大河ドラマ青天を衝け・(16)恩人暗殺
京での政の中心に就いた一橋慶喜は、
政治的基盤を固めるために水戸藩へ人材の援助を要請。
慶喜の思いをくみ取った武田耕雲斎は、
「今すぐ!」とその準備に取り掛かります。
一橋家に仕える新たな人材を探す「人選御用」の命を受けた
渋沢篤太夫と渋沢成一郎は、久しぶりに関東へ旅立つことになりました。
せっかくなら血洗島に寄って、千代やうた、母のゑいに会いたいなぁと
篤太夫の表情はほころびます。
篤太夫と成一郎は、偶然散歩していた平岡円四郎に遭遇しますが、
人集めについて、攘夷だなんだといううわべの思想はどうでもよく
一途に国のことを考えているか、真っ当に正直に生きているかを重視し
あとはふたりに任せると一任されます。
円四郎は、日に日に武士らしく育っていく成一郎に目を細めますが
もとは武士でないことも忘れないようにとくぎを刺されます。
血気にはやる若者のこと、無理に死ぬのを生業にするなと言いたいわけです。
「お前ぇは、お前ぇのまま生き抜け。必ずだ」
あと、江戸ではやすに会って、息災だと伝えてほしいと頼み、
円四郎はふたりを見送ります。
ふたりが発ったあと川村恵十郎は、怪しい者が屋敷を張っていたと
ふたりを見送りに街中にまで出てきた円四郎に忠告しますが、
いちいち気にしていたら殿をお助けできないと気にする様子もありません。
田んぼの中を、笑顔の千代が家にむかってかけてきます。
「えっ? 栄一が京の一橋のお家で働いているって?」
血洗島の栄一の実家で、ゑいの声が響きます。
篤太夫から尾高惇忠のもとに文が届き、栄一の近況が知れたわけです。
文には、お役目で近々江戸に行くので、もしかしたら故郷に
寄れるかもしれないとあり、千代やゑい、市郎右衛門たちはとても喜びます。
家を出る前は攘夷だー、幕府を倒すんだーと言っていましたが
それが今では徳川御三卿のひとつ一橋家の家臣とは、とても驚きです。
お役目で江戸に向かうので、余裕があれば故郷に立ち寄るとあり
千代やゑい、市郎右衛門も家族全員が大喜びします。
しかし、会えるかもしれないという
篤太夫と千代の思いを阻んだのが、水戸の騒乱でした。
尊王攘夷の実行は素晴らしいが、このままではただの烏合の衆の暴挙だと
耕雲斎は呆れますが、水戸天狗党を率いる藤田小四郎は、
命に代えて尊王攘夷の急先鋒たらんと全く応じません。
藩主の徳川慶篤も、徳川御三家が内紛とはと幕府から注意されており
天狗党をどうにかせよ、と成敗を認める命令を出します。
耕雲斎は、慶喜からの救援要請があるのにと困惑していますが
「家中が先だ!」との慶篤の鶴の一言で方針が決定します。
水戸天狗党は、結城・壬生・下館に決起盟約への参加と
それに伴う軍用金納入を要求しますが、いずれもこれを拒否。
兵の数はどんどん膨れ上がっているのに金が足りないと、
小四郎は常陸や下野まで盟約への参加を勧誘する指示を出します。
惇忠のもとにも盟約参加もしくは軍用金の要求の手が伸びますが
慶篤が知るところでないと分かると、大義名分が必要と話を断ります。
そして陣屋からの呼び出しを食らい、惇忠が出て行ったきり
夜になっても戻ってくる様子がありません。
外で戸を叩く音がするので開けてみると、岡部藩の御用改めで
あっという間に家の中に入り、家宅捜索が始まってしまいます。
そして平九郎にも水戸の騒乱の嫌疑がかかり、陣屋に連行されます。
「やましいことがないのなら正直にお答えして、きっと帰っておいで」
長七郎は牢屋に入れられ、惇忠と平九郎はいま陣屋へ。
「水戸の騒動ってなんなの」とつぶやくやへは、狂ったように奇声を発して
惇忠の部屋の本や書き物を破り、暴れ続けます。
そして京でも、尊王攘夷の志士の取り締まりが行われていました。
新選組の土方歳三たちは密かに池田屋に入り、
暴挙の志士たちに突然襲い掛かり、彼らを召し取ります。
この池田屋事件で新選組を仕向けたのは、禁裏御守衛総督の
一橋慶喜であるという噂が街中に流れ、水戸の者たちは怒りを露わにします。
その怒りは慶喜を裏で操る円四郎に向かうわけで、佞臣(ねいしん)平岡を
自分たちの手で取り除かねばと思いを強くします。
そんな動きを知らない篤太夫たちは、江戸でやすへの言付けを伝え
関東の一橋家所領を根気強く手広く回っています。
儒学者や剣術家、才ある農民までさまざまな人材を捜し
真田範之助のいるところにやってきました。
「ようやく再び立ち上がる時がきたのう、ともに筑波山に向かおう」
範之助の一言に困惑するふたり。
そこで初めて、藤田小四郎が筑波で攘夷の兵を挙げたことを知るわけです。
成一郎は、自分たちは一橋家に仕官したことを伝えると、
範之助は豆鉄砲を食らったような表情になります。
仕官の勧誘をする篤太夫に「ふざけるな!」と叫ぶ範之助は
心底見損なった! と篤太夫たちを陣屋から追い出します。
平九郎が尾高の家に戻されましたが、手錠がかけられています。
目立った動きはするな、という意味での手錠なのですが
惇忠たちに比べれば大したことはない、と考えるしかなさそうです。
宿屋で休む篤太夫たちのもとに、市郎右衛門から文が届きます。
「雄姿を見たいと思うが、こちらはいまそれどころではない」
惇忠は水戸との関わりを疑われて牢につながれ、陣屋の者たちは
栄一たちが許可なく村を出たと立腹しているとあります。
惇忠のことは村の者たちで放免を訴えるなど動いているものの
とにかく今は故郷に立ち寄るのは見合わせよ、とのことです。
水戸の騒動は、篤太夫たちが考えている以上に大きく膨れ上がり
藩主慶篤は、水戸天狗党の退治を命じられた諸生党らの言うがまま
武田耕雲斎さえも政から遠ざけてしまいました。
諸生党は、自分たちが政を手に入れの中心になろうと画策しているわけです。
水戸の騒動のことを知り、困惑する慶喜と円四郎。
耕雲斎や水戸の兵を頼るのは無理のようだと慶喜は諦めますが、
篤太夫たちが集める兵たちを信じて待つしかなさそうです。
「私は…輝きが過ぎるのだ」と慶喜は円四郎に打ち明けます。
その輝きが親によるものか家によるものかは分かりませんが、
その輝きが先々代将軍の徳川家慶の寵愛をいただくことになり、
松平春嶽や島津斉彬からも徳川を救うように言われ続けてきました。
慶喜は自分自身のことを、輝きがない実に凡庸な男だと分析していますが
その輝きは、この先も決して消えることはありますまい、
尽未来際(じんみらいさい)、どこまでもお供仕ります、と
激励を送る円四郎です。
雨が降り出しました。
屋敷を出るとき、川村恵十郎に傘を持ってくるように頼む円四郎ですが、
恵十郎が屋敷に戻ったそのすきに、躍り出た刺客に斬られてしまいます。
傘を持って戻ってきた恵十郎は円四郎が切り倒されているのを見て
刺客たちをさんざんに切り倒しますが、円四郎は虫の息です。
「死にたくねえなあ……うう……」
妻の名をつぶやいた円四郎はついに力尽き、命を落とします。
円四郎が刺客に襲われて落命したこと、
刺客は全員水戸の者であったこと、
それを聞いた慶喜は、戸板に乗せられた円四郎の遺体に駆け寄り、
「尽未来際と申したではないかッ」と彼の死を悼み、家臣の前をはばからず号泣します。
集めて回った者たちを引き連れ、歩く篤太夫と成一郎。
彼らはまだ、円四郎の死を知りません。
作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢篤太夫)
高良 健吾 (渋沢成一郎)
橋本 愛 (渋沢千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
満島 真之介 (尾高長七郎)
岡田 健史 (尾高平九郎)
藤野 涼子 (渋沢てい)
草彅 剛 (徳川慶喜)
町田 啓介 (土方歳三)
波岡 一喜 (川村恵十郎)
尾上 寛之 (原 市之進)
みのすけ (黒川嘉兵衛)
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和久井 映見 (渋沢ゑい)
木村 佳乃 (やす)
津田 寛治 (武田耕雲斎)
原 日出子 (貞芳院)
手塚 理美 (尾高やへ)
朝加 真由美 (渋沢まさ)
平泉 成 (渋沢宗助)
平田 満 (川路聖謨)
堤 真一 (平岡円四郎)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・橋爪 國臣
演出:村橋 直樹
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