プレイバック春日局・(10)秀吉逝(ゆ)く
【アヴァン・タイトル】
豊臣政権五奉行の筆頭・石田三成。
「太閤検地」「南蛮貿易の拡大」など
経済政策のベテランとして秀吉にとって
なくてはならない人物でした。
三成は近江国・長浜生まれ。
初めて城を持ち大名となった秀吉とこの土地で出会い
その帯同を認められ、小姓に取り立てられたのです。
近江は古くから商業の盛んな土地です。
出身地に近い佐和山城主となった三成は
その政策に独特の経済感覚を用いて大きな成果を上げました。
三成を慕う領民が刻んだ地蔵尊が城跡に点在しています。
官僚というイメージが強い三成とは違う
温かい人柄を窺い知ることが出来ます。
しかし大坂城では三成の政策が大きな反発を招きました。
その中心は、尾張以来、秀吉と戦を供にしてきた加藤清正です。
そしてこの対立は、やがて豊臣政権に
大きな火種を撒くことになるのです──。
豊臣秀吉の再度の朝鮮出兵で、主君の小早川秀秋とともに
出陣した稲葉正成が突然帰還します。
総大将に任ぜられていた秀秋の作戦に誤りがあったとして
秀吉の勘気に触れ、呼び戻されたわけです。
正成は秀秋の家老としてその責めを負う覚悟で
秀吉の待つ伏見城へ入ります。
おふくが正成に嫁いで初めて迎える危機です。
おふくは正成が無事に戻れるよう、
祖父の位牌に手を合わせて祈ります。
「このたわけが!」
戦況を見極め、全軍を指揮するのが総大将の役目なのに
おのれ一人の功名心に逸って真っ先に明軍に斬り込んだことを
秀吉は怒っているのです。
戦というのはただ前進するだけが戦ではなく、
時に引いて味方を守ることも肝要なわけです。
秀秋の無謀な斬り込みで、味方の将兵をたくさん失い
他の部隊をも死に陥れることにつながったのです。
しかし秀秋にも言い分はあります。
もしあのまま兵を引いていれば、明軍は自分たちを侮り
もっと被害は大きくなっていたかもしれません。
褒められたとしても叱られる言われはない、と。
弁解は無用、と秀吉は鼻で笑います。
筑前名島36万石を召し上げられ、
越前北ノ庄16万石に転封処分となりました。
秀秋は、明国での作戦のことを報告した戦目付、
ひいては戦目付を束ね、日本でぬくぬくと過ごしていた
石田三成に対して激しい憎悪心を露にします。
三成と戦をしても筑前36万石は守る、と
北政所(寧々)のところに駆け込んだ秀秋はそう訴え
意地でも北ノ庄には行かないと宣言しますが、
「そこまで思うておるのなら、家康殿にご相談なされ」
寧々は正成でさえドキッとする一言を発します。
寧々が家康に宛てた書状を持って、
秀秋と正成はそのまま伏見城内の徳川屋敷に入ります。
書状に目を通し、ふたりに対面した家康は、
秀吉に北ノ庄に転封と言われてただ頭を下げ
家来を2〜3人派遣して、自分は移る準備をのらりくらりとして
時間稼ぎをしていればいい、とつぶやきます。
正成は、無事におふくのところに戻ってきました。
おふくと二人きりで、ゆっくりと酒を呑みます。
正成は、初めて会った家康の度量の大きさを
興奮気味におふくに話します。
秀吉子飼いの大名たちを次々に
味方につけているらしい、といううわさ話も
家康を見れば、なるほど、と納得できます。
三成らが戦える相手ではありませんが、
もし秀吉の身に何かが起きればこの先どうなるか……。
おふくは、戦と聞いただけで寿命の縮む思いです。
8月18日、豊臣秀吉は、徳川家康・前田利家ら五大老と
石田三成・浅野長政ら五奉行に豊臣秀頼のことを託し
63歳の生涯を閉じます。
秀吉の後を追うように、前田利家も没して
政局は、秀頼・淀どの側の石田三成と
徳川家康との対立が始まっていました。
2年が経った慶長5(1600)年6月、
石田三成と徳川家康が
ついに雌雄を決する時が近づいていました。
寧々は秀秋を呼びます。
家康が会津の上杉景勝攻めにとりかかるため大坂を離れていますが、
それは、三成が西国の大名たちと結託して
挙兵する用意があることを知った上での出陣なのです。
つまり、三成が挙兵するのを待っているわけです。
秀秋は、秀頼の守りで大坂に残ることになっていますが、
「いざというときは、必ず家康殿にお味方するよう」
混沌とした世は、家康でなければ治められないのです。
寧々は秀秋を見据えます。
秀秋は、三成の讒言により北ノ庄16万石に転封と決まったとき
家康の計らいで筑前名島36万石のままとしてもらえました。
その恩義は忘れるものではありません。
神に誓って家康に二心なし、と秀秋は正成を家康に遣わします。
そのころ、稲葉正成邸に珍しい客人が来ました。
美濃清水城に移る前まで世を忍んで暮らしていた
三条西家の若君・三条西実条(さねえだ)です。
三条西家で初めて実条とおふくが顔を会わせたのは、
おふくが6歳の幼子のころでしたので、
今は一児の母、しかも二人目がお腹の中に、と聞いて
実条は感慨深げです。
実条は秀頼からお金が下されて
そのお礼に大坂に来たわけですが、
戦の匂いをプンプンと感じ取っています。
家康が会津討伐に出かけると、西で挙兵の動きがあり。
西の豊臣・東の徳川で天下を二分する大戦が始まる。
そんな気がするのです。
大事な身体ゆえお気をつけて、と実条から気遣いを受けます。
6月16日、家康は大坂城を出発して会津討伐の途につきます。
そして、それを待っていたように三成は西国の大名たちを誘い
家康打倒の兵を挙げます。
15,000の兵を擁して大坂城を守っている
秀秋の立場は微妙でした。
その渦中、三成が秀秋の陣を訪問します。
もはや敵だと三成に会うつもりはない秀秋ですが、
大坂城は、三成に味方する西国の大名たちで固められ
三成は敵だと表明すれば、秀秋が逆に彼らに包囲されてしまいます。
正成は、ここは三成に会うべきだと対面を勧めます。
三成は笑って現れ、
大坂城西の丸には毛利輝元・毛利秀就が入り
宇喜多秀家ら西国の大名たちが集まって
今や兵力は93,000に膨れ上がったことを報告。
一方家康は、30,000〜40,000の兵力であり、
その中にも豊臣子飼いの大名たちはたくさんいます。
今、三成が挙兵したと聞けば、徳川から離反して
自分たちに味方してくれるのは必定なのです。
もし、味方してくれない輩もいるかもしれないことを考え
三成は、彼らの妻子や家族を人質に取ることにしました。
その上で、秀吉に可愛がられた秀秋は
石田方として出陣してくれるだろうという見通しですが
念のため、確認のために陣に現れたのだそうです。
秀秋は、ますます三成を憎悪します。
そこに、細川忠興屋敷から火の手が上がったと知らせが入ります。
人質に取ろうとしていた細川ガラシャが屋敷に火をかけ
自害して果てた、という知らせです。
おふくは身重ながら、落ち延びる準備に入ります。
いざとなれば三条西家へ、と実条が言ってくれたので
おふくはそのつもりなのです。
秀秋は豊臣ゆかりの人なので、徳川に味方するわけはないから
自分たちが落ち延びることはないだろう、というお安に
戦になれば何が起きるか分からない、とおふくは凛として答えます。
身重でも、京まで歩いてでも落ちなければならない、と。
「子たちを守るために是が非でも京まで歩かねばなりませぬ」
訴えるおふくに、私がついておる、と言うお安。
おふくにとって母親は、勇気そのものです。
秀秋の陣では、軍議が開かれています。
石田軍93,000に徳川軍30,000となれば
徳川方が不利というのは火を見るより明らかです。
徳川方に味方する制約をした、と主張する正成に対して
今徳川に味方しても自滅するのは自分らだけ、と
徳川加勢に反対する重臣たちが現れ始めました。
ただ、徳川方不利だからこそ、
小早川が徳川に合力して助けてやらねばならない、と秀秋。
秀秋は徳川に味方すると全くぶれていません。
しかし、鳥居元忠が守る伏見城を助けんと
小早川勢が加勢する旨を伝えに行く正成ですが、
元忠は加勢を断ってきました。
城を枕に討ち死にする覚悟のようです。
つまり、会津討伐に向かっている家康は
伏見城を捨て駒として、三成に攻めさせ
それを理由に取って返して三成を討つ算段のようです。
正成の努力も虚しく、三成から伏見城攻めの命が届き
秀秋は不本意ながら伏見城攻めに加わることになり
心ならずも徳川を裏切る形になってしまいます。
三条西家に入ったおふくとお安。
実条は、伏見城攻めが始まったことを知らせ
小早川勢も伏見城攻めに加わっていることを伝えます。
正成から、小早川は徳川に合力すると聞かされていたおふくは
聞いていた内容と真逆に進んでいることに不安を隠し切れません。
「この戦、豊臣方が勝つに決まっておる。豊臣は安泰じゃ」
そう笑う実条の横で、おふくが産気づきます。
こうしておふくは三条西家で男子を出生します。
千熊と同じ、父親不在の他家での出産です。
ただ、正成の消息が未だ分からず、
これからどうなっていくのか
おふくには不安しか残っていません。
慶長5(1600)年7月18日、
総大将宇喜多秀家、副将小早川秀秋ら総勢40,000の兵で
鳥居元忠軍1,800が守る伏見城への攻撃が始まる。
寛永6(1629)年10月10日、
おふくが上洛して昇殿し「春日局」名号を賜るまで
あと29年2ヶ月──。
原作・脚本:橋田 壽賀子 「春日局」
音楽:坂田 晃一
語り:奈良岡 朋子
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[出演]
大原 麗子 (おふく)
藤岡 琢也 (豊臣秀吉)
山下 真司 (稲葉正成)
橋爪 淳 (三条西実条)
香川 照之 (小早川秀秋)
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香川 京子 (寧々)
伊武 雅刀 (石田三成)
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丹波 哲郎 (徳川家康)
佐久間 良子 (お安)
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制作:澁谷 康生
演出:一井 久司
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『春日局』
第11回「関ヶ原前夜」
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