 圭太
添木 大輔

山城 康二郎
武石 隆義
別当 優作

藤原 亮介
石垣 小達

撮影協力:茨城県  つくばみらい市
    :千葉県フィルムコミッション
    :千葉県スポーツ総合センター

    :埼玉県川口市
    :神戸フィルムオフィス
    :神戸総合運動公園管理センター

    :真間山弘法寺
    :日本大学

衣裳コーディネート:宮本 まさ江
VFXスーパーバイザー:尾上 克郎

VFXプロデューサー:結城 崇史
特殊映像製作:中島 賢二

所作指導:橘 芳慧
マラソン指導:金 哲彦

落語指導:古今亭 菊之丞
寄席指導:橘 右樂

熊本ことば指導:境 浩一朗
       :宗 真樹子

英語指導:塩屋 孔章
関西ことば指導:山藤 貴子

薩摩ことば指導:早水 真理
フランス語指導:杉浦 愛力

特殊メイク:松岡 象一郎
アナウンス指導:合田 敏行

バレーボール指導:斎藤 真由美
撮影機材指導:小金沢 輝明

産婦人科指導:三宅 はつえ
競泳指導:細川 大輔

国旗考証:吹浦 忠正

 

松重 豊 (東 龍太郎)

 

三宅 弘城 (黒坂辛作)

 

皆川 猿時 (松澤一鶴)

 

古館 寛治 (可児 徳)

 

薬師丸 ひろ子 (マリー)

 

役所 広司 (嘉納治五郎)

 

──────────

 

制作統括:訓覇 圭
    :清水 拓哉

 

プロデューサー:岡本 伸三
       :家冨 未央

 

美術:山田 崇臣
技術:加藤 貴成
音響効果:島津 楽貴

撮影:佐々木 達之介
照明:牛尾 裕一

音声:高山 幹久
映像技術:原 幸介

VFX:石澤 祥子
取材:渡辺 直樹

演出補:北野 隆
制作担当:速見 昌寿

編集:大庭 弘之
記録:森 由布子

美術進行:山尾 輝
特殊:木ノ島 勲

装飾:大坂 和美
衣装:阿部 司
メイク:馬場 五大

 

演出:井上 剛

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