大河ドラマ青天を衝け・(23)篤太夫と最後の将軍 ~大政奉還の大勝負~
渋沢成一郎の妻・よしが、パリから届けられたと
紙に姿がそのまま写るホトガラフを持ってやってきました。
渋沢ゑいは、ぼんやり写る篤太夫の姿に「栄一でねえか!」と歓喜して
千代も、だんなの姿に自然と笑みがこぼれます。
千代はうたを呼び、はるか遠くの国で活躍する篤太夫の姿を見せます。
そう、うたが生まれて間もないころに家を出て一橋家のために
東奔西走しているので、うたには父親という実感がないのです。
「行儀も心がけもよい子でなくてはなりません」とうたに説きます。
その篤太夫ですが、フランスから日本への600万ドルの借款が消滅したことで
大騒ぎになっていました。
おそらくは薩摩とモンブランのせいで江戸幕府の信用が貶められてしまい
借りられなくなってしまったようです。
借款が消滅したということは、民部公子・徳川昭武が留学に際し
諸国へ挨拶回りをするための10万ドルも入る見込みがなくなったわけで
篤太夫は危機感を覚えますが、外国奉行支配組頭・田辺太一は
「策はある」と考えています。
つまり、民部公子の名義で為替を発行し、買い取らせた先から
日本の幕府に対してこちらが振り出した為替の金額分を取り立てさせる。
その場にいる者は、その経済のからくりを理解できませんが
逆の為替で金を得るわけですな、と篤太夫は即座に理解します。
民部公子は将軍の弟であり、たとえフランスが応じなくても
オランダの貿易商社やイギリスのオリエンタル・バンクに諮れば
引き受けないということはないだろう、というのです。
とにかく篤太夫は、急いで行動に移します。
当面の費用をなんとか調達した徳川昭武一行は、
条約を結んだ諸国への旅に出発しました。
スイス・ベルンでは、薩摩により失墜した幕府の信頼を取り戻すため
江戸幕府外国奉行の栗本安芸守鋤雲が合流します。
栗本は外国奉行支配調役の杉浦愛蔵を幕府の差配を仰がせるため日本に帰国させ
篤太夫には、小栗忠順から預かった為替を預け、旅行を続けるよう伝えます。
篤太夫は、帰国する杉浦に家族に宛てた手紙を託し、
養子を組んだ尾高平九郎のことが気になると、様子を見に行ってもらいます。
その日の朝、原 市之進邸に「本圀寺遊撃隊」と名乗る者が現れ、
瞬く間に襲撃して命を奪ってしまいます。
成一郎から報告を受けた徳川慶喜は、下手人が直参の者であると知って肩を震わせます。
「なぜだ……なぜ私から大事なものを奪う?」
血洗島では平九郎が渋沢家に入りますが、そのまま江戸に向かいます。
ちなみに江戸見物をする実母の尾高やへと行動を共にします。
千代は、もう立派なお武家様なのだから、何があっても
栄一に代わり忠義の道を尽くすように諭します。
平九郎のことが好きな渋沢ていは、会えなくなる悲しさに涙を流しますが、
自作のお守り袋を手渡し、笑って送り出そうとするのですが
やっぱり泣けてきて「もうやだ」なんてつぶやいてます。
平九郎はていを抱きしめ、いつか嫁にほしい、と言ってていを驚かせます。
これがあれば戦になっても心配あらしまへん、と
岩倉具視が大久保一蔵に提示したのは、錦の御旗の絵です。
政を朝廷に返すのはもちろん、徳川を除かなければ王政復古とは言えない。
内部でもめる土佐は除いて、なるだけ早く薩摩と長州だけででも
幕府を倒さねばならないからと、倒幕の宣旨がほしいと岩倉に求めます。
薩摩の西郷吉之助は、天璋院様御守衛という名目で浪人たちを集め
京・伏見の薩摩藩邸にてその来たるべき時に備えていました。
その動きを察知した慶喜は、後手に回れば長州征伐のように負け戦になると
先手を打って朝廷に政を返上してしまいます。
500年の長い間、政を担っていない朝廷は弱小すぎて困るでしょうし
薩摩長州は、先手を打たれたことで振り上げた拳を下せなくなってしまいます。
「緩んできた世を再びまとめ上げるのは殿しかおらぬ」
「衰えちまった日の本を盛り上げるいいきっかけになるかもしれません」
亡き平岡円四郎や、今やスイスの篤太夫の言葉を振り返りながら、
こういうことを一人で考えねばならぬとは……と慶喜は悲観します。
慶応3(1867)年10月12日、慶喜は二条城で政権を帝に返上すると宣言。
外国との交際が日に日に盛んになる昨今、日本ももはや政権を
一つにまとめなければ国家を治め守ることはできぬ、と語る慶喜に
居並ぶ家臣たちは落日の幕府を憂い、うつむき涙を流します。
それを伝え聞いた江戸の役人たちは、慶喜の決断は幕府の滅亡を
急がせるものと憤り、政権をいち早く取り戻すために幕府軍を上洛させ
薩長など反幕府勢力を帝の周辺から一掃すべしと動き出します。
幕府内部のみならず、混乱は大奥にまで波及してしまいます。
松平春嶽は、慶喜の一言が大混乱を招いていると苦言を呈しますが
慶喜は、あの時に行わなければ今ごろは京は戦になっていたとし
天皇の皇国の力を取り戻すべく、諸侯が力を合わせて
徳川家康が治めた天下の大業を受け継ぐ手伝いをしたいと伝えるのです。
この政権奉還が慶喜の何かのはかりごとだと思っていた春嶽は
慶喜がそこまで覚悟をした上の行動と知って、自らを恥じ入ります。
新しい日本を作り上げていくために、今は戦などしている時ではないと
春嶽は慶喜の思いを確かに受け取っています。
不満が噴出するのは、せっかくかけたはしごを外された薩摩です。
岩倉が方々に手紙を出し説得に伺い、倒幕の密勅案を実現させようと
した矢先に、先手を打たれて政権奉還されてしまったのです。
政権をいきなり返された朝廷では先のことが全く決められず
とりあえず将軍職は今のまま慶喜に、という何も変わらない対応ですが
どうすればいいのか困り果てた朝廷が、岩倉に相談するために
赦して洛中に戻したことで、反幕府勢力としてはかなり動きやすくなります。
各国歴訪を終えた昭武がパリに戻り、留学生活に入ります。
軍人のような格好のヴィレットが、家庭教師としてつけられますが、彼は
昭武と家臣たち全員に、まげを落とし刀を外し、洋服の着用を求めます。
「さあ……誰からいく?」と栗本は笑っています。
百姓出身だから……かどうかは分かりませんが、篤太夫から始まります。
みな心配そうに見守りますが、本人はワクワクした面持ち。
とはいえ、いざ武士の魂を捨てるとなると辞世を詠む者まで現れ、
雄たけびを上げる者も少なくありませんでした。
篤太夫は、江戸幕府でいう“お目見え”、身分の高いヴィレットと
親しげに会話するエラールが、両替商、銀行オーナーであると知り
身分の高い者と商人が仲良くしていることにとても驚きます。
「フランスでは、役人も軍人も商人も同じです」
ベルギーでも、自国の産物を国王自ら売り込んでいました。
異国がどこか風通しがいいのはこのせいか! と篤太夫は納得します。
身分に関係なく皆が同じ場に立ち、それぞれ国のために励んでいる。
これこそが自分たちが求めていたあるべき姿だと気づきます。
ちなみに、こうした異国の文化に染まれない井坂たち3人は
外国方の向山や田辺たちとともに日本に帰国するわけですが、
借款が成らず倹約を強いられる今、随行人数が減るのはありがたいと
栗本や篤太夫は井坂たちを多少冷ややかに見送ります。
慶応3(1868※)年12月9日、薩摩の西郷ら反幕府勢力が動きます。
朝廷を一気に支配下に置こうというクーデターの始まりでした。
岩倉も5年ぶりに復帰できたことにより、王政復古が宣言されます。
[※補足] 一般的に慶応3年は1867年のことですが、
劇中スーパーでは「1868」と表示されています。
これは、太陰暦では慶応3年12月9日、
太陽暦で1868年1月3日と、ズレがあるためです。[※補足おわり]
慶喜による大政奉還を許可し、王政の礎を定め万世に伝えられる
国の方針を立てよという明治天皇の思し召しにより、
小御所会議が開かれることになりましたが
今回の一件は陰険なことが多いと土佐の山内容堂が疑問を呈します。
そもそも200余年、天下を無事に治めてきたのは徳川の功績であり
慶喜は受け継いだ将軍職を投げうって政権奉還したというのに、
優れた人物である慶喜がこの場にいないというのはおかしい。
しかも、王政復古の始まりに御所の門を兵で固められている……。
会議をするならここに呼ばんでどうするがぜよ! と
白熱する容堂をなだめる春嶽ですが、春嶽自身も容堂の意見に同調します。
それをきっかけに、慶喜の参加を求める声があちこちから出てきて、
小御所会議は紛糾します。
岩倉は、慶喜の人望のなさを期待して今回の会議を開いたのですが
予想以上に慶喜が人気であることに焦りを覚えます。
「戦をしたくなかち言うなら、したくなるようにすっだけじゃ」
頭では勝てないと、西郷は幕府軍と戦をしるしかないと考えています。
大坂城にいる慶喜に、江戸城二の丸が放火されたとの報が入ります。
大奥の天璋院を奪うために薩摩が仕組んだという噂です。
罠だ、動いてはならぬと慶喜は命じますが、ことはさらに悪化します。
三田の庄内屯所が銃撃を受け、薩摩を討つべしとの声が高まり
老中の命を受けて諸兵が薩摩屋敷を砲撃してしまったのです。
動かずに耐えていれば、じき時が来るからと命じたのに、
戦端を切られてしまったことに、慶喜は責任を感じます。
家臣たちの「薩摩討つべし」の圧倒的な声に、慶喜は……。
外国方のほとんどが帰国の途についた今、パリの昭武宿舎では
栗本や篤太夫、高松凌雲らがわずかに残って仕事をしていました。
そこに江戸からの電報が舞い込みます。
「大名が集まり、話し合いで新しい政権の形を決めることとなった。
日本の形勢は大いによろしく人々は上様を深く信頼している。
政は安定することになるだろう」
新しい政権の形?
篤太夫は、いま日本で何が起こっているのか不安に駆られます。
作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
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[出演]
吉沢 亮 (渋沢篤太夫)
高良 健吾 (渋沢成一郎)
橋本 愛 (渋沢千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
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草彅 剛 (徳川慶喜)
要 潤 (松平春嶽)
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北大路 欣也 (徳川家康)
石丸 幹二 (大久保一蔵)
博多 華丸 (西郷吉之助)
武田 真治 (小栗忠順)
堀内 正美 (中山忠能)
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和久井 映見 (渋沢ゑい)
平泉 成 (渋沢宗助)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・藤原 敬久
演出:田中 健二
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