プレイバック信長・(25)野望
【アバンタイトル】
当時、都の人たちにとって、織田信長という田舎大名は知る由もない人物だった。
その信長が、東の方から数万の軍勢を率いて、いきなり上洛してきたのである。
上から下まで大騒ぎになったようだ。
家財道具をもって逃げ出す者も多かったという。
朝廷からも信長軍に「上洛するらしいが、洛中で略奪暴行が起こらぬよう、
くれぐれも軍規を引き締めなさい」という命令書が発せられた。
正親町天皇も、祈祷を行ったほどである。
信長軍は、上洛すると本陣を東寺に置き、足利義昭は清水寺に陣を敷いた。
東寺は京の都、いわゆる平安京の入り口あたりに建てられたものであるが、
信長がそこを本陣としたのは、都を背に、大坂方面の敵を見渡すためであった。
当時、この寺は都のはずれで、その先はもう田畑の広がる田園地帯であったようだ。
信長にとってその景色は、まさに天下からの眺めであったに違いない──。
最近のコメント