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2021年4月11日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(09)栄一と桜田門外の変

──こんばんは。徳川家康です。

時は安政5年、このころ、この言葉が大きく叫ばれていました。
『尊王攘夷』……栄一も言っていましたね。
王を尊び、夷人(いじん、つまり野蛮人)は追い攘(はら)え、と。

これは水戸の藤田東湖とその主・斉昭が、中国の朱子学にあった考えを
日本風に置き換えて作った、スローガンでした。
これがはやってねぇ。
このお方も、この言葉が大好きでした……時の帝・孝明天皇です。

外国嫌いだった帝が、将軍ではなく水戸を頼りにされたことで
開国を主導していた井伊直弼に対抗する存在として斉昭への期待が高まった。
このままでは逆につぶされると慌てた井伊は、
朝廷とつながる水戸藩士や攘夷派の公家を徹底的に処分しました。

そしてその手は、慶喜を将軍にしようとしていた彼らにも迫っていました──。

 

「奉行所の連中が、左内さんを捜してるって!」
平岡円四郎の家に、妻・やすが飛び込んできました。
円四郎のみならず、家にいた福井藩士・橋本左内も顔色を急変させて驚いています。
安政の大獄による井伊の手が、すぐそこまで迫っていたのです。

左内は、円四郎に迷惑をかけまいと、円四郎の家から出て
自分を捜している奉行所の者たちのところへ自ら向かいます。
公家への工作が疑われた左内は、北町奉行所に出頭させられました。
元外国奉行・岩瀬忠震(ただなり)は永蟄居、永井尚志は罷免及び謹慎。

そして登城停止という罰を受けた一橋慶喜のもとに、
より大きな禍(わざわい)がやってきました。
「お沙汰を申し伝える。一橋家当主・徳川慶喜に隠居、謹慎を命ずる」

さらに、すでに謹慎中であった徳川斉昭にも、国元水戸での永蟄居
つまり生涯、出仕や外出をせず水戸に籠ることが命じられます。
この日本を思うわが心がいつか天に届けば、必ずや再びこの江戸屋敷に戻り、
月を愛でる日が来るであろう、と唇をかんで水戸に向かいます。

仲間たちを殺され、斉昭までこのような目に遭わされては、
残された水戸藩士たちは黙って生きてはいられません。
その怒りが井伊直弼に向かうのは、至極自然な流れでした。

 

一方、祝言から一夜明けた栄一と千代は、
作業の合間にも見つめ合って微笑みあう仲睦まじさを見せ、
父・市郎右衛門や母・ゑいにも呆れられるほどです。
そこに、千代の次兄・尾高長七郎が帰ってきて栄一夫婦に姿を見せます。

尾高家に集まった面々に、長七郎は江戸で体験したすべてを伝えます。
いま江戸では、朝元気だったものが夕方に死ぬという
「コロリ」が流行っていて、それを外国から持ち込まれたのは
井伊大老が条約締結を認めたからだ、と攘夷攘夷と騒ぎ出します。

それに参加していた栄一が家に戻ってきて、作業に加わると
市郎右衛門にも江戸で何が起こっているのかを話してくれるのですが
市郎右衛門は、自分たち農民には何のかかわりもねえ、と一蹴します。
「長七郎のやつ、お武家さまにでもなったつもりか!」

栄一は、むかし岡部の代官に500両を召し上げられたとき、
代官の顔を殴ってやろうと思いましたが、よくよく考えてみれば
代官も殿様に言われてその役目を引き受けているわけで、
栄一は殴って気が済むでしょうが、その先もまったく状況は変わらないわけです。

いまの日本を変えるには、仕組みを変えるにはどうすればいいか
自分たち百姓は、いったい誰のために汗水流して働いているのか
いろいろと考えるようになりました。
ま、その大半は、千代に話したことでスッキリして満足してしまうのですけど。

 

井伊大老による隠居謹慎処分から3ヶ月が経った慶喜ですが、
その真面目に罰を受けている慶喜の様子を、徳信院に聞いた円四郎。
実は円四郎は、甲府へ勤番となったため、一橋家を離れるのです。

正室の美賀姫は、何の落ち度もなかった慶喜に罪が及んだのは、
斉昭や松平慶永、そして円四郎たち家臣たちが勝手に慶喜を慕い
勝手に慶喜を祀(まつ)り上げたからだ、と猛批判します。
「かようなお年で隠居とは、命も奪われたも同じぞ! わらわは決して許さぬ」

円四郎は、慶喜が謹慎する部屋の前に座り、最後の挨拶をします。
左内が伝馬町牢屋敷で斬首となり、心ある多くの志士たちも処刑され
それでも円四郎は、また慶喜の家臣になりたいと決意します。
「それならば少し酒は控えよ。息災を、祈っておる」

のちに、安政の大獄と呼ばれる井伊直弼の弾圧政策は、
公卿や大名など100名以上を処罰、
橋本左内、吉田松陰など多くの志士を死に追いやり
日本中に暗い影を落としました。

そして次なる一手は、将軍徳川家茂と孝明天皇の妹・和宮の縁組で
「公武一和」を天下に示さなければならない、と
老中たちを集めて諮ります。

 

「わらわには有栖川宮という許嫁(いいなずけ)もおりますッ!」と
なぜ武蔵国に嫁がねばならぬのか、と和宮は泣いて孝明天皇に訴えます。
岩倉具視は和宮の訴えはそっちのけで、孝明帝をけしかけるのです。

和宮を差し上げる代わりに、攘夷は必ず実行せよ、と。
そうすれば徳川は朝廷の意のままに動くかもしれない、というのです。
孝明帝も、徳川を意のままに、と聞いて、揺れ動きます。

そして、幕府が朝廷への不敬を繰り返したことで、
尊王攘夷の志士たちが過激に走ってしまいます。
イギリス公使館通訳殺害事件、オランダ人船長惨殺など
外国人を狙った襲撃事件が次々と起こりました。

徳川家茂は、水戸浪人が井伊をつけ狙うという悪いうわさを聞き、
大老職から退き、ほとぼりが冷めるまでゆっくりしてはどうかと
提案しますが、何も案じることはありません、と提案を拒否します。
「憎まれごとはこの直弼が甘んじて受けましょう」

直弼が作った新たな狂言を、家茂に翌日披露することになり
屋敷に戻った直弼は、その最後の総仕上げをして出仕に臨みます。

 

水戸に大雪が降りました。
快なり! と斉昭は上機嫌で茂姫や余八麻呂の姿に目を細め
子どもたちにせがまれて、雪積もる庭で子どもに帰って遊んでいます。

そして、江戸も雪でした。
江戸城に向かう大名行列にひとりの浪士が躍り出てきて
発砲音を合図に、建物の陰に隠れていた浪士たちが多数現れて、
行列のお供の者、そして籠の大名に切りつけます。

 

外桜田門で井伊掃部頭が襲撃との一件は、すぐに斉昭の耳に入ります。
下手人はおそらく、水戸藩を抜けた浪士たちであると知って
斉昭はただ立ち尽くしています。
「これで水戸は……敵持ちになってしまった……」

その後の水戸藩の宴会でも、事件が暗い影を落とし
静まり返ったまま、ただひたすら盃を傾ける時間が過ぎていきます。
少々飲みすぎた、と厠へ立った斉昭は、その途中で倒れてしまいます。

「案ずるのはわしではない。この水戸ぞ」
家臣たちが、やれ医者だ薬だと大騒ぎしている間、
かけつけた吉子に何度も礼を言いながら、優しくキスをして意識をなくします。

 

直弼襲撃の知らせは、一部始終を目撃した長七郎経由で血洗島にも。
男たちが攘夷攘夷と躍起になっている一方で、女たちは
男たちはいったい何を考えているのか、とあまり話に加わりません。

そんな中、渋沢喜作の江戸留学が明らかになりました。
ようやく、父・宗助の許しを得たそうです。
栄一は、うらやましい気持ちで喜作を見つめています。

 

「水戸の御父上が……亡くなられたそうです」
徳信院の知らせで、慶喜が親の死と直面するのですが、
謹慎していては、見舞いはおろか死に顔も見られないわけで、
私はなんという親不孝者だ、と肩を震わせて号泣します。

 

あ~あ、おれも行きてえなあ! と愚痴ばかりの栄一に、
農民が学問をして剣術を習ってどうすんだい、と母。
それでも栄一は、長七郎の江戸での話を聞けば血が沸き立つらしく、
ちょうど帰ってきた市郎右衛門に、頭を下げて許しを請います。

「父っさま……春の一時でいい、俺を江戸に行がせてほしい!」


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢栄一)
高良 健吾 (渋沢喜作)
橋本 愛 (渋沢千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
──────────
草彅 剛 (徳川慶喜)
小池 徹平 (橋本左内)
美村 里江 (徳信院)
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北大路 欣也 (徳川家康)
竹中 直人 (徳川斉昭)
岸谷 五朗 (井伊直弼)
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和久井 映見 (渋沢ゑい)
木村 佳乃 (やす)
堤 真一 (平岡円四郎)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・石村 将太
演出:村橋 直樹

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