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2021年3月21日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(06)栄一、胸騒ぎ

──こんばんは。徳川家康です。

今日は私の息子を紹介させてください。
十一男の徳川頼房です。
私が61の時の子です。
ふふふ……やんちゃでね、7歳で常陸国・水戸25万石を与えました。

水戸家は皇室を大事にした。
毎年、領地でとれる一番鮭(いちばんじゃけ)は必ず朝廷に献上し、
親密な関係を築いていた。

頼房の息子・光圀も
「主君は京の天子様である。徳川一門こぞって敬うべし」
と常々話していました。
そう、彼は「水戸黄門」のモデルとなった人物だ。

この尊王の思想は全国に広がっていきました。
多くの武士に読まれたこの水戸学の本『常陸帯』にも
「孝を東照公」つまり私に尽くし、
「忠を天祖」つまり天皇に尽くすとあります。

書いたのは、安政の大地震(1855年)で亡くなった水戸藩の学者・藤田東湖だ。
藤田東湖は、9代目水戸藩主・斉昭の精神的な支えであり、
息子の慶喜も、東湖から多くを学びました。
ただ、この地震でわが徳川は大切なものを失ってしまった──。

 

藤田東湖が亡くなったといううわさは、尾高惇忠たちのもとにも届きます。
「国の命運が決まるというこんな時に!」と尾高長七郎はうろたえ、
惇忠は、一人一人が志を持って立ち向かわねばと長七郎を励まします。

渋沢喜作は、こんな自分にも将来何かができるかもと思い始め、
渋沢栄一もそれに同調します。
百姓だからと、百姓のまま生を終えるつもりはさらさらありません。
とはいいながら、栄一も喜作も剣術は全くであります。

心でどれだけ勇んだところで、身体はボロボロなわけです。
手伝いに来ていた尾高千代は、「天を仰ぎ地の理(ことわり)を知れ」と
どんな不利な足場でも剣を繰り出す、それができねば死ぬぞ、と
惇忠たちが話していた言葉を栄一に伝えます。

千代は、栄一がまだまだだと言いたかったのではありません。
「千代はそんな栄一さんをお慕い申しておるんだに!」と
突然の告白をしてしまい、顔を真っ赤にして屋敷を飛び出します。
あまりの急展開に、栄一は心がついていかず、ひどく胸騒ぎしています。

藤田東湖を亡くして以降、徳川斉昭はボーッと過ごす日も多いのですが
大地震の影響で日延べされていた、一橋慶喜と美賀姫の結納が
屋敷の普請が済み次第となり、歩みを止めるわけにはいきません。
お前様に気落ちは似合いませぬ、と正室の吉子も笑顔で励まします。

その慶喜のお世話係となって久しい平岡円四郎ですが、
はじめに比べればかなり上達して慶喜に褒められます。
ただ、根っからの江戸っ子なので、思ったことはそのまま口に出すのが玉にキズ。
それがいいように転ぶか悪いように転ぶかは慶喜次第──。

慶喜が、所詮自分は徳川の飾り物だと皮肉を言えば、
前から思ってましたがね、と前置きしてぬけぬけと言ってしまうのです。
「あなた様は飾り物には向かねえお方だ、
あたしゃあなた様を、この乱世に潜む武士の“もぐら”と見ておりますんで」

もぐらと言われて面白がる慶喜でしたが、
円四郎は、口が過ぎたついでにもう一言、と、みんなの憂いが消え、
東湖の御霊も喜ぶ方法として、慶喜が次の将軍になってしまうことだと言って
慶喜はたちまち不機嫌になってしまうのです。

 

数日後、前将軍徳川家慶や、父斉昭のすすめで、嫁を迎えます。
京の公家・今出川家の美賀姫は、病にかかった慶喜の婚約者の身代わりとして
急遽、一橋家に嫁ぐことになったのです。
しかし慶喜は、嫁御には大して興味を示さず、さっさと出て行ってしまいます。

美賀姫は慶喜に指一本触れてもらえず、それどころか
先々代の正室・徳信院(慶喜とは7歳違い)と鼓の稽古をしては
「殿の汚らわしい恋心に、わらわが気づかぬとお思いか!」と
完全に徳信院に焼きもちを焼いてしまっている状態です。

 

江戸の薩摩藩邸にも、地震のために嫁入りの遅れた姫がもう一人。
篤姫、のちの天璋院です。

夫となる将軍・徳川家定は子作りよりも菓子作りに夢中でして
それでも丈夫なお世継ぎを産んでご覧に入れましょう、と意気込む篤姫に、
対面した松平越前守慶永は、子作りよりも一橋慶喜が
将軍の世継ぎになることが大事、と諭すように言います。

養父で薩摩藩主の島津斉彬にも、篤姫には大奥から
慶喜が世継ぎとなるよう後押しをしてほしいと言われ、
目を丸くして驚きますが、次の瞬間にはすべてを理解して
「承知いたしもした」とニッコリと頭を下げるのです。

 

港を開いた下田に、アメリカ合衆国の代表として
タウンゼント・ハリスがやって来ました。
通商の条約を結ぶまでは下田に居座ると言って幕府内が大混乱。
老中・阿部正弘は、その時がきたのかもしれぬ、と条約へ舵を切ります。

案の定、斉昭は阿部老中の決定にかみつきます。
これ以上の開国はならぬ、天子様のもとに国を一つにし断固戦うのみ! と
斉昭は異国が開国を迫っていることを朝廷に知らせてしまうのです。

水戸藩主の徳川義篤と、弟の一橋慶喜は
そろって斉昭の前に参上し、隠居を迫ります。
斉昭は、慶喜が今すぐに将軍になってくれるのであれば
喜んで隠居してやる! と言うのですが、慶喜は黙ったままです。

 

攘夷の機運と相まって武芸が盛んになり、腕に覚えのあるものが
他流試合を挑む道場やぶりが流行っていまして、惇忠の道場にも現れました。

北辰一刀流門人の真田範之助という男で、
喜作や栄一は瞬く間に仕留められますが、長七郎が真田の木刀をはたいて勝ちます。
この男も元は武州多摩の百姓の子で、開国しようとしている
幕府に危機感を覚え、尊王攘夷を盾に夷狄を討つと立ち上がったひとりです。

道場やぶりのあと、仲良く酒を酌み交わしているところに、
酒の追加を千代が持ってきてくれました。
こんなところにもあんな美女がいるとは、と真田の顔がほころびますが
惇忠は、大事な妹は長七郎の剣に勝った者にしかやれぬのう、とつぶやきます。

酒の追加分ができたので千代が持っていこうとすると、
「あんな男くさいところ、千代は来んな」と栄一が代わりに運ぼうとします。
しかし栄一の手元がくるって酒をこぼしてしまい、
千代は慌てて栄一の手を布で拭いてあげるのです。

「……触んな」
さっと手を引いた栄一は再び胸騒ぎがしていたたまれなくなり、
尾高家を飛び出して悶絶しています。
千代は戸惑い、台所で立ち尽くしています。

 

安政4(1857)年正月。

斉昭は恒例として、皇族出身の吉子を上座に座らせて盃を賜ります。
慶喜は吉子に、私はたった一人の妻さえも持て余しているとつぶやきますが、
吉子は微笑み、良い夫に恵まれただけですよ、と返すのです。
夫が素直でよい心を持てば、妻も自ずと良妻となるものだ、と。

斉昭は義篤と慶喜に、水戸光圀以来の水戸家の掟として
御三家として徳川の政を助けるのは当然のことであるが、
仮に徳川と朝廷が敵対すれば、徳川宗家に背くことはあっても
天子様には決して弓引くことがあってはならない、と教えます。

慶喜はそんな父ももはや老いたと悟り、母の願いもあり、
もし斉昭から辞職願が出された時には受けてやってほしいと阿部に伝えます。
そう伝えた阿部も多忙を極め、顔色がすぐれないようです。

阿部は、だれか様を早く将軍の跡継ぎにと斉彬や慶永から矢の催促と笑います。
慶喜は、その“だれか様”が自分であることは承知しています。
しかし自分には、その将軍の威厳もないと分析して固辞するのです。

「私は、だれか様と共に一度、ご公儀で働いてみたかった気もします」
この国は今、変わろうとしている。斉昭や自分の世が終わり、
新しい時代が始まろうとしているのだ、とつぶやきます。
慶喜は、阿部の顔をチラッと見て、何も言わずに庭に目線を移します。

 

藍玉の買い付けに出かける栄一は、喜作が
江戸の千葉道場に留学する予定の長七郎に
帰還してからの勝負を申し込んでいるのを目撃します。
「お前に勝たなきゃなんねえんだ……お千代を嫁にもらいてえ」

栄一の頭の中は、グッチャグチャになっていました。
それでも信州への道を進み、立小便しているところに
慶喜が通りかかり、横に並んで立小便するのです。
怯える様子の栄一に、慶喜はさほど気にしていません。

 

阿部老中が胸を押さえて倒れたのは、まさにそんなときでした。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢栄一)
高良 健吾 (渋沢喜作)
橋本 愛 (尾高千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
──────────
草彅 剛 (徳川慶喜)
大谷 亮平 (阿部正弘)
要 潤 (松平慶永)
美村 里江 (徳信院)

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北大路 欣也 (徳川家康)
竹中 直人 (徳川斉昭)
平田 満 (川路聖謨)
平泉 成 (渋沢宗助)
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和久井 映見 (渋沢ゑい)
木村 佳乃 (やす)
堤 真一 (平岡円四郎)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
──────────
制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・橋爪 國臣
演出:黒崎 博

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