大河ドラマ麒麟がくる・(31)逃げよ信長 ~金ヶ崎決戦!~
天下静謐(せいひつ)のため、一層励むよう──。
世を平らかにするための戦をすることを認める勅命をいただいた織田信長は
永禄13(1570)年4月、諸国から集まった兵たちを従えて
朝倉義景の待ち受ける越前を目指します。
信長の呼びかけに応じて、三河の徳川家康をはじめ
摂津の池田勝正、大和の松永久秀などが集結。
琵琶湖西岸を北上し、若狭国佐柿の国吉城に入ります。
「我ら、これより越前へ向かう。朝倉を討つ!」
信長は若狭からさらに東に位置する越前敦賀へ3万の兵を向けます。
朝倉軍は手筒山城の寺田采女正(うねめのかみ)と金ヶ崎城の朝倉景恒(義景のいとこ)が
必死に防戦しますが、わずか2日で城を捨てて逃げ帰ります。
織田軍は朝倉領の敦賀郡全域を占領したのです。
勢いに乗る信長は、妹・お市の嫁ぎ先である小谷城の浅井長政に
軍勢の背後を守らせて南からの攻撃の備えとし、
それを踏まえて一気に一乗谷の義景を討つ策を立てます。
戦勝に沸く織田軍は、飲めや歌えやとバカ騒ぎをしていますが、
あまり酔えない光秀が庭に出てみると、徳川家康も庭に出ていました。
光秀と家康は、光秀が斎藤利政の命で尾張に潜入していたとき、
家康は人質として織田家にいたときからの縁です。
あの時の光秀から、待つこと、耐え忍ぶことの大切さを教えられましたが
戦のない世にするためには、まず戦わなければならないのかと
平和を望む武士ならではのジレンマに今の家康は陥っています。
平和が訪れるまで、どのぐらい戦をせねばならないのか。
そんな話をしていると、気持ちが落ち着かないと久秀も庭に出てきました。
手筒山城の戦いでは朝倉軍も本気で戦ったため、自軍の損失も大きかったのですが
この金ヶ崎城は戦う意欲なく、城に火もかけずに兵が引いていきました。
「解せぬ。朝倉め、一体何にを考えておるのだ?」
義景は、長政が動くのを待っていました。
長政は織田軍の背後で、南からの攻撃の防御として布陣していて
朝倉攻めには参陣しないとみられていました。
もともと朝倉と浅井は縁深い仲でありまして、新たな当主の長政がそれを断ち切って
信長の妹を嫁に迎えて同盟国を越前から美濃へ鞍替えしたのです。
隠居の身とはいえ、長政の父の浅井久政は未だに健在ですし、
朝倉との親戚づきあいを重視する者たちは小谷城内でもたくさんいます。
恩をあだで返した当主長政を、義景が見過ごすわけはありません。
「なればこそ…なればこそじゃ」
翌日の織田軍の軍議では、一気に一乗谷を攻めようという柴田勝家と
相手の出方を見てから戦うのが得策という久秀とが分かれ
なかなか方針が決まりません。
そんな時、伝吾が光秀に密書を持参しました。
「これは? …まさか」
光秀は軍議中の信長に目配せし、別室に呼び出して
長政が9,000の兵でここ敦賀へ向かってきている一件を伝えます。
しかし信長は、戦場から逃げるのを良しとしません。
一気に一乗谷へ攻め込むという信長に足蹴にされても、光秀は信長を留めます。
「織田信長は死んではならぬのです! お願い申し上げまする!」
思い悩んだ末、信長は逃げることを決断。
しんがりを明智に任せ、全軍撤退の命を下します。
信長は浅井の領地を避けながら若狭街道を退却。
光秀は、どうしてもと聞かない木下藤吉郎ととともに
追撃する朝倉浅井軍を必死に打ち払います。
峠で小休止しながら、光秀は明智左馬助に言います。
これまで戦をしない、戦をさせないようにしてきたが、
そんな思いが通るほどこの世は甘くない。
戦をしないという高い志を叶えるためには、うつつな世を動かせる大きな力が必要である。
戦のない世にするために、今は戦を重ねるしかないのだ、と。
二条城では、晴門が朝倉攻めの顛末を義昭に報告します。
信長は五箇条の覚書を示し、勝手に御内書を出さないこと、朝廷を敬えなど
晴門に言わせれば分をわきまえない振る舞いだと信長を猛批判。
義昭は、力なく返事しています。
天下の儀、上意を得るに及ばず──信長がよこした覚書では
義昭の許しを得ずとも何事も信長の裁量一つであることを認めよ、とあり、
無論、判は押しましたが、義昭としては従うつもりはありません。
「真の将軍となった暁には、戦をなくす。いずれ必ず」
京の妙覚寺に、ようやく光秀が戻ってきました。
途中で二手に分かれ、その後消息不明となっていた藤吉郎は
すでに妙覚寺に帰りつき、光秀の帰りを今か今かと待ち続けていました。
光秀は藤吉郎と手を取り、大喜びです。
しかし藤吉郎もしんがりを務めたことを誰一人として
信用してくれないと聞き、光秀の沸点は頂点に達します。
「木下殿は立派にしんがりを務められた! 誰のおかげでその酒が飲めるとお思いか!」
藤吉郎は泣きながら、光秀のその優しさに感服します。
信長ですが、ずっと寝所にこもりっきりです。
帰蝶や帝になんと報告すればいいやらと考え重ねて行き詰っているようです。
光秀は、信長は生きているから負けてはいないと言って
次がある、と信長を励まします。
作:河本 瑞貴
音楽:ジョン・グラム
語り:市川 海老蔵
題字:中塚 翠涛
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[出演]
長谷川 博己 (明智十兵衛光秀)
染谷 将太 (織田信長)
門脇 麦 (駒)
谷原 章介 (三淵藤英)
眞島 秀和 (細川藤孝)
間宮 祥太朗 (明智左馬助)
安藤 政信 (柴田勝家)
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風間 俊介 (徳川家康)
ユースケ・サンタマリア (朝倉義景)
滝藤 賢一 (足利義昭)
榎木 孝明 (山崎吉家)
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片岡 鶴太郎 (摂津晴門)
佐々木 蔵之介 (木下藤吉郎)
吉田 鋼太郎 (松永久秀)
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制作統括:落合 将・藤並 英樹
プロデューサー:中野 亮平
演出:一色 隆司
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