« 大河ドラマ青天を衝け・(25)篤太夫、帰国する ~生きてくれ平九郎!~ | トップページ | 大河ドラマ青天を衝け・(27)篤太夫、駿府で励む ~徳川最後の戦い~ »

2021年9月12日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(26)篤太夫、再会する

──こんばんは。徳川家康です。

篤太夫は、6年ぶりのふるさとへと向かっています。
ちなみに、その付近を治めていた岡部藩は、もうない。
長年、徳川に仕えていた大名たちは、次々と新政府とやらに恭順した。
そして新政府とやらは、直轄地に府や県を置き、このように

……なんて話は、もう野暮ですかな?
いや、まずは篤太夫を見守りましょう──

「よ! 栄一」
実家に向けて歩いていると、いつもの木陰に尾高長七郎が座っていました。
散切り頭のことを笑われて、篤太夫も頭をポリポリかいて照れていますが、
自分も、そして日本も大きく変わってしまったことを嘆いています。

この日本の変革にともなって、多くの命も失われたことが腹立たしい。
よりによって平九郎まで若い命を散らしたのです。
倒幕のつもりが幕府に仕え、その幕府が倒されて多くの者が死に、離散し
今となっては主すらいないわけで、怒りは自分自身へ向ける篤太夫。

しかし長七郎も同じで、何も成し遂げられなかったと後悔しきりです。
生き残った者にはなすべきさだめがある、と篤太夫が諭したから
いまこうして無意味に生きながらえているだけなのです。
長七郎を追いかけていた篤太夫は、黙ってしまいます。

 

実家は、篤太夫が帰ってくるというので大わらわです。
おそらく到着は夜だから、今から慌ててもと市郎右衛門は笑いますが、
そんな市郎右衛門も内心はあたふたしていて、みんなクスッと笑います。
「だんなさまァ! 坊っちゃんが! もう…そこまで!!」

慌てて出迎えに出る市郎右衛門と千代、愛娘のうた。
そして村の農民たちもはしゃぎまわって篤太夫を出迎えます。
うたは、物心ついて初めて会う父親に戸惑いつつ、父親の胸に飛び込みます。
篤太夫はうたを抱き上げ、ギュッと強く抱きしめます。

勝手に村を飛び出して、そしてまた勝手に帰ってきた篤太夫に
渋沢んとこの栄一は変節漢だ、と陰口をたたかれつつ心配していたのです。
無事に帰ってきたのはめでたいことですが、ていが吐き捨てます。
「何がめでてぇもんか! 何だい自分だけ帰ぇってきて」

渡航するにあたり、篤太夫が平九郎を見立て養子になどしなければ
今ごろ平九郎は、ふつうに村で過ごしていたはずなのに、
篤太夫のせいで平九郎の運命の歯車は狂わされ、命を落としたのです。

平九郎の実家でもある尾高家へ挨拶に出向こうとしますが、
いま尾高家は誰もいないから時を改めて来月に、と宗助は止めます。
「先月、長七郎が亡くなってねぇ」

 

夜、ごちそうを並べて篤太夫を囲んでの食事会です。
篤太夫は、鉄道という「何棟も連なる長屋のそれぞれに車輪がついてて、それを
蒸気機関が引っ張って鉄の道をダダダと進む」と説明しますが
見たこともない村人たちには理解できず、
ともかくすごいんだということだけが伝わったようです。

千代は、尾高であれだけの不幸があったのに耐えてくれてたし
暗かったうたも、篤太夫からの手紙が届いてからというもの
篤太夫の帰りを指折り数えてけなげに待ってくれていたのです。
そしてみんなは、そんなうたに助けられて今日までやってきました。

ふるさとというのはありがたいものだ、と篤太夫は改めて思います。

 

「お前はもうお武家様だ、栄一さんに代わり忠義の道を尽くすのですよ」
そう言って平九郎を送り出したことが、彼を死に追いやった。
宴会も終わった夜明け前、礼を言う篤太夫に千代は大粒の涙を流します。

篤太夫は千代の気持ちを受け止め、自分が幕臣になったことが
こういう結末を生んだことを予測することができなかったと
千代のせいではない、千代は悪くないと諭します。

 

箱館病院には、戦いで傷ついた将兵が次々と運び込まれます。
土方歳三や渋沢成一郎たちは、蝦夷地平定の祝賀会の話で盛り上がりますが、
病院を立ち上げた高松凌雲は、あまりの兵の多さに多忙で
のんきに盃を上げるヒマはない、と祝賀会への参加は断ります。

土方は函館病院で敵兵も治療を受けているのをめざとく見つけますが
「けが人に敵も味方も富豪も貧乏人もない」と凌雲は言い放ちます。
凌雲が篤太夫とパリで学んだその精神を、この箱館で実践しているのです。
なるほど西洋式か、と土方は押し黙ってしまいます。

 

惇忠は、おめおめ生き残り合わせる顔がないと人との接触を避けていますが
篤太夫は、戦をするのではなく畑を耕し励むことこそが
自分の戦い方だったんだと気づき、その恥を胸に刻んで
生きている限りもう一度前に進みたいと涙ながらに訴えるのです。

──さあ、前を向け栄一!
俺たちがかつて悲憤慷慨(ひふんこうがい)していたこの世は崩れたぞ。
崩しっぱなしでどうする?
この先こそが、お主の励み時であろ?──

長七郎が、ポンと背中を押してくれたような気がしました。
「そうだいな……そうだい!」

 

成一郎を追って箱館で戦をするつもりは篤太夫にはありません。
パリでの知識を新政府で生かせますが、その道も断ります。
まずは前将軍の徳川慶喜に挨拶に、駿府に向かうことにします。
その後、役人をするか農民をするかはまだ決めていません。

市郎右衛門は、それでこそ栄一だと大きく頷きます。
道理を外してくれるな、と送り出した篤太夫は、それを守ってくれました。
それだけでも自慢の息子です。

栄一は、市郎右衛門にくれた100両もの大金を返却します。
この金は俺のもンだ、好き勝手に使わせてもらう、と受け取った父は
その金をむんずとつかんで、そっくりそのまま千代に渡します。
6年間にわたりこの家に尽くしてくれた、そのご褒美というわけです。

 

篤太夫は、慶喜がいる駿府へ向かいます。
幕府の直轄領だった駿府は、
慶喜や江戸を追われた徳川家家臣たちの受け皿になっていたのです。
そして数日後、篤太夫は慶喜のいる宝台院に呼ばれます。

久々に対面した慶喜は、いかにもおとなしい質素な服装です。
政権返上も鳥羽伏見も、他にやりようがあったのではと疑問をぶつける篤太夫に
昔のことを今更言っても詮ないことと慶喜は諭します。
民部公子徳川昭武の様子を報告するというから会ったのだ、と。

一礼し、昭武の様子を余すことなく丁寧に報告する篤太夫。
彼の話術にみるみる引き込まれる慶喜、その表情は次第に明るくなります。
慶喜は、昭武が何倍にも大きく成長し、無事に帰国できたのも
篤太夫が骨を折ってくれたおかげだと礼を言います。

「何も申し上げますまい。どんなにご無念だったことでございましょう」
去ってゆく慶喜に、篤太夫は言葉をかけ、平伏します。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
──────────
[出演]
吉沢 亮 (渋沢篤太夫)
高良 健吾 (渋沢成一郎)
橋本 愛 (渋沢千代)
田辺 誠一 (尾高惇忠)
満島 真之介 (尾高長七郎)
岡田 健史 (渋沢平九郎(回想))

草彅 剛 (徳川慶喜)
町田 啓太 (土方歳三)
成海 璃子 (渋沢よし)
村川 絵梨 (吉岡なか)
藤野 涼子 (渋沢てい)
──────────
北大路 欣也 (徳川家康)
木場 勝己 (大久保一翁)
細田 善彦 (高松凌雲)
──────────

平泉 成 (渋沢宗助)
朝加 真由美 (渋沢まさ)
和久井 映見 (渋沢ゑい)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
──────────
制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・橋爪 國臣
演出:黒崎 博

|

« 大河ドラマ青天を衝け・(25)篤太夫、帰国する ~生きてくれ平九郎!~ | トップページ | 大河ドラマ青天を衝け・(27)篤太夫、駿府で励む ~徳川最後の戦い~ »

NHK大河2021・青天を衝け」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大河ドラマ青天を衝け・(25)篤太夫、帰国する ~生きてくれ平九郎!~ | トップページ | 大河ドラマ青天を衝け・(27)篤太夫、駿府で励む ~徳川最後の戦い~ »