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2020年11月22日 (日)

大河ドラマ麒麟がくる・(33)比叡山に棲(す)む魔物 ~信長の非情に光秀は~

元亀元(1570)年11月、朝倉義景と浅井長政は
織田信長を討つために、延暦寺の助けを得て比叡山に陣を敷きます。
さらに西には三好一党と本願寺、南には六角承禎と一向宗に囲まれて
信長は孤立し、窮地に立たされていたのです。

近江宇佐山城に陣を敷く信長は、戦う姿勢を見せぬ朝倉を腹立たしく思っていました。
もたもたしていると、三好や本願寺が攻め込んできてしまいます。
その前に何としても朝倉と一戦を交える必要があるのです。

軍議に参加する明智光秀のもとに密書が届けられ、信長に進言します。
「信長さま、私はこれより叡山に向かいます」

「織田も朝倉もいつまで戦を続けるつもりじゃ!」
将軍足利義昭の怒りの言葉が二条城に響き渡ります。
しかし摂津晴門は織田にも朝倉にも和睦せよと伝えていると
のらりくらりとしているばかりで、義昭の怒りは全く収まりません。

比叡山に向かった光秀は、朝倉家家臣山崎吉家の案内で義景と久々の対面を果たします。
義景は光秀に対し、昔かけてやった温情を裏切りで返されたと恨みがましく語るのですが、
光秀が示すご恩返しは、長期間にわたって戦地に赴く両軍が
おだやかに戦を終え、安全に国に帰れるようにすることであります。

ただそれは、義景に言わせれば八方ふさがりは織田方であって、
朝倉は延暦寺の傘の下にあり、戦なく穏やかに過ごせているので
ご恩だと押しつけがましく言われても、苦笑するしかありませんが、

光秀が言うには、これから冬にかけて雪が降るため、
戦が終わっても雪に阻まれて越前へ帰国できなくなってしまい、
帰国できなければこの山中で2万あまりの兵を守り食わせる必要が出てくるため
それらもひっくるめてそろそろ潮時ではないかというわけです。

そこへ、鐃鈸(にょうはち)を鳴らす一団が比叡山周辺に現れました。
比叡山の主である覚恕が横川中堂での行をして戻ってきたのです。
その様子を寺の内から眺めていた義景は、めんどくさそうに説明します。

都にはもともと比叡山が何百年もかけて手に入れた領地や寺、神社があり
あまたの商いも支配して今日に至るわけですが、
それを成り上がりの信長が上洛し、勝手に奪い取ってきたわけです。
信長を許せん、と覚恕は考えているようです。

義景はこれまで越前の一向宗徒と何度となく戦を続けてきましたが、
経を唱える者たちとの戦には勝ち目はないと悟ったのです。
それゆえに、比叡山から陣を引くことなど覚恕の許しなくは勝手にできず
信長には、戦を止めたければ覚恕にひざまづけ、と伝えさせます。

光秀は何とか義景に食い下がり、覚恕との対面にこぎつけます。
覚恕は正親町天皇の弟にあたり、美貌の帝に対して醜い弟は出家させられ、
美貌の代わりに金や権力を持って人々に頭を下げさせようと
こつこつとすごして、実際にその通りになりました。

しかしそれらを、信長が次々とかすめ取っていくのです。
信長に対する腹立たしさは尋常ではありません。

芳仁丸を作り続ける駒のところに、かつて無料で配っていた丸薬を
高値で売っていた少年が現れました。
自分たちが食うために、母親が妹を売り飛ばしてしまったそうで、兄はそれを阻止すべく
芳仁丸を500粒売って妹を連れ戻したい、と駒に頭を下げます。

売られた先は、比叡山の坊主だそうで、駒はそれを聞いて
自分に何ができるかずっと考えています。

信長と朝倉浅井が膠着状態であると、反信長勢力は信長包囲網を一気に狭めてきました。
伊勢長島の一向宗徒は本願寺本山の命を受け
尾張小木江城に攻め込み、信長の弟・織田信興を討ちます。

「よろず思い通りじゃ」と泣いて喜ぶ覚恕に、称賛を送るのは摂津晴門。
晴門も、幕府と比叡山が再び手を取り合うためには
都から織田勢を一掃させることが必要だと考えているのです。
「成り上がり者には……夢は見させぬ」

覚恕の館で行われた その覚恕と晴門の会話を、菊丸が聞き取っていました。
光秀は菊丸からそれを入手し、信長に届け出ます。
覚恕と晴門がつながっていれば将軍義昭による和睦の話が進まないのも道理で、
尾張が危ない今、和睦を結ばなければならないのは絶対条件なのです。

信長は、足元である尾張が危ないと、京を捨て美濃へ戻ると言い出しますが、
京を捨ててしまってはこれまでの苦労は水の泡だし、
坊主に負けて逃げ帰ったなどと笑いものになる、と光秀は止めに入ります。
「公方様にご動座願い、和睦の働きかけを」

幕府も力を示せない今、和睦するには帝の力を借りるしかない、と
信長は帝に書状を送ることにします。

領地を返し、京の商いをすべて認めたうえで、覚恕と和睦したいと
申し出てきたことを、正親町天皇は碁の相手の望月東庵に打ち明けます。
力を誇示したい覚恕は兄に頭を下げさせたいのだという正親町天皇は、
御所の不具合も直してくれた信長を助けることにします。

12月、正親町天皇は関白二条晴良を近江三井寺に向かわせ、
織田、朝倉、浅井、そして延暦寺に対し和睦を促す勅命を下します。
信長が延暦寺や朝倉勢の要求をのむという条件のもとで、
双方は陣を引き払います。

これで京は古き良きころの都にもどる、と大喜びの覚恕に
晴門は、甲斐の武田信玄を上洛させて織田の力を封じたい考えを伝えます。
すでに信玄とは書状のやり取りをしている覚恕は
「結構なことではないか」と賛成の意を表します。

つかの間の平和が訪れた二条城では、筒井順慶を招待しての能が催されていますが
松永久秀はこの宴が、長年の戦の相手であった順慶が将軍の養女を娶る
その前祝いの意味合いだったことを知って激昂します。
「わしを笑いものにするために招いたのか! わしは幕府を離れるぞ」

 

元亀2(1571)年の秋、信長は伊勢と近江の一向一揆軍と戦った後
ふたたび比叡山の麓に兵を結集させます。
朝倉・浅井の背後にいる比叡山の勢力を討つためでした。

織田軍は、比叡山こそ都をむしばむ諸悪の根源だとし、
比叡山にいる僧兵、雇われ兵、山に巣食う者、すべてを討ち果たせと下知します。
織田軍の急襲を受け、比叡山延暦寺は全山修羅場と化しました。
倒された者たちの中には、駒から芳仁丸を買った少年も含まれていました。
薬を売りに、たまたま比叡山に来ていたのです。

山の中には武器を持たない女や子どももいて、その処遇を光秀は尋ねますが
期限を設けて山を離れよとの催促を無視したのなら成敗せよと鬼の下知です。
納得がいかない光秀は、女と子どもは逃がせと周知徹底して攻撃します。


作:池端 俊策
脚本協力:岩本 真耶
音楽:ジョン・グラム
語り:市川 海老蔵
題字:中塚 翠涛
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[出演]
長谷川 博己 (明智十兵衛光秀)
染谷 将太 (織田信長)
門脇 麦 (駒)
岡村 隆史 (菊丸)
間宮 祥太朗 (明智左馬助)
徳重 聡 (藤田伝吾)
駿河 太郎 (筒井順慶)
安藤 政信 (柴田勝家)
金子 ノブアキ (佐久間信盛)
小藪 千豊 (二条晴良)
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ユースケ・サンタマリア (朝倉義景)
滝藤 賢一 (足利義昭)
春風亭 小朝 (覚恕)
榎木 孝明 (山崎吉家)

坂東 玉三郎 (正親町天皇)
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片岡 鶴太郎 (摂津晴門)
佐々木 蔵之介 (木下藤吉郎)
吉田 鋼太郎 (松永久秀)
堺 正章 (望月東庵)
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制作統括:落合 将・藤並 英樹
プロデューサー:中野 亮平
演出:一色 隆司

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