大河ドラマ麒麟がくる・(32)反撃の二百挺(ちょう) ~信長軍、朝倉と再び激突~
元亀元(1570)年四月、織田信長率いる軍勢は越前金ヶ崎から京へ逃げ帰ります。
信長の、敗北でした。
しんがりを務めた明智光秀が二条城の将軍足利義昭に呼び出され、
戦の状況や失った兵数を聞いて、負けだな、と表情を曇らせます。
同席していた摂津晴門は、浅井長政が朝倉義景側に寝返って
戦況が危うくなってから3日も眠れなかったと皮肉たっぷりに言いますが
長政の寝返りは4日前のことであり、
特に隠し通していたその情報が京に届くのはいささか早すぎます。
光秀は、幕府内に敵方に通じている者の存在を疑い始めます。
「申しておくが、それがしは朝倉を真の敵とは思うておりませぬ!」
朝倉は幕府に味方してくれる大名だと考えている晴門に、
光秀と義昭は、言葉が過ぎるとたしなめますが、
政所に仕事を残してきたとかで、さっさと中座するありさまです。
光秀は今回の戦で、義昭がどうして金ヶ崎にいなかったのか疑問に感じています。
もし将軍が御旗とともにあれば、浅井の裏切りも朝倉の攻撃もなかったのです。
次回の戦は、高みの見物ではなくぜひ戦場に、と光秀は願い出ますが、
険しい顔の義昭は、最後まで光秀の願いには答えませんでした。
京に構える明智屋敷には、熙子や子どもたち、伝吾ら家臣の姿がありました。
長い間離れ離れであったため、ようやく一家で暮らせると
光秀は感慨深げに頷きます。
「熙子、今日からここが我が家ぞ。わしはここでそなたたちを守って見せる」
光秀は木下藤吉郎とともに、前の戦で失った鉄砲の補填に堺へ向かいます。
鉄砲と玉薬を一手に扱う今井宗久の屋敷に入ったふたりは
鉄砲三百、火縄一万、玉薬一千斤、玉十万など信長の要求を伝えますが
宗久は「荷が重い」としか返事しません。
それは一足違いで鉄砲二百五十挺を別の人に約束したからです。
藤吉郎は、その商談相手を聞き出し何なら譲り受けようと食い下がりますが、
商売相手は秘中の秘、と宗久も口を割ろうとはしません。
ただし、顕本寺で催される参加者の名は教えてくれました。
その参加者の中に「筒井順慶」なる名前があります。
順慶は松永久秀と大和で戦っているやっかいな敵で、三好方です。
光秀は、二百五十挺はあきらめるしかない、とため息をつきますが、
ついでだから顔だけでも見ておくか、と茶会に参加します。
茶会までの間、別室で待たされている光秀と藤吉郎ですが、
順慶と駒が到着したので、宗久は同室に案内して歓談してもらいます。
順慶は、態度といい物言いといいとても人がよさそうな感じで
光秀についてのあらかたの話を駒から聞いて、相応の態度で接してくれます。
駒とは芳仁丸を家臣たちに配ってもらっている縁で知り合い、
茶会の席に駒もついてきました。
光秀は順慶に思い切って鉄砲の話を切り出そうかと考えますが、
藤吉郎は光秀を廊下に呼び出し、耳打ちします。
「あの駒殿でございますが、公方様のご寵愛を一身に受け……」
つまり、光秀が順慶に話した内容は、駒から義昭へ筒抜けだということを理解したうえで話を進めるように、と。
光秀が鉄砲百六十挺を譲ってほしいと必死に頭を下げると、
意外にあっけなく了承してくれたのですが、そこには
駒に義昭との対面を仲介してくれること、
光秀に信長との対面を仲介してくれることの交換条件つきでした。
順慶は、むろん久秀が信長とつながって大和で戦をしているのは知った上で
順慶も久秀と同じように重用してもらいたいという思惑です。
光秀は、鉄砲二百挺お譲りいただけるのであればと順慶を見つめ、
やむを得まい、と順慶もその条件を呑むことにします。
ちょうどそのとき、宗久がやって来ました。
「みなさまお揃いでございます。案内いたします」
金ヶ崎での敗北からわずか2ヶ月後、信長は徳川家康とともに近江へ出撃し、
朝倉・浅井の両軍と戦います──姉川の戦いです。
兵力に勝る織田徳川両軍は敵を切り崩し、朝倉浅井軍は各々の城へ逃げ帰ります。
家康は織田徳川軍の拠点・近江横山城から翌日には三河に戻ります。
甲斐の武田信玄が三河侵攻を始めているとかで、その準備が必要です。
しかし家康が怪しんでいるのは幕府と義昭の動きでありまして、
義昭から信玄へ上洛を促す書状が送られているようだというのです。
「油断召されますな、公方様はああみえて食えぬ御方じゃ」
光秀の複雑そうな表情です。
信長の戦はさらに続き、朝倉浅井に勝ちきれなかったとみた三好一族は
13,000の兵で四国から畿内へ押し寄せてきます。
是非とも公方様も戦陣にとの求めに応じ、義昭は摂津の海老江城にやって来ます。
しかしこの戦に、信長は苦杯をなめることになります。
一向宗という、親鸞の教えに従って戦えば極楽往生できるという
者たちの総本山である本願寺が摂津にあるのですが、
そこの数万の門徒が鉄砲を手に三好方に味方しているそうで、
その機を狙って朝倉が京に向かって進軍を始めたというのです。
つまり、正面の敵は三好一族と本願寺、背後からは朝倉浅井と、
信長は窮地に陥っていたのです。
そこで信長は、宿敵朝倉義景に狙いを定めて摂津から兵を引き、近江へ。
しかしあと少しというところで、比叡山延暦寺の僧たちに阻まれ
そこまで追い詰めた義景をみすみす手放すことになってしまいます。
近江坂本城で信長は地団駄を踏みながら、悔しがります。
信長に、朝倉と自分との決定的な違いを問われ、光秀は答えます。
「信長さまは叡山から多くを奪い、朝倉浅井は多くを与えるから、と」
つまり、朝倉浅井は延暦寺の座主に金を出しているのです。
作:池端 俊策
脚本協力:岩本 真耶
音楽:ジョン・グラム
語り:市川 海老蔵
題字:中塚 翠涛
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[出演]
長谷川 博己 (明智十兵衛光秀)
染谷 将太 (織田信長)
門脇 麦 (駒)
木村 文乃 (熙子)
間宮 祥太朗 (明智左馬助)
徳重 聡 (藤田伝吾)
駿河 太郎 (筒井順慶)
安藤 政信 (柴田勝家)
金子 ノブアキ (佐久間信盛)
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風間 俊介 (徳川家康)
ユースケ・サンタマリア (朝倉義景)
滝藤 賢一 (足利義昭)
榎木 孝明 (山崎吉家)
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陣内 孝則 (今井宗久)
片岡 鶴太郎 (摂津晴門)
佐々木 蔵之介 (木下藤吉郎)
吉田 鋼太郎 (松永久秀)
堺 正章 (望月東庵)
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制作統括:落合 将・藤並 英樹
プロデューサー:中野 亮平
演出:深川 貴志
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