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2020年8月14日 (金)

プレイバック春日局・(13)戦後の家族

【アヴァン・タイトル】

東西両軍、合わせて15万人の兵士が入り乱れた
「関ヶ原の合戦」は、文字通り“天下分け目”の戦でした。

家康は、敗走した西軍の主力、石田三成、小西行長らに対し
いつになく厳しい残党狩りを命じました。
この時、関ヶ原に埋められた兵士の数は、
4,000とも5,000とも言われています。

家康にとって、合戦後 最も重要な問題は
西軍方の大名に対する処置でした。
特に会津120万石の上杉景勝、
西軍の大将・毛利輝元に対しては慎重でした。

家康は、まず西軍の88大名を取り潰し、その上で
毛利・上杉の大幅な領土没収を決行したのです。
 毛利輝元 120万石→[37万石]
 上杉景勝 120万石→[30万石]

家康は、没収した630万石を東軍の大名に恩賞として与え
自らも日本最大の領国を手に入れました。
 徳川家康 250万石→[400万石]

徳川家康、まさにこの時
天下人としての実験を握ったのです──。


三条西家におふくたちを迎えに行った稲葉正成は
一家を引き連れて、ようやく
大坂の稲葉屋敷に帰ることができました。

改めて、小早川が徳川に味方したのは
間違いではなかったと自信の面持ちの正成ですが、

おふくが、今回の小早川秀秋の働きで格別な褒賞があろうかと
筑前からのお国替えの話を正成にうっかりしたものだから、
殿は恩賞が欲しくて寝返ったのではない、と不機嫌になります。
ただ、小早川の真意を分かってもらえない辛さも味わっています。

 

10月15日、徳川家康は関ヶ原の合戦の戦後処理として
諸大名の処分と論功行賞を発表します。

豊臣家は今回の戦には関わりないから
豊臣家の所領には手をつけない、と言っておきながら
家康は、200万石あった豊臣家の所領を
65万石に減らす処分を発表したのです。

話が違う、と茶々が激怒するのももっともですが、
実は家康は、約束通り所領には手をつけておりません。

生前、豊臣秀吉は全国の諸大名に豊臣の領地を預けて
年貢の取り立てを委ねていました。
家康が取り潰し召し上げた領地は、諸大名に
預けていたものも含まれ、数字上は減ったわけです。

ゆえに、豊臣の直轄地である摂津、河内、和泉の
3国、65万石は無事というわけです。
茶々の乳母、大蔵卿の局は、手をついて茶々を諭します。
「今はご辛抱のときにございます」

 

城から正成が帰ってきました。
正成の顔は憮然としていて、
おふくとの間にも何か張りつめたものが……。

「殿が備前美作二国、52万石のご領主になられた」
加増が目当ての裏切りと陰口を叩かれるのを
正成は極度に嫌っているようです。

しかも備前美作は宇喜多秀家の旧領でありまして
そこに住む者たちも宇喜多の家臣が多いわけです。
そこに仇同然の小早川が入っては、
民衆が小早川に従うわけがないのです。

 

「珠姫を前田に輿入れさせるとは……どういうことじゃ」
江戸城で、お勝に家康からの伝言を聞かされたお江与は
動揺を隠し切れません。

お勝曰く、120万石の前田家は
北陸方面の監視役とも言うべき重要な大名となります。
当主利長の嫡男・猿千代に珠姫が嫁げば
徳川と前田の絆はより固くなります。

わずか8歳の猿千代に、まだ2歳の珠姫を嫁がせるなど
冗談も休み休み言えとお江与は大反対ですが、
お勝は、すでに決まったことだとして譲りません。
「秀忠殿とてご承知なされました」

それでも抵抗するお江与。

お勝は、お江与の気持ちに関係なく、来夏に向けて
珠姫お輿入れの準備を始めるよう侍女たちに命じます。
お子はお江与の姫ではなく、徳川の姫なのです。
いずれお分かりいただけよう、と遠くを見つめます。

 

慶長6(1601)年3月。

秀秋は備前岡山城に入ることになり
正成も一家をあげて
岡山の屋敷に移り住むことになりました。

正成は倉敷に5万石の領地をもらっていましたが、
若い領主・秀秋に代わって領国を治めるため
岡山城に出仕することになったのです。

おふくとお安は、住み良い岡山で暮らしながら
これまでの戦続きの暮らしを振り返り
平和の尊さ、ありがたさをかみしめます。

 

正成は、最近の秀秋の変貌ぶりを危惧しています。
鷹狩りに執心しているだけならまだしも、
秀秋の乗った馬を横切った罪ない農民を手にかけました。

正成たちがいくら領民との信頼関係に腐心しても
秀秋の行状が明らかになれば、すべてが水の泡になります。
西軍を裏切ったことへの後悔があるのかもしれません。
それを思うと、正成もとても辛い気持ちになります。

 

7月1日、珠姫の輿入れ当日。

お江与は、徳川秀忠が江戸城に戻って来なかったことを
良いことに、珠姫の婚儀を延期せよと主張します。
幼い娘が去るのに、父が顔を見せないのは不憫だと言うのです。

それでも輿入れを迫るお勝ですが、
今度は珠姫を抱きしめて、懐剣を突き出して
まるで人質のように珠姫を守ります。

お勝が、一瞬のスキをついて
お江与から刀を取り上げようとしている間に
珠姫が侍女に抱き上げられて連れていかれますが、
珠姫のお江与を呼ぶ声だけがこだまします。

「もう姫は産まぬ。姫を産めば、母も子も地獄じゃ」
放心状態のお江与は、へなへなと座り込みます。

江戸城を後にした珠姫は、前田家に輿入れし
秀忠にもお江与にも対面することなく
加賀金沢城でわずか24年の生涯を送るのです。

 

冬、備前では
小早川家を崩壊に陥れる事件が発生します。
鷹狩りの途中、秀秋が狙撃されたのです。

秀秋には命中しませんでしたが、
家来・進之助が弾を受けて即死します。

「裏切り中納言! お前の裏切りで我らはご主君も領地も失うた!」
「裏切り者め! 裏切り者の命は必ずもらう!」
激昂した秀秋は、家来に
草の根を分けてでも狼藉者を捜し出せと命じます。

杉原紀伊や正成は、秀秋に狩りを止めるように進言していますが
秀秋はその忠告を無視して鷹狩りを続けてきたのです。
秀秋は、今回ばかりは召し捕らえよと目を剥き出しにします。

そこに、宇喜多の浪人たちが一揆を起こしたと知らせが……。

秀秋は村山越中を総大将に命じ、鎮圧させて皆殺しにせよと命じます。
しかし正成は、力づくで抑えるのは簡単ではあるが
鎮圧したところで、宇喜多の浪人たちはたくさんいるわけで
そうなれば浪人たちは決起するだろう、と言います。

杉原は、秀秋の行状が改まらないことが不満につながったと言い
村山は杉原と正成の失政が招いたことと批判しますが、
正成は、もし自分たちの失政なら浪人たちと話し合うと聞きません。

秀秋は、宇喜多の旧領に配置変えさせられた不運を嘆きます。
そして東軍に寝返るように進言した正成を問いつめます。

あの時、小早川が寝返らなかったら徳川の勝利はなく
秀秋が西軍に合力していれば、三成が勝利を収めて
今ごろ秀秋は関白の座に座っているはずでした。
「何のための裏切りじゃったのよ! 正成! そちのせいじゃ!!」

 

酒を大量にあおる秀秋。

盃を持つ手が震えております。
そばには村山が黙って座しています。

「杉原と正成を斬れ……小早川にとって獅子身中の虫」
秀秋は村山を睨みつけます。

 

一揆を収めて稲葉屋敷に帰ってきた正成は
岡山城内で杉原が上意討ちで殺されたことを
おふくから聞かされます。

「今宵のうちに岡山を出る。一家をあげて落ち延びる」
おふくは、あれだけ誇りにしていた小早川の家老職を
正成が捨てると表明したことに驚きを隠せません。

おふくには、あまりに突然のことで
何が何やら分かりませんでしたが、
正成が命の危機に立たされていることは理解できます。
ようやく訪れた平和な日々が、わずか9ヶ月で
おふくたちはまたいばらの道を歩くことになりました。

おふくは、お安やこどもたちに落ち延びる準備をさせます。


原作・脚本:橋田 壽賀子 「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
長山 藍子 (お江与)
山下 真司 (稲葉正成)
東 てる美 (お勝)
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香川 照之 (小早川秀秋)
馬渕 晴子 (大蔵卿の局)
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大空 眞弓 (茶々)
佐久間 良子 (お安)
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制作:澁谷 康生
演出:兼歳 正英

 

◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『春日局』
第14回「夫の危機」

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