大河ドラマ青天を衝け・(07)青天の栄一
江戸へ武者修行へと旅立つ尾関長七郎の送別会が開かれました。
長兄・尾高惇忠は そんな弟に、はなむけの詩を贈ります。
──こんばんは。徳川家康です。
いいですねぇ。
私の若いころ、彼らのように楽しい宴は考えられなかった。
生まれてすぐ人質となり、それからずっと戦い続けていたからです。
そうして私が作り上げた太平の世では、文化が一気に発展した。
特にブームになったのが、今、惇忠が読もうとしている
漢語によるポエム、漢詩です。
武士や学者はもちろん、栄一たちインテリ農民も漢詩を詠みました。
今現在、理解できる方は少ないと思うが、
江戸人の心を知るうえでどうしても披露したいので、今日は特別に
漢詩を今の言葉に訳した形でお送りしたいと思います。
では、どうぞ──。
丈夫有辨菽麦知 豈無英志軽遠離
男として豆と麦の違いの分かるものなら、
誰でも優れた志士が遠くへ旅することを引き止めはしない。
弟よ、旅に出ろ。
嗚呼自古丈夫有所憾 忠孝如何公与私 今吾与爾在内外 丈夫心事無所覊
孝行も案ずるには及ばぬ、家は俺が守る。
顕親揚名爾所職 節用奉養吾為之
名を高め、世に知れ渡る偉大なる仕事をするのはお前の役目だ。
つつましく暮らし、母や家を養うのは俺が引き受けた。
行矣勉哉文也武 此行三旬幾奔馳 討論名士可有得 吾亦刮目待帰期
行け! そして励め! 学問に、武道に。
この旅を奔走せよ。
名のある人士と討論せよ。
この兄もまた、目を見開いてお前の帰りを待っていよう。
酒も入ってか、ついつい床で寝てしまった渋沢栄一ですが、
ふと目を覚ますと惇忠が起きていました。
栄一は、ふと惇忠に尋ねてみます。
「本当は、兄ぃが行ぎてんじゃねんか? 江戸に」
惇忠はフッと微笑み、そりゃ行ぎてぇに、と答えます。
しかし自分まで不在となっては尾高家を守る人間がいなくなるし、
惇忠には村のお役目があるので、
これでいいのだ、と納得するしかありません。
江戸に行きたい──その思いは、
長七郎の送別会に参加した者はみな
思っていたことなのかもしれません。
翌朝、長七郎は栄一たちの期待を一身に受け、
江戸へと旅立っていきました。
惇忠はそれよりも、渋沢喜作が長七郎に勝負を挑んだ話を聞いて
千代の父親代わりはこの俺だ、と家に招き入れますが、
当の本人である千代は何の話なのか分かっていません。
何の話だんべか? と栄一に聞いても、求婚話だなんて言えるわけもありません。
最近のコメント