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2021年2月14日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・[新] (01)栄一、目覚める

──こんばんは。徳川家康です。

今日はまず、日本の歴史です。
大和政権が始まり、大化の改新そして平安文化が栄えたころ、
地方では領地を巡って争いが増え、戦いを職業とする武士が誕生します。
我が徳川のルーツだ。

源平・北条・足利の世・応仁の乱と戦いは激しくなり、
私が生まれたころには鉄砲も伝来。
私も使いましたよ、信長様に勧められて……。
そしてそんな戦ばかりの世を、どうにか統一したのがこの私です。

私は征夷大将軍となり、徳川の世、今でいう江戸幕府を作りました。
260年も続いた、ここからここまでずーっとです。
島原の乱の後は戦いもなく、新しい文化も育ち
悪くない時代だったと私は思う。

よく「明治維新で徳川は倒され、近代日本が生まれた」なんて言われますが
実はそう単純なものじゃあない。
古くなった時代を閉じ、今につながる日本を拓(ひら)いた
この人物こそ、我が徳川の家臣であったとご存じだったかな──


文久4(1864)年・京。
ふたりの武士が草むらの陰からある方向を見つめています。
「おおっ、来たど!」とふたりの目の色が変わり、その視線の先には
馬に乗って駈けてくる殿様を向いています。

「渋沢栄一でございます!」と両手を広げて進路をふさごうとしますが、
騎馬の一群は一向に止まる気配がありません。
これ以上は危険と判断したのか、栄一の連れが栄一を引っ張って
進路を開けたのですが、結局一群は気にすることなく通り過ぎてしまいます。

栄一は諦めきれず、大声で名乗りながら一群を走って追いかけます。
「今すでに徳川のお命は尽きてございます!」と叫ぶと
殿様らしき人物が栄一のほうへ引き返してくるではありませんか。
栄一も、栄一のいとこ・喜作も、青ざめた顔で平伏します。

殿様らしき人物は、徳川慶喜。
水戸藩徳川斉昭の子で非常に評判高い人物なのであります。
もし天下に大事が起こった時、慶喜が役目を果たしたいのであれば、
自分を取り立ててほしい、と慶喜の前で願い出ます。

栄一は、言いたいことはまだまだたくさんあるそうで、
家臣の平岡円四郎はプッと噴き出してしまいますが、慶喜はちょっと不愉快です。
「これ以上、馬の邪魔をされては困る。この者たちを明日、屋敷へ呼べ」
栄一と慶喜のこの出会いから、日本は近代に向けて動き出します。


作:大森 美香

音楽:佐藤 直紀

テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:尾高 忠明
題字:杉本 博司
衣装デザイン:黒澤 和子
語り:守本 奈実 アナウンサー

タイトルバック映像:柿本 ケンサク
         :曽根 宏暢
時代考証:井上 潤
    :齋藤 洋一
    :門松 秀樹
国旗考証:吹浦 忠正
資料提供:永井 博
    :大庭 裕介

振付:小野寺 修二
アクション監修:諸鍛冶 裕太
所作指導:橘 芳慧
芸能指導:友吉 鶴心
馬術指導:田中 光法

養蚕指導:横山 岳
藍作指導:松由 拓大
藍染指導:根岸 誠一
農業指導:君島 佳弘
わら細工指導:中島 安啓
剣術指導:楠見 彰太郎
砲術指導:佐山 二郎
書道指導:金敷 駸房

医事指導:冨田 泰彦
料理指導:柳原 尚之
武州ことば指導:新井 小枝子
水戸ことば指導:中澤 敦子
江戸ことば指導:柳亭 左龍
信州ことば指導:唐木 ちえみ
オランダ語指導:マルガリーテ
太鼓指導:山部 泰嗣

 

[出演]

吉沢 亮 (渋沢栄一)

高良 健吾 (渋沢喜作)

田辺 誠一 (尾高新五郎)

大谷 亮平 (阿部正弘)

渡辺 大知 (徳川家祥)
峯村 リエ (歌橋)

手塚 理美 (尾高やへ)
朝加 真由美 (渋沢まさ)

原 日出子 (吉子)
酒向 芳 (利根吉春)

 

草彅 剛 (徳川慶喜)

美村 里江 (徳信院)

津田 寛治 (武田耕雲斎)

 

小林 優仁 (渋沢栄一(少年))
笠松 基生 (七郎麻呂)

石澤 柊斗 (渋沢喜作(少年))
岩﨑 愛子 (尾高千代(少女))
須東 煌世 (尾高長七郎(少年))
小田 菜乃葉 (渋沢なか(少女))

小久保 寿人 (朔兵衛)
永野 宗典 (権兵衛)
笠松 伴助 (三太)
小手山 雅 (利吉)
所 広之 (吉五郎)

福井 博章 (村田文右衛門)
火野 蜂三 (舟田兵衛門)
三輪 和音 (おうめ)
笠井 里美 (おたか)
梶原 みなみ (おはる)

浅野 令子
小野塚 老
松村 明
小田 純也
佐々木 征史
松枝 裕香
羽野 敦子
平野 絢規

カンパニーデラシネラ
──────────
宝映テレビプロダクション
NEWSエンターテインメント
麗タレントプロモーション
テアトルアカデミー
クロキプロ
キャンパスシネマ
NHK東京児童劇団
スペースクラフト
セントラル
ストームライダー
劇団いろは
オフィスミナミカゼ
クラージュ
オフィス海風
劇団ひまわり
劇団東俳

フジアクターズシネマ
リバティー
アールジュー
古賀プロダクション
舞夢プロ
JAE
キャメルアーツ
座☆風流堂
オープンロード
湘南動物プロダクション

撮影協力:埼玉県
    :群馬県 安中市
    :茨城県 水戸市
    :茨城県 つくばみらい市
    :福島県 南会津町
    :神奈川県 相模原市
    :南房総ロケーションサービス
    :東京農工大学
    :大日本蚕糸会

 

北大路 欣也 (徳川家康)

竹中 直人 (徳川斉昭)

吉 幾三 (徳川家慶)

渡辺 いっけい (藤田東湖)

平泉 成 (渋沢宗助)

長谷川 公彦 (中根長十郎)
山中 敦史 (井上甚三郎)

荒谷 清水 (紺屋)
石田 尚巳 (松平頼胤)
中松 俊哉 (松平頼誠)
林田 直樹 (松平頼縄)

和久井 映見 (渋沢ゑい)

玉木 宏 (高島秋帆)

堤 真一 (平岡円四郎)

小林 薫 (渋沢市郎右衛門)

 

制作統括:菓子 浩
    :福岡 利武

プロデューサー:板垣 麻衣子
       :藤原 敬久
美術:有本 弘
技術:加藤 貴成
音響効果:平田 悠介

撮影:山口 卓夫
照明:阿刀田 琢
音声:吉野 桂太
映像技術:原 幸介
VFX:松永 孝治
CG:髙松 幸広
助監督:柿田 裕左
制作担当:宮田 亮
取材:加納 ひろみ

編集:大庭 弘之
記録:森 由布子
美術進行:佐藤 綾子
装置:木ノ島 勲
装飾:酒井 亨
衣装:竹林 正人
メイク:田畑 千奈味
かつら:宇津木 恵
特殊メイク:江川 悦子

 

演出:黒崎 博


天保15(1844)年・武蔵国──。
父・渋沢市郎右衛門と母・渋沢ゑいが岡部の町に所用で出かけると分かると
「置いてけぼりはやだ! 俺も行ぐッ!!」
と大声で喚き散らすのが渋沢栄一少年、この時わずか4歳。

ただ、栄一が町に出たところで役に立つことは何もないわけで、
晩には帰ってきますから、とゑいも栄一をなだめすかしています。
それでもヤダヤダと聞かない栄一を、市郎右衛門は籠に突っ込み
もごもごしているうちに出掛けて行ってしまいます。

栄一はしばらくして、姿をくらまします。

夕方、市郎右衛門やゑいが帰って来ても栄一は帰ってこず、
渋沢家は“またか”と大騒ぎ。
どうして見張っていなかったんだ! と蚕の作男や女中たちを叱ったところで
総出で手分けして探すしか方法はありません。

捜索は夜通し行われ、屋敷の前に広がる畑の一列一列もくまなく探しますが
ついには見つからず、姉のなかは責任を感じて号泣する有り様です。
あンたのせいじゃないよ! とゑいはなかを抱きしめます。

夜も明けたころ、万策尽きて座り込んだゑいは、
奥からうめき声が聞こえてきたのに気づきます。
行って見ると、藁から足が一本だけ出ています。
ゑいは栄一を抱きしめ、無事であったことに安堵します。

みんながどんだけ探し回ったと思っとるんだ! と市郎右衛門は叱りますが
自分を連れて行かず置いていくからいけないんだ、と強情を張ります。
雷を落とした市郎右衛門は栄一を座敷に座らせ、お説教です。

武蔵国の北部・血洗島。
土の質が稲作に向かないため、畑で麦や野菜を育てたり、
蚕から生糸を取る養蚕をしたりして暮らしていました。

また、この地の大事な収入源となっていたのが衣類を青い色に染める藍作りです。
藍作りは、藍の葉を育てるだけでなく、それを加工して
藍玉と呼ばれる染料にするまでとても手間のかかる仕事でした。

美しい色を出す藍は人気があり、値も高く売れるので、
この辺りの領主である岡部藩を支えるほどに儲けるようになり、
市郎右衛門は農民として、また藍玉作りの職人として、それを売る商人として、
年中忙しく暮らしていたのです。

そして栄一は……人一倍わんぱくで、人一倍おしゃべりでした。
よくしゃべるところはお前に似たんだぞ、と市郎右衛門言えば
さすがにムッと来たのか、ゑいは口をとがらせて市郎右衛門につぶやきます。
「剛情っぱりなところは誰かさんにそっくりだいねぇ」

この緑豊かな血洗島から東に150km離れた、常陸国水戸の城外 千波ヶ原では
藩主徳川斉昭による軍事訓練が行われていました。
このころ、日本に国交を求めて多くの外国船が訪れるようになっていて
斉昭は、いち早く日本を外国から守ろうと立ち上がったのです。
大砲をいくつも発射させ、兵士たちに槍を持たせての訓練を主導します。

軍事訓練の中でも、群衆たちの目をひと際引いたのが追い鳥狩で
放たれた雉を見事に射抜いた七郎麻呂(後の徳川慶喜)でした。
斉昭は七郎麻呂には人の上に立てる器量があると見込み、
その独特な教育方法で七郎麻呂を育てていきます。

しかし、幕府に呼び出された斉昭は、軍事訓練と称して
大砲を連発して世の中を騒がせたとして、隠居謹慎を命じられます。
幕府内でも斉昭の考え方は過激と警戒されていたのです。
日本のことを第一に考えているのに、と斉昭はとても悔しがります。

栄一がチャンバラでよく遊ぶ尾高長七郎の家は、渋沢家の親戚です。
ある時、長七郎と栄一、喜作、長七郎の妹である千代と川で遊んでいると
千代の櫛が落ちて川に流されて行ってしまいました。
死んだ父が買ってくれた大切な櫛と聞いて、栄一は川下へ走ります。

「俺はお千代が大事だ。俺が年も上だから、きっとお千代を守ってやんべ!」
そう言ってさらに捜索する栄一を頼もしく思う千代ですが、
その先には、髪は乱れ 薄汚れた格好の武士が険しい表情をして立っていて、
黙って近づいてくると、千代に黙って櫛を差し出します。

そのうち、役人たちが数名やってきて、
たちまちのうちにその男を縄で縛り、連行していってしまいました。
ついさっき、畑でちゃんばらをしていた時にお代官が連行していた籠の中の鬼──。
栄一はその男に興味を持ちます。

このころの江戸幕府は、外国の脅威を恐れていただけでなく
幕府内部にも大きな心配を抱えていました。
第十二代将軍・徳川家慶の息子である家祥に子どもができず、このままでは
将軍を継ぐ者がいなくなってしまう可能性があったのです。

一橋家は、将軍家にお世継ぎがいない場合に養子を出す
実質的に将軍に最も近い家柄ですが、跡継ぎがいないままに
当主慶壽が亡くなるなど、一橋家の存続も危ぶまれていました。
老中阿部正弘は、一橋家の世継ぎに水戸の七郎麻呂に白羽の矢を立てたのです。

斉昭は、英才な七郎麻呂だけは手元に置きたいと考えていたのですが、
正弘の推挙もあって、一橋家への養子に七郎麻呂を指名したのです。
正弘の前では不機嫌面の斉昭でしたが、内心はとても喜んでいます。
「わが息子は、水戸から初めて出る征夷大将軍になれるやもしれぬぞ!」

長七郎や栄一は、あの鬼のような罪人が気になって仕方ありません。
長七郎と喜作と栄一は満月の夜に待ち合わせ、岡部の陣屋へ向かいます。
しかし途中で番犬に吠えられ、役人たちが追ってきます。
身の小ささで役人を交わした栄一ですが、はぐれてしまいました。

遠くから聞こえる怪しげな言葉につられて栄一が進んでいくと、
籠の中の鬼が座したままよく分からない言葉を発していました。
鬼──秋帆はフッとため息をついて、この国の行く末を心配します。
「この国はどうなるのだろうなぁ」

長崎で生まれた高島秋帆は出島で砲術を学び、シーボルトや
スチュルレルからナポレオンの話を聞き、ゲベール銃やモルチール砲を取り寄せ
肥後や薩摩、江戸でも砲術を学んだ砲術家です。
幕府にも重用されますが、妬みから投獄されて武蔵国岡部藩で幽閉されていたのです。

このままでは日本は終わる、とつぶやく秋帆に
栄一は、どうすれば日本が助けられるのか食い下がります。
皆がそれぞれ自分の胸に聞き動くしかないのだ、と
秋帆は力なくつぶやきます。

「あンたが嬉しいだけじゃなくて、みんなが嬉しいのが一番なんだで」
ふと母の教えが頭の中を流れていきます。
「上(かみ)に立つ者は下(しも)の者への責任がある。大事なものを守る務めだ」
父の教えも脳裏をかすめていきます。

俺が守ってやんべ! この国を!! そう叫んで栄一は牢を後にします。

これからしばらく後、一橋家へ七郎麻呂が入り、
徳川慶壽の未亡人・徳信院や、将軍家慶と対面します。
一橋家に入った七郎麻呂は、家慶から「慶」の字をもらって
「慶喜」となりました。

時は江戸、1847年。今からたった174年前。
栄一の物語は、まだまだ始まったばかりです!

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