大河ドラマ青天を衝け・(19)勘定組頭 渋沢篤太夫
一橋家の懐を豊かにするために動き出した渋沢篤太夫は
一橋領の備中で収穫した米を、その良さを分かってくれる大坂の商人に
入り札制度(最高値を提示した者にだけ売る方法)により高値で売ります。
備中の家の床下でとれた硝石を使って、火薬の製造も始めます。
幕府内にも懐を豊かにする勘定奉行・小栗忠順がいました。
フランスから軍艦を買い、長州を潰して続けて薩摩も討ってしまえば
もはや幕府に対して刃向かう大名も出てこないだろうと考えます。
そこでようやく、幕府はひとつにまとまるのです。
幕府が貿易をしたがっているフランスから、2年後に行われる
万国博覧会の招待状が届きますが、小栗は「無論参加だ」と答えます。
懐具合を少しでもよくするため、世界に日本の優れた産物を
見せつけて、今後の貿易につなげたい考えなのです。
──こんばんは。徳川家康です。
この小栗忠順の家は、私のころから代々仕える旗本の名門です。
彼は初めて公式にアメリカへ渡った幕府使節団の一人となりました。
小栗は、現地の最新技術に目を見張った。
そして「いつか日本もこれを超える技術を」と
造船所で作られていたねじを持ち帰りました。
今や優秀な勘定奉行だ。
我ら武家は長らく、「金は卑しいもの」と嫌っていましたがね。
新たな世は、経済の知識なしには乗り切れなかった。
そしてそんな人材は、こんなところにも──。
「ベルギー国と、コンパニーの約定を結びもした!」
紳士服に身を包む薩摩藩士の五代才助が笑っています。
薩摩の富国強兵を成功させるため、フランスで行われる2年後の万国博覧会に
薩摩のいい品をたくさん出して拍車をかけたいところです。
播磨にきた篤太夫は、彼が大坂で買ってきた今市村の白木綿と
姫路の白木綿を並べて、どちらも質がいいのに今市産は一反35文で
姫路産は一反70文の値がついていると集めた農民たちに伝えます。
姫路では、流通する前にいったん城下で白木綿が集められて、
道行く人たちに「姫路の白木綿でござい!」と宣伝することで、
買う人も「あぁ姫路産なら品質はいいんだろうな、そりゃ高いよな」と
高値であってもどんどん買っていくというからくりを紹介します。
そこで篤太夫は、今市村で生産された白木綿を一橋家で買い取り
姫路と同じように宣伝して名を広めていこうと考えます。
しかし農民のひとりが、武家が農民を儲けさせようと考えるはずがないと
異を唱え始めたので、せっかくまとまりかけたこともバラバラになります。
海の上のイギリス船では、イギリス公使のハリー・パークスが
日米修好通商条約を結んだ1858年からすでに7年が経過していて、
日本人はいつになったら7年前の約束を守るのか! と怒ります。
「いいか、7日以内に帝に条約を認めさせろ」
この話はすぐに将軍徳川家茂のもとにもたらされます。
条約を認める勅許が取れなければ、幕府を無視して朝廷と直談判に及ぶ。
もはや先送りはできず、頼みとするフランスも、パークスの前に折れ
決断の時が迫ってきていました。
しかし、今さら勅許など必要か? 兵庫港を開けばいいではないかと
話が移ったときに、場に入ってきたのが一橋慶喜であります。
天皇の勅許があってこそ有効で、幕府が単独で結んだ同盟には
何の意味も力もなさないと言ってきたのです。
朝廷は、幕府が朝廷をないがしろにしていることを知っており
公家たちは、それを扇動した老中の松前崇広や阿部正外の罷免を要求。
攘夷もできず勅許も得られず、今は家来さえも罷免された家茂は
将軍職を慶喜に譲って江戸に戻ることにします。
将軍は何としても家茂でなければならないと考えている慶喜は
勅許を命がけでいただいてまいる、と御所に向かいます。
そこで孝明天皇に直接、勅許のお願いに上がるわけですが、
当然ながら勅許に賛成する公家などいようはずもありません。
正親町三条実愛は、将軍の辞職を要求するわけですが、
実は慶喜は、正親町三条が薩摩と手を組んで討幕を考えていることを知っており
それをズバリ指摘して言いたい放題の口を閉じさせます。
さらには慶喜が勅許を取れない責任を取って自刃したときには、
配下の者たちがほうぼうで、勅許に反対した公家たちに対して
危害を加えるかもしれないが、責任は負えないと言い、
公家たちは縮み上がります。
孝明天皇は、将軍家茂や幕府に対して憎んでいるわけではなく
いまだに降参しない長州に対して大きな憎しみを持っています。
慶喜が外国のことに関してそこまで言うのであれば、と
天皇は勅許を出すことにします。
今回の長州征伐で長州を滅ぼし、次は矛先を薩摩に向ける。
そう言う狂った幕府を、そろそろ見限るべきだと島津久光は考えていて
大久保一蔵は越前の松平春嶽を訪ねて頭を下げます。
「京にお上りを。才知あるもんで異国に堂々立ち向かえる日本を作いもんそ」
京の一橋屋敷では、篤太夫が物産所について熱く語ります。
木綿を一橋の名物とするため、播磨木綿を一括売買する物産所を設けました。
農家からいい品をなるだけ高く買い取り、それを安く売る。
高く買えば、他の農家は高く売れる木綿を作る努力をしてくれるのです。
そしてそれを安く売ることで、良い品が安いと評判になり
それ以降は必ずよく売れるようになるのです。
年貢米と硝石は、篤太夫が考えたやり方で軌道に乗りつつ、
木綿があまりうまくいかず、どうにかテコ入れを図りたいようです。
篤太夫は慶喜に、一橋の信用をもって銀札を作ることを提言。
重い銭を持っていなくても、一度に大量に取引ができるというのです。
慶喜の許可をもらった篤太夫は、さっそく銀札づくりに着手します。
1つのはんを3つに分け、それを一緒にしないと刷れない。
こうすることで、にせ札を減らすことができ、信用度を高めたのです。
篤太夫は半年をかけて銀札引換所を設立し、
額面通りの銀と引き換えたことで、広く信用を得られました。
京、そして江戸の一橋家の懐が瞬く間に改善された実績を評価され、
篤太夫は、一橋家の勘定組頭に抜擢されました。
一方、渋沢成一郎ですが、軍制所調役組頭に昇進していました。
同居していたふたりは、別々の場所に暮らすことになりました。
篤太夫とは違い、部門の面から慶喜のそば近くで働く成一郎は
慶喜がひどく苦悩していることを知っています。
2回目の長州征伐ともなると、薩摩が兵を出さないと言い出し、
それに倣って阿波と尾張も不参加を申し出てきているのです。
幕府と長州は一触即発の状態、しかも大名は戦わないと言い出した。
そんな中で幕府軍は長州と戦わなければならないわけです。
ここまで仲良くやってきた篤太夫と成一郎ですが、懐を守る篤太夫と
命を懸ける成一郎で考え方の相違が生まれ、けんか別れしてしまいました。
薩摩は、朝敵長州藩と薩長同盟を締結します。
幕府の長州征伐を前に、長州藩がイギリスの武器を買いたいと言い出し
かつての敵には武器を売れないイギリス代表の商人グラバーは、
買って長州に売ろうと考えている薩摩藩と、売買の話を決着させます。
「なぜだ? なぜこれほど苦戦する?」
2度目の長州征伐を始めた 家茂率いる幕府軍ですが、
長州兵は大将の指図なく、新式銃を持って戦場を駆け回っているとのことで、
従来の戦をしている幕府軍は苦戦を強いられます。
家茂は息使いが乱れ始め、倒れてしまいます。
慶応2(1866)年7月、ようやく居場所を見つけた篤太夫の運命も、
また大きく変わろうとしていました。
作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢篤太夫)
高良 健吾 (渋沢成一郎)
満島 真之介 (尾高長七郎(回想))
磯村 勇斗 (徳川家茂)
尾上 右近 (孝明天皇)
山内 圭哉 (岩倉具視)
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草彅 剛 (徳川慶喜)
要 潤 (松平春嶽)
小池 徹平 (橋本左内)
尾上 寛之 (原 市之進)
中村 靖日 (永井尚志)
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北大路 欣也 (徳川家康)
ディーン・フジオカ (五代才助)
武田 真治 (小栗忠順)
遠山 俊也 (猪飼勝三郎)
池内 万作 (栗本鋤雲)
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石丸 幹二 (大久保一蔵)
木村 佳乃 (やす)
平田 満 (川路聖謨)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門(回想))
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・石村 将太
演出:尾崎 裕人
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