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2021年3月14日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(05)栄一、揺れる

岡部藩から命じられた御用金500両について、命じられるままに
藍玉づくりでようやく儲けた500両を陣屋に持参する渋沢栄一ですが、
大変な思いをして作った貯金を偉そうな役人に吸い取られてしまうのは
どうしても納得ができません。

「承服できんぞ! ばかばかしい!」
陣屋からの帰り道、雨に打たれながら涙ながらに悔しがります。

雨の中、木の下で読書をしていた尾高惇忠に話を聞いてもらうと
「悲憤慷慨(ひふんこうがい=正義の気持ちを持ち世の不正に憤り、嘆く)」
という言葉を教えてくれました。実はこの世には
栄一のように悲憤慷慨している者が多くいるらしいのです。

 

──徳川家康です。今日も出てきましたよ。
彼らが「悲憤慷慨」しているこの世とは、私の作った江戸幕府のことですからね。
我が徳川の世は、わずか7%ほどの武士がその他の人々を支配していました。

むかし、江戸時代の身分制度は「士農工商」と習った方もいると思います。
もう教科書にその言葉はありません。
私は武士の世を長く続けるために、ここに厳重に線を引いた。
「士/農工商」 支配する側の武士か、される側のその他か。

しかしこのころになって、圧倒的に人数の多いこちら側まで
徳川の世を疑い始めました。
惇忠や栄一だけでなく、日本各地にそういう人物が現れ
厳しく引いたはずの線が揺らぎ始めます──。

 

この本を読んでみろ、と惇忠に本を手渡された栄一は、
夜通しでその本を読み続けます。
清兵が英兵に殺される声や音が響きわたり、日本もいずれ
異国に責められて清のようになるかもしれない、と危機感を募らせます。


今朝まで元気いっぱいだった姉の渋沢なかの様子が少し変です。
なかに縁談話がありまして、お相手は杉沢村の大きな商家のせがれ。
とても優しくていい男と市郎右衛門とゑいは言うのですが、
渋沢宗助とまさは、取り憑かれる筋の家らしいといい顔をしません。

桑の実を取っては食べ、じっと水面に見入ったり石ころを投げ込んだり
「なかが取り憑かれた」と噂が立つには十分の行動をしだします。
取り憑かれるなんて、と笑っていたゑいも信じざるを得ず
その後、この話は破談になりました。

 

江戸でも黒船の来航により多くの疫病が流行し、
さまざまな迷信がはやるようになりました。
悪疫退散として疫病除けの牡丹餅が売られ、また各家には、
アマビエの絵(令和時代、ふたたび脚光を浴びる)も張り出してあります。

流言飛語の類が人心を惑わせ、時世も悪しく、夷狄の毒も深くなったと
水戸の徳川斉昭は一橋慶喜に書状を送ります。
父がやりすぎぬとよいが、と慶喜は少しだけ気がかりです。
こういった話には、斉昭は烈火のごとく怒って前後の見境がなくなりがちなのです。

斉昭は、アメリカに続いてイギリス、ロシアとも和親条約を結ぼうとする
老中の阿部正弘に対し、いろいろな言葉を投げつけて批判します。
今は天皇を中心に日本の精神を統一することこそが大事であり、
その前に国を開けば清のようになると警鐘を鳴らします。

しかし阿部老中も負けてはいません。
隷属国にならないように、幕府要職にある自分たちが日々骨を折って
苦労していることがどうしてわかってもらえないのか! と言葉を荒げ、
仮に異国から戦端が切られたとしても、現状の防備で日本が無事に済むのかと
こうなれば売り言葉に買い言葉で収拾がつきません。

下田で大地震が発生してロシア船が津波で沈没したと急報が入れば
斉昭は「快なり!」と喜び、ロシア人を皆殺しにせよとわめきだします。
慌てて止めに入る藤田東湖の機転で、ひとまず場は落ち着きますが
体調が思わしくない阿部老中に「寝てしまえ」と背中から暴言を吐き続けます。

「かけがえのないものを天災で失うのは耐えがたいこと、
夷狄を打ち払うより日本の誇りを守るかが肝要」と、斉昭を鎮める東湖ですが
斉昭はまるで聞く耳を持たず、座を蹴って怒って帰って行ってしまいます。

その間 下田の海岸では、転覆した船から救出したロシアの海兵たちが救助され
炊き出しの米が不足と聞けば急いで調達に走り回っています。
これ以上、夷狄に…と苦虫を嚙み潰したような兵士もいる中、
川路聖謨は、こんな時に異国も何もあるか! と救助を続けます。

 

疲れた表情をして帰宅した東湖を待っていたのは慶喜でした。
夷狄について詳しく知りたくて、東湖邸を訪ねてきたのです。
日本の数倍の大きな武器を積んでいる夷狄の船に対して
元来武芸を好む慶喜はどう対策すればいいのか、といったところです。

夷狄嫌いの斉昭の機嫌を損ねなければいいが、とこぼしますが、
斉昭は人一倍「日本を守りたい」という気持ちが強いだけで
それは阿部老中も十分に理解してくれているところでしょう。
仲たがいがあってもまた頼ってくると言われて、慶喜はほっとした表情です。

 

市郎右衛門に命じられてひたすらなかの後をつける栄一。
尾高長七郎に半ば馬鹿にされながらも、ついてこないでと拒否されようが
ただひたすらについていき、そばで見守っています。
そして途中で二人の様子に気づいた尾高千代が栄一に合流しました。

栄一も市郎右衛門もなかが取り憑かれたとは考えていません。
どうすれば姉の気持ちを和らげることができるかを考えていました。
千代は、縁談相手のことが好きだったのでは? と聞いてみます。
一度や二度会っただけでも人柄に惹かれるような、淡い恋です。

確かに縁談が決まってからのなかはたちまち美しくなっていき
縁談とはそんなに心華やぐものかと千代はあこがれもしていました。
しかしなかの情緒不安定は、伯父母が反対し出した時からです。

栄一は、その因果関係には全く気付かず、あんな鬼のような姉が
無力になってしまうとは、恋心はおっかないものだとつぶやいて
千代をがっかりさせてしまいます。
「強く見えるものほど弱きものです。人は一面ではございません」

 

気晴らしになればいいと、市郎右衛門の藍玉の商いに
なかを同行させることにしました。
しかし問題があったのはその直後です。
叔母のまさが、お祓いのために修験者たちを渋沢家に招き入れたのです。

この家には金神と井戸の神が祟っていると伝えられ、
無縁仏のために祠を作るように言われますが、
祠に必要だからと、無縁仏はいつ出たのかと栄一は尋ねます。

およそ60年前とお告げの女は言うのですが、その元号が答えられず
栄一はでたらめと見抜いてしまいます。
修験者を捕まえて、キツネの仕業だと言葉を引き出せば、
今や発狂寸前のまさには、野キツネのためには祠はいらねえな、と口封じです。

実は途中から、市郎右衛門となかは帰ってきていたのですが、
あまりに本質を突いた栄一の言葉に、つい市郎右衛門は笑ってしまいます。
「栄一のおしゃべりも…たまには役にたつ」
栄一を見るなかの目が、少し和らいだような気がしました。

その年の秋、突如として大地震が襲います。
1855年、安政の江戸地震です。
将軍徳川家定も、一橋慶喜も徳川斉昭も無事でしたが、
斉昭が高く評価していた東湖が、建物の下敷きになって命を落とします。

かけがえのないものを天災で失うのは耐えがたいこと、
東湖が生前そう言っていた言葉が、斉昭の脳裏をかけめぐります。
「わしは…掛け替えのなき友を…亡くしてしまった…東湖…」


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢栄一)
高良 健吾 (渋沢喜作)
橋本 愛 (尾高千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
満島 真之介 (尾高長七郎)
村川 絵梨 (渋沢なか)
渡辺 大知 (徳川家定)

草彅 剛 (徳川慶喜)
大谷 亮平 (阿部正弘)
要 潤 (松平慶永)
峯村 リエ (歌橋)
──────────
北大路 欣也 (徳川家康)
竹中 直人 (徳川斉昭)
岸谷 五朗 (井伊直弼)
渡辺 いっけい (藤田東湖)
津田 寛治 (武田耕雲斎)
佐戸井 けん太 (堀田正睦)
平泉 成 (渋沢宗助)
朝加 真由美 (渋沢まさ)
和久井 映見 (渋沢ゑい)
平田 満 (川路聖謨)
堤 真一 (平岡円四郎)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・藤原 敬久
演出:村橋 直樹

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