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2020年12月20日 (日)

大河ドラマ麒麟がくる・(37)信長公と蘭奢待(らんじゃたい)

甲斐の武田信玄が上洛を開始します。
将軍足利義昭は、もはや信長の命運は尽きたとし、明智光秀の必死の説得も聞かず
元亀4(1573)年3月、信長に対し討伐の兵を挙げます。

義昭の意を酌んだ信玄は、三方ヶ原の戦いで徳川織田連合軍を打ち破り
三河へ侵攻しましたが、野田城まで進んだところで突如、兵を引き返します。
今度こそ武田と織田の直接対決だと覚悟を決めていた民衆の会話は、
菊丸の耳に確実に届いていました。

宇治槙島城に陣を構えた義昭は、なかなか姿を現さない
朝倉や浅井、そして武田に対しいらだちを隠しきれませんでした。
そこに突然の攻撃が入り、木下藤吉郎が刀を向けて近づいてきました。
「織田信長様のご下命により、木下藤吉郎が召し捕らえる」

山城国・伏見城では、義昭とともに戦った三淵藤英も投降します。
藤英の弟である細川藤孝は、織田方に味方していたのです。
信長は将軍の命までは取らぬと寛大な姿勢で
義昭の身柄は宇治南の枇杷庄(びわのしょう)へ移されたのです。

藤英は、弟が信長に将軍家の内部情報を送っていたのだろうと
「いつから裏切り者になり果てた!」と激しく叱責し、光秀に止められますが、
ひとつの頂点に執着することなく、時の流れを見ていたら
義昭ではないな、と気づいただけだとつぶやきます。

そして信長が藤英に下した処分は、岩成友通が籠城する淀城を
藤英・藤孝の兄弟で力を合わせて攻め落とせ、とのことです。
しかし今の藤英には、裏切った弟と力を合わせて、ということはできないでしょう。
今日のところは、と藤孝は広間から下がっていきます。

武田の情報を持って、菊丸が京の隠れ家に現れます。
織田が朝倉浅井を討たねば、盟約を結んでいる徳川はゆくゆく危ういわけですが
織田がのこのこ出ていけないのは、背後に武田軍がいるからです。
その情報を光秀に渡すよう、菊丸は男に命じます。

菊丸はその足で望月東庵の屋敷に向かい、久々の再会を喜びます。
あいにく東庵はなかの針の施術中で、駒も不在らしく
仕方ないので屋敷内で待たせてもらうことにしました。

菊丸が遠江から来たと聞いて、家康は三方ヶ原で信玄に負けたとか
武田はそれからどうした!? と目をむいて追及する、そのなかという女性が
菊丸には印象深く映っていました。

枇杷庄には、義昭からもらった虫かごをを返しに駒が赴いていました。
信長討伐を諦められない義昭は、朝倉、浅井、武田に加えて
上杉や毛利らにまで範囲を広げて書状をしたためていました。
「返事が来るかは分からぬが、わしは書き続ける。将軍である限り」

「では、将軍をお辞めください」
このまま戦いを続けるつもりなのかと涙で訴える駒は
義昭に戦を止める気がないと知るや、最後の思いをぶつけます。

いがみ合う大名たちの仲介をし、和議を結ばせて戦を回避させたり、
武家がひとつにまとまるように働きかけもしてきましたが、
義昭の思うようには戦は止みません。
ここは、戦をなくすために戦をするしか方法がないのです。

「わしは駒を、欺いていたのかもしれぬな」
悲しげに微笑む義昭に、その気持ちが分かるだけに駒は大粒の涙を流します。

朝廷に改元を言上した信長は、朝廷が提示した5案を書き並べていました。
本来であれば改元の言上は将軍の役目ですが、
いまや将軍は不在なので、信長が代わってその役目を負ったわけです。
「やはりこれだな…天が正しい、「天正」。よし決まりだ!」

義昭のことは眼中になく、今は武田のことだけに集中している信長に
光秀は、信玄が死んだという噂を伝えます。

天正元(1573)年8月、浅井長政の重臣が織田方へ寝返ったという
知らせを受け、信長は急ぎ近江へ出陣します。
それを受けて朝倉義景も越前から近江へ出陣し、
信長は再び、朝倉浅井軍と対峙することになったのです。

奇襲により朝倉家家老の山崎吉家は討ち死に、
織田軍は義景の本拠である一乗谷へ突き進み、火の海にします。
いとこ朝倉景鏡(かげあきら)は義景に自刃を迫り、朝倉家はついに滅亡。
信長はそのまま小谷城も攻め落とし、浅井家も滅ぼしたのです。

240年続いた室町幕府は、ついに倒れます。

群雄が割拠した乱世は、信長による新時代を迎えようとしていました。
幕府がなくなり、朝倉浅井、武田がいなくなって
孤立無援を悟ったか、松永久秀が許しを請うてきました。
光秀の助言もあり、信長は多聞山城明け渡しを条件に許すことにしました。

信長はフッと笑顔を消し、蘭奢待という言葉を今井宗久に投げかけます。
蘭奢待とは天下一の名香、伽羅の香木といわれ、
大きなことを成し遂げた者だけしか見ることができないものです。
「今のわしは、蘭奢待(らんじゃたい)を拝見できると思うか?」

幕府を滅ぼし、将軍を追放し、どんな世の中を作るのか
考えていかなければならないわけで、頂点はまだまだ先にありそうなのですが
信長は今が頂点だと考えているのか、とふと不安になりますが
宗久は、いまの自分の値打ちを知りたいだけだろう、と笑います。

蘭奢待について帝はきっとお認めになる、と自信満々の信長ですが、
正親町天皇は、あんまり快くは思わなかったようです。
ただ、天下静謐(せいひつ)の働きは見事であり、その褒美の意味も込めて
天正2(1574)年3月28日、110年ぶりに東大寺正倉院から運び出されます。

蘭奢待は、3代足利義満、6代義教、8代義政がそれぞれ切り取り
その痕も鮮明に残っていましたが、その次に自分が来ると考えると
歴代将軍と肩を並べた、という解釈になるわけで、
さすがの信長もテンションが上がります。

切り取った蘭奢待が半分に割れ、2つになってしまいます。
「一つは帝に差し上げよう。きっとお喜びじゃ」

内裏に送られた蘭奢待を見て、三条西実澄は腰を抜かします。
朕が喜ぶとでも思うたのであろうか、と帝はたいそうご立腹です。
毛利輝元が関白に蘭奢待を所望しているという話がきているので
その欠片は毛利に贈ることにします。

毛利は信長とは敵対する間柄であると実澄が指摘しますが
正親町天皇は、表情をひとつ変えません。
「それは朕のあずかりしらぬこと。毛利に贈ってやれ」
帝の中で、信長への信頼の糸がプツンと切れた瞬間でもありました。

幕府滅亡後、信長に加勢して山城一乗寺、静原山城攻めなど
働いてもらっていた藤英を、急きょ近江坂本城預かりとしました。
藤英の居城を取り壊しにしたのです。


作:河本 瑞貴
音楽:ジョン・グラム
語り:市川 海老蔵
題字:中塚 翠涛
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[出演]
長谷川 博己 (明智十兵衛光秀)
染谷 将太 (織田信長)
門脇 麦 (駒)
岡村 隆史 (菊丸)
谷原 章介 (三淵藤英)
眞島 秀和 (細川藤孝)
安藤 政信 (柴田勝家)
金子 ノブアキ (佐久間信盛)
銀粉蝶 (なか)
手塚 とおる (朝倉景鏡)
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ユースケ・サンタマリア (朝倉義景)
滝藤 賢一 (足利義昭)
石橋 蓮司 (三条西実澄)
石橋 凌 (武田信玄)
榎木 孝明 (山崎吉家)

坂東 玉三郎 (正親町天皇)
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陣内 孝則 (今井宗久)
佐々木 蔵之介 (木下藤吉郎)
堺 正章 (望月東庵)
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制作統括:落合 将・藤並 英樹
プロデューサー:中野 亮平
演出:深川 貴志

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