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2021年4月 4日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(08)栄一の祝言

信州から帰って、真っ先に自分の気持ちを尾高千代に伝えた渋沢栄一。
千代はなみだぐんでいました。
「悲しいんではなくて……嫌われたかと思ってたもんだから」

それから栄一は、信州旅で登った山の頂上から見た景色の話を
身振り手振りを交えて千代に話します。
藍の青さとも谷の水の青さとも違う、すっげえ青が広がる中に
俺は己の力で立ち、青い天にこぶしを突き上げている。

そんなふたりの会話を切り裂いてきたのが、渋沢喜作でした。
喜作は、尾高長七郎からの手紙で、もし千代を嫁に欲しいのであれば
自分ではなく栄一と勝負しろ、と書かれていて
その勝負に挑んできたのでした。

ふたりの真剣勝負。

互角です。
その場のみんなが喜作を応援する中、
「栄一さん気張って!」と千代は栄一に声を掛けます。

「そこまで!」と尾高惇忠が声を上げ、喜作の勝ちと判定すると
周囲の者たちの歓声が沸き、栄一の顔がゆがみます。

喜作は、栄一が自分の弟分でまだまだの男であるくせに
この世を変えたいなどとでかいことを言い出す奴だ、と言いますが
「あいつには……おめえのようなしっかりものの嫁がいた方がよい」
あいつの面倒を見てやってくれ、と言って立ち去ります。

栄一と千代は、祝言を上げることになりました。

──なつかしい! 井伊の赤備えだ。
関ヶ原で一番槍を上げた井伊直政は、徳川の世を作るのに貢献してくれた。

時が経ち、井伊家十五代当主となったのが、この井伊直弼です。
十四男に生まれた彼は跡継ぎの道も遠く、茶の湯・和歌・能楽に夢中になり
「茶歌ポン」とかわいらしいあだ名をつけられていた。

このころ、幕府は大きな問題を抱えていた。「将軍世継ぎをだれにするか」
英邁(えいまい)と評判な一橋慶喜か、
正当な血筋の紀州藩主・徳川慶福(よしとみ)か。
そしてこの戦いで一番槍を上げるのが、井伊直弼なのです──。

 

将軍徳川家定は、井伊掃部頭に大老職を任命します。
井伊の大老就任は、だれも予想しなかった突然の抜擢(ばってき)でした。
幕閣に対し、井伊が大老に不向きだと主張する者もいましたが、
直弼自身も、柄ではないのは分かっている、と怒りを飲み込んで我慢します。

井伊直弼の大老就任を聞いた慶喜は、家柄では申し分ないと納得しますが
平岡円四郎などは、強情をやめて日本のために……と説得をやめません。
「もうよい、わかった」と半ば投げやりに答えた、浮かない顔の慶喜の
その脳裏には、美賀姫の言葉がこだましていました。

 

家定は、政治のことは誰も将軍である自分には諮ってくれず
世継ぎに関してもいつも蚊帳の外に置かれている現状に不満があり
それだけに、自分には内緒で水戸斉昭が島津斉彬や松平慶永と結託して
慶喜を次の将軍に推す動きだけは目の敵にしています。

直弼は家定に頭を下げ、次の将軍は家定が決めるべきことと認め
血筋の近い紀州慶福がふさわしいと主張。
家定の信頼をいっぺんに勝ち取ります。

老中たちが集まる会議で、直弼は次期将軍に紀州慶福を推挙します。
老中首座の堀田備中守正睦は、人事不安の時には年長で賢明な
人物が将軍家の補佐になることが急務だ、と諭すのですが、
将軍の思いに背いてはならぬ、と直弼ははねつけます。

こうして、直弼による一橋派への弾圧がはじまります。
慶喜を将軍世継ぎにと建白した川路聖謨(としあきら)は西丸留守居にお役替え。
円四郎によると閑職もいいところで、ひどい報復人事です。

 

安政5(1858)年6月19日、
ハリスと交渉を重ねていた岩瀬忠震(ただなり)らは、日米修好通商条約に調印。
これは、天皇や朝廷の意見に背いた「違勅(いちょく)」でした。

まだ天子様はお許しになっていないはず、と直弼も驚愕の表情です。
そして期待にたがわず、水戸斉昭は烈火のごとく怒りだします。
井伊大老を下ろし、松平慶永を大老に据え政治を改めよと主張するのです。

同様の知らせが慶喜のもとにも届きますが、慶喜にとってはその事実よりも
朝廷への知らせはどうなったかが気がかりです。
宿継奉書をもって奏聞、と聞くや、慶喜は眼光鋭くにらみつけます。

円四郎が意に背くことをしたとして、正直に頭を下げれば慶喜は許します。
しかし書簡のみで軽々しくであれば、慶喜は許しません。
天照大神(あまてらすおおみかみ)の子孫である帝が、このような
軽々しい扱いをされては、どれほど怒っても足りません。

慶喜は、父よりも先に話をせねばならぬと、直弼を呼びつけます。
「天子様のご叡慮に反し、それをまた奉書のみにて京に伝えるとは何事か!」
朝廷を軽んじるにもほどがあるぞ、と慶喜はまくしたて、
直弼は慶喜に圧倒されて平伏しかできません。

それはそれとして、世継ぎの件は紀州に決まったことを慶喜は喜び
直弼が大老として補佐すれば大丈夫だと太鼓判を押してしまいます。
そばに控える円四郎は、あっちゃーという表情です。
こうして将軍世継ぎ問題は、慶福に決定します。

それから体調を崩し病床に付す家定の命により、
斉昭を謹慎、慶永は隠居謹慎、徳川慶篤と慶喜は登城禁止となりました。
その翌日、家定は薨去。
これが、いわゆる安政の大獄の始まりだったのです。

斉昭らを処罰した直弼のうわさは攘夷志士たちにすぐに広がります。

 

冬、千代の嫁入りの時を迎えていました。
喜作にはすでによしという娘が嫁ぎ、一緒に暮らしています。
気分の良くなった渋沢市郎右衛門は栄一のために祝い唄を歌うと立ち上がり、
いつのまにかみんなで歌ってふたりを祝福してくれます。

そんな血洗島に、長七郎が帰ってきました。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢栄一)
高良 健吾 (渋沢喜作)
橋本 愛 (尾高千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
成海 璃子 (よし)
──────────
草彅 剛 (徳川慶喜)
要 潤 (松平慶永)
川栄 李奈 (美賀君)
手塚 理美 (尾高やへ)
──────────
北大路 欣也 (徳川家康)
竹中 直人 (徳川斉昭)
岸谷 五朗 (井伊直弼)
平泉 成 (渋沢宗助)
──────────
和久井 映見 (渋沢ゑい)
木村 佳乃 (やす)
平田 満 (川路聖謨)
堤 真一 (平岡円四郎)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・橋爪 國臣
演出:松木 健祐

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