大河ドラマ麒麟がくる・(40)松永久秀の平蜘蛛(ひらぐも)
天正5(1577)年 夏、本願寺は毛利や上杉などと手を結び、反信長勢の中心でした。
信長と本願寺との戦いは7年あまりにもおよび、
この戦の最中、参戦していた松永久秀が天王寺砦の陣から
突如として逃亡を図り、織田家中に衝撃を与えます。
明智光秀は、前年の秋に最愛の妻・熙子を亡くし、
思い出したように小さな入れ物を耳元で振っています。
その入れ物には、熙子が亡くなった時に皆には内緒で、
熙子の爪の切れ端を入れていて、振るとかわいらしい音を立てるのだそうです。
たまが薬の勉強をしたいと言うので、本気かと疑いつつも
駒に任せていたら、それはそれはみるみる力をつけているそうです。
そして駒は、思い出したように光秀に密書を手渡します。
伊呂波太夫からの密書です。
伊呂波太夫一座が練習をしている寺に赴くと、三条西実澄がいました。
「お上が、一度そなたと話をしてみたいと仰せになっておる」
光秀はとても驚いていますが、正親町天皇は信長の行く末を案じているのです。
ではまた、と実澄はすたすたと帰って行きます。
実は伊呂波太夫に光秀に会いたいと言ったのは実澄ではありませんで
「よっ、来たな」と中で待っていたのは、松永久秀でした。
座れよ、と促される光秀ですが、久秀の顔を見るといつにもまして不機嫌です。
盃に注がれた酒を一気に飲み干す光秀は、羽柴秀吉が柴田勝家と大喧嘩し
加賀の戦場から近江へ帰ってきた大騒動の話を切り出します。
理由はどうあれ、戦の最中に陣を抜け出せば死罪であり、
信長も秀吉に切腹を命じるなどとてもご立腹のご様子でした。
久秀も勝手に陣を離れましたが、久秀には秀吉の気持ちがよく分かります。
家柄筋目にこだわらず、働き者を取り立てる評判の信長ですが、
実際は、古い家柄で筋目がいい者に支配を任せる傾向にあります。
時期守護を目論む久秀は、筒井順慶に決めてタガが外れました。
「もうよい!! わしは寝返る!」
本願寺側から、久秀に大和一国を任せると言われて寝返るのです。
久秀は、箱の中から天下一の茶道具・平蜘蛛を取り出します。
信長が所望しているらしいのですが、意地でも渡すつもりはありません。
その秋、久秀は大和の信貴山城で挙兵します。
本願寺や上杉謙信らに呼応して、反信長の戦いに加わったのです。
これに対して信長は、嫡男信忠を総大将とする大軍を大和へ送り込みます。
信長は佐久間信盛に密命を与えていました。
この戦で織田方が勝った場合、久秀が許しを請えば許すが、
久秀が所有する茶道具をすべて無傷で引き渡すことを条件にせよ、と。
条件を呑めなければ、裏切りの見せしめにはりつけにして殺せ、というものです。
10月10日、信貴山城攻めが始まりました。
援軍もなく窮地に陥った久秀は、茶道具すべてに油を浴びせ、火をかけます。
信長に茶道具を渡してなるものかという、久秀の意地でした。
そして雄叫びをあげながら腹かっさばいて果てます。
安土城から呼び出しを受けた光秀は、帰蝶と久々の対面です。
最近の信長は心理不安定のようで、急に泣き出すありさまです。
久秀を悼んでいるのか、茶名器が失われたことを嘆いているのか、
帰蝶には信長の気持ちが理解できなくて困ってしまっています。
「少々疲れました。私はそろそろこの山を下りたいと思います」
帰蝶は美濃の鷺山へ移り住むことを光秀に伝え、去っていきます。
久秀所有の平蜘蛛の茶釜ですが、残骸のどこにも見当たらないのです。
であれば久秀が生前、誰かに預けた可能性を疑っているのですが、
久秀と親しかった光秀は、その場所を知っているだろうと信長は尋ねます。
実は信長は上杉方とひそかに通じているという知らせを受けて
久秀を見張らせていたのですが、下京の伊呂波太夫一座の小屋で
光秀を含む親しい者たちと会っているという情報は掴んでいます。
その上での尋問です。
光秀は、確かにその小屋に赴いて久秀と会ったことは認め、
信長から離れるな、上杉とつながるなと説得したことは言いますが、
いったん伊呂波太夫に預けて置き、久秀が勝ったら返却、
久秀が負けたら光秀に預ける、という久秀との約束のことは言いません。
ふん、それは残念だな、と信長の表情はサッと冷めます。
そしてもうひとつの要件──次女たまの嫁ぎ先の件ですが、
細川藤孝の嫡男・細川忠興に嫁がせよ、と命じて光秀を帰します。
「十兵衛が……このわしに嘘をつきおった……十兵衛が!」
大広間のふすまが開き、そこには平伏する羽柴秀吉がいました。
秀吉が、光秀を売ったのです。
信長の中のランキングがあるとすれば、光秀が首位から陥落した瞬間でした。
光秀が坂本城に戻ると、平蜘蛛の茶釜を持って伊呂波太夫が待っていました。
茶釜の場所を知っていると言いかけたものの、なぜか言えませんでした。
「罠だ……これは松永久秀の罠じゃ!」
気が狂ったように笑いだします。
久秀は伊呂波太夫に、平蜘蛛の茶釜を持つ者は
いかなる折も誇りを失わぬ者、志高き者、心美しき者である、と説き
自分(=久秀)は、その覚悟をどこかに置き忘れてしまったと言ったそうです。
光秀は帰る伊呂波太夫を呼び止め、丹波の戦が終わったら
正親町天皇に拝謁したいと伝えます。
この世を、信長を、帝がどうご覧になっているのかをお尋ねしたいわけです。
伊呂波太夫は、実澄に伝えることを約束して城を後にします。
作:池端 俊策
脚本協力:岩本 真耶
音楽:ジョン・グラム
語り:市川 海老蔵
題字:中塚 翠涛
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[出演]
長谷川 博己 (明智十兵衛光秀)
染谷 将太 (織田信長)
門脇 麦 (駒)
木村 文乃 (熙子)
眞島 秀和 (細川藤孝)
芦田 愛菜 (たま)
徳重 聡 (藤田伝吾)
安藤 政信 (柴田勝家)
金子 ノブアキ (佐久間信盛)
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川口 春奈 (帰蝶)
石橋 蓮司 (三条西実澄)
尾野 真千子 (伊呂波太夫)
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佐々木 蔵之介 (羽柴秀吉)
吉田 鋼太郎 (松永久秀)
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制作統括:落合 将・藤並 英樹
プロデューサー:中野 亮平
演出:大原 拓
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