« 大河ドラマ青天を衝け・(27)篤太夫、駿府で励む ~徳川最後の戦い~ | トップページ | 大河ドラマ青天を衝け・(29)栄一、改正する »

2021年9月26日 (日)

大河ドラマ青天を衝け・(28)篤太夫と八百万(やおよろず)の神 ~明治政府編開幕!~

「西洋でいうところの『コンパニー』を始めさせていただきたい」
渋沢篤太夫は、駿府で商法会所を設立し、新しい道を歩みだします。

民部公子に随行したが、自分一個の才覚で4万両の利益を蓄え──と、
その篤太夫の手腕と評判はたちどころに世の中に知れ渡り、
明治新政府側の者たちも、篤太夫に着目します。
「フランスで4万両の利ば蓄えた!?」

一方、箱館の旧幕府軍は新政府軍との戦いに敗れ、集結しました。
渋沢成一郎は雄叫びを上げながら箱館から離れます。

明治2(1869)年の夏、
全国の藩が領地と領民とを天皇に返還する「版籍奉還」が行われ、
篤太夫たちがいる駿府藩は「静岡藩」となりました。

篤太夫は、遠州中泉奉行の前島来輔(前島 密)と対面します。
前島はペルリをその目で見て、国を救いたい一心で直臣になった途端に
幕府が転覆してしまうという、篤太夫と似た境遇を持っていて、
篤太夫は前島を身近な存在として受け入れます。

徳川慶喜は謹慎を解かれ、一橋家にいる妻の美賀を駿府に呼びます。
一橋家にいたころの、徳信院直子への嫉妬に狂っていた地獄の日々が
今となっては笑い話で、一緒に暮らすのも恥ずかしいぐらいです。
直子は、美賀の背中をそっと押し、駿府に送り出します。

 

篤太夫に東京から召し状が届いたのは、美賀が静岡に向かっているころ。
商いが忙しく、半年後であればなんとかと難色を示しますが
どうやら新政府が篤太夫に出仕を求めているらしく、それを知ったとたん
冗談ではない! と顔色を変えて反発します。

しかし、その新政府からのお声がけを受けるべきであると言ったのは
慶喜であるようで、篤太夫は明らかに困惑しています。

篤太夫は、自宅に訪ねてきた向山一履の説明で、
新政府の財政関係を束ねるのが大蔵省で、宇和島出身の伊達宗城卿を筆頭に
佐賀の大隈重信が大輔、長州の伊藤博文が少輔だと知ります。
薩摩・長州・土佐出身の者たちだけでは政治ができるわけもなく、
越前や異国に詳しい佐賀が加わってはじめて形を成しているのです。

篤太夫は断りを入れるべく、まず東京に向かうことにします。
その道中、箱根では、一橋家家臣の鵜飼勝三郎と懐かしの対面です。

かつて徳川幕府の象徴だった江戸城は、皇城と名を改め
新政府の拠点として使われていました。
「異人商館の焼き討ちを企てていた身が、新政府さまで働くとは」
篤太夫が新政府に来る前提で案内する大蔵少輔・伊藤博文に、
自分にはさらさらそのつもりはないと態度で示します。

しかしそれが思わぬ方向に話が進んでしまい……かつて伊藤も
品川のイギリス公使館を焼き討ちにし、それなのにイギリスに留学するなど
なかなかおかしな経歴の持ち主でありまして、
篤太夫もすっかり伊藤のとりこになりかけますが「いや違う!」

篤太夫は伊藤とともに築地の大蔵大輔・大隈重信邸に向かいます。
篤太夫は、徳川慶喜がナポレオン3世からもらい受けたはずの
良馬が大隈屋敷につながれていたことをチクリと刺しつつ
「民部大蔵省租税司正(かみ)」という、もらい受けたばかりの職を返上します。

篤太夫には静岡での務めもあるし、大蔵省内部に知人がひとりもおらず
本音を言えば、慶喜から卑怯にも政を奪った薩長の新政府に
元幕臣の自分が勤めることができるはずもない!というのが理由です。

「おいも、いっちょん、いっちょん、なーんもしらん!」
新時代を始めようという時に、そのやり方を知る者などひとりもいない。
知らずば辞めるべきなら皆が辞めなければならず、誰もいなくなる。
誰かがやらんばいかんばい! と大隈は佐賀弁でまくしたてます。

佐賀で学んだ大隈は、とにかく今の世の中を壊さなければと思い
いざ壊れてしまったら、新たに組み立てなおさなければならない。
大隈は机に手をつき、篤太夫を見つめて伝えます。
「君は、新しか世ば作りたいと思うたことはなかか?」

「俺が守ってやんべ! この国を」と高島秋帆に誓った幼いころ。
「百姓といえども大いに戦ってこの世を変えたい」と考えたころ。
「この世を変えるには、天子様をいただき王道をもって天下を治める!」
「どんなことになっても、この手で日本のために尽くします」

そんな、これまでのことが篤太夫の脳裏をかすめていきます。
大隈は、法律、軍事、教育と、御一新は終わりではなくこれからであり
大蔵省で見ても、貨幣制度、税の取り立てなどまだまだです。
そのために外国事情に通じた優秀者を集め、努力するしかない。

「すなわち、日本中から八百万の神々ば集むるも同じ!」
みんなが骨を折り、新しい国を作ろうではないか、と説得され、
篤太夫は胸のざわつきを感じずにはいられませんでした。

 

篤太夫は静岡に戻り、完全に言い負けた、と完敗宣言です。
「お前さまより口の立つ方がおられるとは」と千代はクスッと笑います。

命を懸けて横浜焼き討ちを計画すれば中止に追い込まれ、
江戸幕府討幕を目指せば一橋家に仕えることになり、
一橋家で己の道を見つけたかと思えば幕臣となり、主を失い、
静岡で安住の地を見つけたと思えば、荷物をまとめて新政府に来いと言われる。

「俺の道は行き止まりばかりだ。なんでこうなる!」
畳に突っ伏して駄々っ子のように文句を並べる篤太夫ですが、
千代にとっては、篤太夫がどんな境遇であっても、最後には
生きて帰ってきてくれることだけが喜びなのです。

その言葉を聞くと篤太夫は、喜作も生きてた、と衝撃の事実を伝えます。
成一郎は、東京の軍務官糾問所に投獄されているのです。
もし幕府瓦解の時に自分も日本にいれば、同じ目に遭ったかもしれない。
あいつは、もう一人の俺だ──。

今回の東京訪問についての報告を慶喜に伝えます。
威勢のいいことを言う篤太夫ですが、静岡には岩倉具視が放った密偵が
多く潜んでいるらしく、発言に気を付けるように注意されます。
とかく、新政府が混乱していたとしても慶喜は感知せずで通すつもりです。

まだまだ日本は危急存亡の時、いっそ東京に行ったらどうだ?
行きたいと思っているのであろ? と言われ、篤太夫は口をつぐみます。
「これが最後の命だ。渋沢、この先は日本のために尽くせ」
篤太夫は頭を下げ、静かに受け入れます。

篤太夫は、士分に取り立てられた際に平岡円四郎に名付けられた
『篤太夫』の名前を返上し、『栄一』に戻すことにします。
馬で遠駆けするときに追いかけられた若武者もそう名乗っていました。
「渋沢栄一……そんな名前であったかなぁ」と慶喜は微笑みます。

 

静岡に到着した美賀は慶喜と対面し、あまりにも離れて暮らしたため
慶喜がこんな顔だったかしらととぼけてしまいますが、
それでも慶喜がここまで生き残ってくれたことには感謝しています。

慶喜が大坂から江戸に戻った際に、天璋院や静寛院宮から
慶喜に腹を切るように勧めよと言われ続けた美賀には、実は野望があります。
「わらわは何としても、御前のお子を残してみせる」

 

島津久光がへそを曲げ、西郷吉之助が下野するなど薩長が当てにならず
五代友厚も去り、木戸孝允は長州の騒動で手いっぱい。
思いのほか薩長が当てにならないと新政府の会議で議題に上がりますが
大久保利通や岩倉具視は、そんな雑音を気にも留めていません。

そこに現れた、出仕して早々皇城をぐるりと視察した栄一です。
来ていきなり、こりゃだめでございます、と聞こえよがしに報告。
「このままでは新政府はあっという間に破綻します」

中で働いている者たちは、たしかに懸命に励んでくれてはいますが
5年後10年後、100年後を見据えて働くものがひとりもいない。
新しい国を作るなら高いところから何をどうすべきかを
道筋を立てて考えなければならない!

栄一を追いかけて探し回った伊藤は、栄一にそっと耳打ちします。
「……ここは大蔵省ではないぞ」
ともかく明治2年11月、栄一は明治新政府に出仕しました。
その驚きの登場は、大久保や岩倉、松平春嶽たちに大きな印象を残しました。


作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
──────────
[出演]
吉沢 亮 (渋沢篤太夫)
高良 健吾 (渋沢成一郎)
橋本 愛 (渋沢千代)
志尊 淳 (杉浦愛蔵)
山崎 育三郎 (伊藤博文)
波岡 一喜 (川村恵十郎)

草彅 剛 (徳川慶喜)
美村 里江 (徳信院)
川栄 李奈 (美賀君)
金井 勇太 (三条実美)
三浦 誠己 (前島 密)
朝倉 あき (大隈綾子)
──────────
木場 勝己 (大久保一翁)
田中 要次 (萩原四郎兵衛)
要 潤 (松平春嶽)
山内 圭哉 (岩倉具視)
菅原 大吉 (伊達宗城)
遠山 俊也 (鵜飼勝三郎)
山中 聡 (田辺太一)
岡森 諦 (向山一履)
石丸 幹二 (大久保利通)
大倉 孝二 (大隈重信)
──────────
制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・石村 将太
演出:黒崎 博

|

« 大河ドラマ青天を衝け・(27)篤太夫、駿府で励む ~徳川最後の戦い~ | トップページ | 大河ドラマ青天を衝け・(29)栄一、改正する »

NHK大河2021・青天を衝け」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 大河ドラマ青天を衝け・(27)篤太夫、駿府で励む ~徳川最後の戦い~ | トップページ | 大河ドラマ青天を衝け・(29)栄一、改正する »