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2021年6月 6日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(17)篤太夫、涙の帰京

元治元(1864)年6月、渋沢篤太夫と成一郎は
一橋家のために働く関東の人々を引き連れて江戸に向かっていました。
そこへ血洗島の中ん家・伝蔵が合流、ふたりが血洗島を出て久々の対面です。
彼は、尾高惇忠から文を預かってずっとふたりを捜していたのです。

惇忠は悪いことをしてないのに捕らえられたので、みんなで番所へ押しかけ
名主さま(=惇忠)を返さねえなら牢屋を打ち壊す、と脅し
陣屋もついに折れて、惇忠を牢から出してくれたのだそうです。
手錠をつけたまま家に帰された平九郎も、手錠を外してもらえました。

伝蔵がやってきたのは、惇忠の文を届けるだけではありませんでした。
ふたりが兵を集めていると聞いて、自分も志願したいのです。
その申し出を断る理由なんかありません。
はなから加えるつもりだったと成一郎は笑い、久々なのでじゃれあいます。

 

江戸・平岡円四郎邸では、やすが一橋家の家臣たちと会っていました。
彼らの口から出たのは、円四郎が賊に襲われて落命したという
思いもかけない言葉でした。

初めこそ、バカも休み休み言いなと笑うやすですが、
どうやらそれが本当らしいと分かると、半ば狂乱ぎみになります。
「ねえ……うそって、うそってそう言っておくれよ!」

──こんばんは。先週はお休みをして失礼しました。
この辺りから大事な徳川の家臣が次々と亡くなり、私も辛いのだ。

この年 元治元年、斉昭が興した尊王攘夷運動は
最後の盛り上がりを見せていました。
水戸では「天狗党の乱」、そして
先週の池田屋事件で火がついた長州の兵約1,600人も京に向かっていました。

しかし、かたくなな攘夷派の長州にも、このころ新しい人材が出てきました。
後ほど篤太夫に深く関わるふたりなので、ちょっと見ておきましょうか──。

 

「もはや決定は覆せない、4か国は長州を攻撃する」
最後通告を受けた長州藩士の馨 井上聞多は、ひとりのイギリス人に
攘夷実行は無理だと承知だが、納得させるには時間が必要だと食い下がります。
それを見守るのは同じく長州藩士の博文 伊藤俊輔です。

聞多が食い下がったのは通訳のアーネスト・サトウですが、彼は
上官が天皇や将軍、ほかすべての日本人に攘夷は不可能だと
思い知らせてやると言い放っているので、もう手遅れだと悲しげです。
俊輔は、幕府が悪いんだと言い出しますが、彼には届きません。

 

一橋慶喜は髪を結ってもらいながら、かつて円四郎に
髪結いのことを教えた時のことを思い出していました。
でも、そのかわいがった円四郎はもうこの世にはいません。

大目付の永井尚志が、長州兵が大挙して京に入ってきたと伝えます。
慶喜にはもはや、故人を悼む時間すらないのです。
孝明天皇は長州人を京に入れてはならぬと命じていますが
長州は会津公追討の兵を挙げ、混乱に乗じて天皇をさらう計画なのです。

先手を! という声がある中、慶喜は戦だけはしないように厳命します。
戦をすれば薩摩の芋たちが喜ぶだけだというのです。
予想通り、薩摩はこの機に乗じて京での主導権を取り戻そうと画策し
いろいろ動き始めていたのです。

薩摩藩士の西郷吉之助は慶喜と対面し、長州を潰そうと提案します。
「なんなら薩摩が先に行きもんそか」と揺さぶりをかけても
慶喜は真一文字に口を閉じたまま、吉之助の顔を見つめています。

 

江戸の一橋家に入った篤太夫と成一郎は、
京の一橋家にいるはずの猪飼が江戸に来ているのに気づき、声を掛けます。
慶喜や徳信院、美賀君からの見舞いの品を平岡家に運ぶ段取りをしていたのです。
「平岡さまは先日、賊にお命を奪われた」「えっ」

篤太夫も成一郎も、あまりの衝撃に言葉を失います。

 

7月19日、京都郊外の山崎では多くのかがり火が桂川を渡り
京に向けて進軍していると報告があり、
「再三の撤兵命令にも従わずに自ら挙兵するとは何と愚かな」と
慶喜は静かに怒りをにじませます。

急ぎ参内した慶喜は天皇に勅命を求め、「長州を討て」との命を受けます。

帝への影響力を一気に強めようと目論んだ長州藩は、京都御所に突入。
江戸幕府開府以来、初めて京を舞台にした大きな内戦である
『禁門の変』が始まりました。

逃げ惑う自軍に、慶喜は「逃げるな! 戦え!」と鼓舞し、
御所に銃の筒先を向けた長州兵たちには「何が尊王だ」と言ってにらみつけます。
御所では帝と祐宮(さちのみや・後の明治天皇)が紫宸殿(ししんでん)へと避難し
天皇は長州への怒りを露わにします。

薩摩軍が参戦すると圧倒的な打撃を受けて長州兵は壊滅。
禁門の変は幕府軍の勝利で終結しました。
戦の後、慶喜に挨拶をする吉之助ですが、慶喜は一言労わっただけで素通り。
吉之助は、慶喜の力を考え、もうしばらくは仲良くお付き合いすることにします。

数日後にはイギリスら4か国の軍艦も長州軍の砲台を打ちのめし
ここにきて長州藩はようやく、攘夷を諦めます。

 

禁門の変のことは、江戸の篤太夫たちにもすぐに伝わります。
「もう攘夷は終わりなんだな」と、かつて円四郎が言っていたことが
現実になってしまったことを篤太夫は嘆きます。

長州兵は石見国あたりでまだまだ悪あがきしているらしく、
慶喜がいよいよ長州討伐に出るらしいとして、
篤太夫たちには兵を連れて急ぎ京に戻るように命がきます。

そのころ、水戸天狗党の藤田小四郎は、一部隊士が暴発したせいで
自分たちが凶悪な賊の汚名を着せられてしまったことを
水戸藩執政役の武田耕雲斎に訴え出ます。
「どうか我が軍の大将となり、我らをお導きください」

徳川斉昭や、父・藤田東湖が夢見た、かなえられなかった尊王攘夷を
自分たちの手で叶えたい、とまで言われてしまえば、
始めこそ止めに入っていた耕雲斎も、受け入れるしかありませんでした。

 

やすは屋敷を引き払い、三味線片手にひとりで生きていくことにします。
思い出の掛け軸を外した時、隠されていた円四郎からの文を見つけます。

──この文を見つけたってこたぁ、今おめぇは俺がいなくて
つまらねえで寂しくってしかたがねぇってことなんだろうなぁ。
しかし悪いが勘弁してもらいてぇ、殿には俺が入り用なんだ。
これほどお仕えしてぇと思ったお方にお仕えできる俺は、幸せ者だ。

殿との出会いで、俺の生きざまは もやが晴れたように変わっちまった。
苦労も多いが張り合いがある。
人と人との縁ってのは、まことに不思議なもんだ。
何度も何度も女でしくじって、ようやくおめえに出会えたのもこれしかりだ。

我が殿はきっとこの先、新しい日本を作ってくれる。
やす、俺ぁお前とその新しい日の本を見る日が今から楽しみでならねぇ。
そん時が来たらまたふたりで、江戸の町をぶらぶらと歩こうじゃねえか。
さぁて、どんなふうに変わっちまうのか見当もつかねぇがなぁ。

しかしきっと……きっと、めっぽうおかしれぇに違ぇねえ──。

 

篤太夫たちは、集めた兵を率いて中山道を京へ向かい、深谷宿に着きました。

岡部藩の血洗島は街道筋からたった一里ほどなのですが
家族に会えないことだけがふたりの悲しみでもありました。
渋沢市郎右衛門の計らいで、千代とよしを街道筋の家に向かわせてくれて
ふたりは一瞬だけですが、それぞれの家族に会うことができました。

篤太夫は、円四郎を亡くしたばかりで再会を素直に喜べませんが
千代は、そんな篤太夫の気持ちを汲みながら励まします。

翌日、深谷宿を出た一行は岡部の領内を抜けようとしていました。
すると篤太夫にとって憎き代官・利根吉春がしゃしゃり出てきて
渋沢両名を名指しして取り調べしたいという暴挙に出ました。

一行を先導してきた猪飼は、いきなり村に戻してほしいと言われても
一行が困るし、縁あって一橋家に入ったかけがえなき家中の者なので
一橋家としては到底承服しかねる、と要求を突っぱねます。
「ははっ。しからばどうぞ、ご通行ください」

頭を下げる利根の横を素通りし、高ぶった気持ちを抑える篤太夫は
この気持ちを円四郎に伝えたかった、と肩を震わせ涙を流します。
「何もかも平岡さまのおかげだい。京に戻っても平岡さまがいねぇなんて」

 

無事に京の一橋屋敷に入ったふたりは、慶喜に労わりの言葉をかけられます。
斉昭の尊攘の教えを学んだと聞いているふたりに慶喜は
斉昭の尊攘の教えを学んだ円四郎を慶喜に遣わせたのは斉昭で、
それがなぜ水戸の者たちに殺されねばならなかったのか。

「円四郎は私の身代わりとなったのだ」
尊王攘夷とは、まことに呪いの言葉になり果てた、と言いおいて
慶喜は退室します。

篤太夫たちは一橋家とは何の関わりもなく浮浪していたところを、
円四郎の推挙により武士になり、一橋家に出仕することになったわけで、
その円四郎が亡き今、なお一層一橋家のために励むようにと
黒川嘉兵衛が言葉をかけてくれます。

 

水戸天狗党は耕雲斎が首領となり、勢いを取り戻しますが
度重なる幕府の追討軍や水戸の諸生党との戦いによって弱体化し
次第にその人数を減らしていきました。

耕雲斎は、こうして水戸で血を流し続けたところで攘夷は果たせぬと
天皇に自分たちの国に対する思いを知ってもらおうと
斉昭の尊王攘夷の教えを朝廷に披露すべく京に向かうことにします。
京には、その心を一番よく知る慶喜がいるからです。

「京を守るのが私の役目だ。天狗どもを京に入れるわけにはいかぬ」
慶喜は、自分の手で天狗党を討伐する決意を固めます。

自分たちが天狗党を討伐することになったと知って、
篤太夫は複雑な表情を浮かべます。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢篤太夫)
高良 健吾 (渋沢成一郎)
橋本 愛 (渋沢千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
成海 璃子 (渋沢よし)
──────────
草彅 剛 (徳川慶喜)
磯村 勇斗 (徳川家茂)
上白石 萌音 (天璋院)
福士 誠治 (井上聞多)
山崎 育三郎 (伊藤俊輔)
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北大路 欣也 (徳川家康)
木村 佳乃 (やす)
博多 華丸 (西郷吉之助)
津田 寛治 (武田耕雲斎)
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和久井 映見 (渋沢ゑい)
平田 満 (川路聖謨)
堤 真一 (平岡円四郎)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・橋爪 國臣
演出:田中 健二

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