大河ドラマ麒麟がくる・(23)義輝、夏の終わりに ~光秀義輝 涙の別れ~
永禄7(1564)年9月、畿内に絶大な権力を誇った三好長慶が生涯を閉じ、
将軍足利義輝は復権を図り、京は再び戦乱の時代に入ります。
その方策を尋ねられた明智光秀は、織田信長の名前を上げ、
信長が上洛して義輝を支えるなら大いに力になる、と励まします。
そのころ信長は美濃攻めの最中でしたが、国境の土豪たちに手を焼き
とりかかってはや3年が経とうとしていました。
義輝の御内書を預かり、尾張・小牧山城に入った光秀は信長と対面しますが、
いまは上洛について話している余裕がない、と断ります。
その代わり、その話の続きはあの者とせよ、と言われて
紹介されたのが木下藤吉郎、後の豊臣秀吉であります。
表向きはちょっとバカさを表に出して周囲を呆れさせている藤吉郎ですが、
フッと表情を曇らせて、こっそりと光秀に尋ねます。
「このところ京で奇怪な噂が……義輝様が近々闇討ちされるという」
義輝を闇討ちするのは長慶の遺児義継とその取り巻きとのことです。
義輝が幕府を勝手気ままに動かし、誰の諫言にも耳を貸さないため
政がとどこおってしまい、義輝に消えてもらおうと画策しているそうで、
幼いころから自分をかわいがってくれている六角から出た話であるため
確かな情報だと藤吉郎は困ったようにつぶやきます。
そしてそれを止めることができるのは、長慶の家臣であった
松永久秀ぐらいだ、と藤吉郎は言うのですが、
実はその闇討ちを裏で画策しているのが、誰あろう久秀本人というので
光秀は表情を曇らせます。
大和国では、相変わらず覚慶が施しを行っています。
そしてその様子をじっと見つめている駒もいるわけですが、
お金がなくて治療を受けられない人たちが大勢いて、
死んでいく者たちもいるということをどう考えているのかを尋ねてみます。
「私は無力だ」
駒と同じことを考えている覚慶も、施しには限界があり、
毎日集まってくる者たち以外を知らないわけで
麒麟が来なければ皆が同じように豊かになることはできない、と。
麒麟というワードが出ると、駒の表情がパアッと明るくなり
覚慶もついつい、将軍であった自分の父について語り出すのですが、
周囲に自分をつけている武士たちの存在に気付くと、
駒の手を握って市のほうへ走って逃げます。
多聞山城に入った光秀は、久秀のいる大広間に向かいますが、
渡来の焼き物を感情に任せて叩き割る久秀の姿に、かつて自分に見せてきた
人のいいおじさんという久秀のイメージは覆されます。
私が本日参りましたのは、という光秀の言葉を遮り、久秀は続けます。
物にはもともと値打ちがあるわけではなく、人が作るものである。
「将軍の値打ちもそうだ。人が決め、人が作っていくのだ」
人物が素晴らしければ将軍の値打ちは上がり、つまらんと思えば下がる。
値打ちが下がれば消したくなる、と。
ただ久秀としては、義輝を討つつもりはなく、追放するつもりです。
光秀が義輝を高く買っているのは久秀は承知していますが、
世間に目を広げた時、義輝のためにいったいどれだけの大名が
上洛したかを考えれば、義輝が将軍である必要性は火を見るより明らかなのです。
それどころか、幕府の身内でさえ義輝の身勝手さに閉口するありさまで
政の要所を抑えてきた三好長慶が存命の時はそれでもよかったのですが、
今は長慶も亡く、このままでは幕府は立ち行かなくなるのです。
不満気な光秀に、久秀はある人物を会わせます。
誰あろう、細川藤孝であります。
都の人心はすでに義輝から離れ、藤孝はじめ幕府の身内はみな
義輝の次の将軍を就かせる準備に入っているのです。
失意のまま京に戻った光秀ですが、義輝は長旅をいたわります。
手ぶらで戻ってきたとなると、上洛を促す今回の旅は不調だったと容易に想像がつきます。
「都がこれほど寂しいところとは知らなかった」
夏は終わった、とつぶやいて、義輝は光秀を越前へ帰します。
望月東庵とけんかして以来、駒にとっては久々の東庵屋敷ですが、
やはりけんかして飛び出したとあって、門前をウロウロして入る勇気がありません。
そこに通りかかった男が、盗賊に入られて東庵が右腕をへし折られたと聞くと
駒はとりあえず急いで屋敷に戻ります。
そこに伊呂波太夫が入って来て、駒が作った丸薬を売ってくれと言います。
永久寺のお坊さんに近所の神社の宮司からも求めがあったようで、
もともと駒は、お金が払えない者のために作ってみたわけです。
東庵もあの薬は嫌いだし、売るのはやめます、と駒は答えます。
しかし、お金が払えない者に配る、という目的だけ考えれば
それは駒も永久寺のお坊さんも近所の神社の宮司もまったく同じでして
太夫はとりあえず手付金を東庵にちらつかせ、薬を作るようにけしかけます。
無一文の東庵にとっては願ってもないお金で、自説を曲げて薬作りを認めざるを得ません。
光秀が越前に戻ってきました。
朝倉義景は、都の様子はおおよそ自分の予想通りであり、
光秀に、これからは国外のことに振り回されることなく
越前でじっとしていろ、と光秀に言葉をかけます。
光秀は義景の言葉をかみしめながら、久々に帰宅します。
翌年、永禄8(1865)年、京で一大事変が起こります。
病死した長慶の子・三好義継率いる軍勢が義輝のいる二条御所を
襲撃したのです。
作:池端 俊策
脚本協力:岩本 真耶
音楽:ジョン・グラム
語り:市川 海老蔵
題字:中塚 翠涛
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[出演]
長谷川 博己 (明智十兵衛光秀)
染谷 将太 (織田信長)
門脇 麦 (駒)
木村 文乃 (熙子)
石川 さゆり (牧)
向井 理 (足利義輝)
眞島 秀和 (細川藤孝)
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滝藤 賢一 (覚慶)
尾野 真千子 (伊呂波太夫)
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佐々木 蔵之介 (木下藤吉郎)
吉田 鋼太郎 (松永久秀)
堺 正章 (望月東庵)
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制作統括:落合 将・藤並 英樹
プロデューサー:中野 亮平
演出:佐々木 義春
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