大河ドラマ青天を衝け・(27)篤太夫、駿府で励む ~徳川最後の戦い~
──こんばんは。徳川家康です。
さて、明治元年も年末だ。
私の作った世界有数の大都市「江戸」は
「東京」に変わるやいなやすっかり寂れてしまいました。
大名は国元へ帰り、商人や町人も多くが去り、
100万人を超える人口は半分以下になった。
一方、私の隠居所でもあった駿府では、まだ6歳の当主徳川家達の元に
行き場を失った幕臣やその家族など10万人が一気に流れてきました。
とはいえ徳川の石高は元の10分の1、多くが仕官できず
先の見込みもなくフリーター状態となってしまいました。
そんな中、篤太夫は……──
篤太夫は、駿府藩の勘定組頭の役目を仰せつかりますが、
民部公子徳川昭武の直書を渡し、その返書を水戸に持って帰れとの命で
駿府に立ち寄っただけであり、働き口を探しに来たわけではありません。
駿府藩政をあずかる大久保一翁(忠寛)は、慶喜の意向だとします。
水戸は天狗党の一件が火種となって、武田耕雲斎の孫たちが報復に明け暮れ
いま水戸に入れば昭武に重用され、それが妬みを生んで
平岡円四郎の二の舞になるのを慶喜が恐れてのことなのです。
思慮が足りずお恥ずかしい、と駿府に残ることには同意しましたが
篤太夫は、勘定組頭への仕官は辞退したいと言い出します。
わずかでも幕臣として扱ってくれた百姓の矜持(きょうじ)として
この地で百姓か商人として心穏やかに余生を過ごしたいと考えているわけです。
慶喜と対面でき、水戸へ向かう予定が駿府での任を命じられてしまい
忠義を尽くせず残念極まりないと昭武に宛てて書状を出します。
水戸でその手紙に目を通した昭武は、兄慶喜と篤太夫の関係性が
スペシャルなものなのだな、とつぶやきます。
国を守る、と最初に言い出したのは水戸であり、薩摩も長州も
水戸や徳川斉昭の考えを尊んでいたはずなのに、新政府の蚊帳の外に置かれ
しかし何かできることはまだあるはずだ、と
パリで過ごしたみんなに恥じないように水戸で過ごしていくつもりです。
かつて篤太夫が、パリで行動を共にした杉浦愛蔵は
帰国後は駿府の学問所に勤めていて、幕臣の子弟だけでなく
身分を問わず漢学や洋学を教えて生計を立てています。
僕は洋行できたからよかった、とつくづく思うのは……。
今の駿府には、禄もなく扶持米で食いつなぐ元幕臣も数多くいて、
彼らの多くは空き家や馬小屋に泊まるほかなく
民からは「お泊りさん」などと呼ばれて厄介者扱いされるありさまなのです。
そんな者たちの中に、篤太夫は川村恵十郎の姿を見かけます。
そこに、篤太夫を勘定組頭に推挙した平岡 準が「諦めんぞ!」と来て
今は太政官札があるから何とかなっているが、どうにか
篤太夫の力量をもって助けてほしいと泣きついてきます。
篤太夫もかつて三野村利左衛門に見せてもらったことがある、
新政府が諸藩の財政を救うために1石1両の割合で藩に貸し付けた太政官札は
年3分の利子で13年の年賦となっておりまして、駿府藩は70万石なので
70万両のうち取り急ぎ53万両を用立ててもらっているわけです。
財政を救うとは新政府の建前で、単なる借金だという篤太夫は
うっかり使ってもし返せなかったら駿府は破綻すると言います。
しかしそれに気づいていなかったため、53万両のうち28万両をすでに使い
蔵に残るのは25万両、半分未満です。
篤太夫は藩の役人たちに、太政官札は藩の費用とは思わず別会計にと勧めます。
そして蔵に残る25万両を自分に預けてほしいと申し出ます。
篤太夫は、この25万両と商人の金をなるだけ多く集めて新しい事業、
「コンパニー」を始めたいと言い出します。
小さな金が集まって、大きな資本となる──篤太夫がパリで見てきた
株式会社の原型となる形を日本でも始めようというわけです。
しかし幕臣たちは商人と一緒に働けないと説明会の座を蹴り
商人たちも、金がないと出資を渋りだします。
篤太夫はその後も旧幕臣や商人たちの説得を続け、
銀行と商社を兼ね備えた「商法会所」を設立します。
篤太夫は東京に出て、三井組事務所の番頭・利左衛門と再会します。
そしてこの太政官札を正金に変えられるか相談するのですが、
利左衛門は太政官札の額面の2割程度でしか換えてくれません。
困惑する篤太夫を置いて、さっさと立ち上がって行ってしまいます。
篤太夫は換えてもらった正金で、〆粕、干し鰯、油粕、糠を揃えます。
途中、ある男が話しかけてきますが、散切り頭で
この辺りをうろつかないほうがいいというありがたい忠告をもらいます。
市場周辺は荒っぽい官軍崩れの男たちであふれており、物騒なのです。
新政府が官軍兵に禄を払えず、商人や町人に対して
たかりやゆすりをしているのを新政府は黙認しているのです。
王政復古が叶えば、日本を富ませる新時代が始まると思っていたのに
上が変わっても相変わらずの侍の世に嫌気がさしているようです。
「薩摩の五代じゃ」と名乗る彼こそ、横やりを入れられたことで
パリ渡航中に借款が作れなかった、あの五代才助です。
「待ってくれ! あなたのせいで!」と篤太夫は必死に追いかけますが
気づいたときには五代の姿はありませんでした。
血洗島では、千代とうたが駿府に引っ越すにあたってその準備が
進んでいましたが、うたは市郎右衛門やゑい、姉たちに会えなくなるのは
とてもさびしいと今にも泣きそうな声でつぶやいています。
家を継ぐ者であったはずなのに申し訳ねえです、と頭を下げる千代に
無理せず、身体には気を付けろと市郎右衛門は送り出します。
駿府に到着した千代とうたですが、篤太夫の案内で居住の部屋に通されます。
大きなお屋敷の中は仕事スペースがほとんどでして、
居住する部屋はとても狭く、お蚕さまのお部屋より狭いです。
「小っせえだに!」とうたはちょっとショックです。
うたは屋敷中を走り回り、ちょっとした探検気分です。
そこでは、商人と旧幕臣の板挟みになっている父親の姿を目にすることになります。
篤太夫は、時代は変わったのだからと旧幕臣には刀を捨て
そろばんをはじいて商人と手を合わせてもらいたいと言い、
商人には卑屈になられても困るし、金もうけだけすればいいという
道理に背く考えは捨ててもらいたいと強く発信します。
茶問屋の萩原四郎兵衛は、篤太夫の考えに共感し、協力を申し出ます。
そして当初は強く反発していた川村恵十郎も、刀大小を預け
「何から始めればいいのか、教えよ」と先陣を切っていきます。
その姿に、旧幕臣たちもこぞって刀を預け、仕事を始めます。
こうして篤太夫が手掛けた商法会所は軌道に乗り、
順調に利益を出すようになっていきました。
箱館では、松前が破られて包囲される危険性があったために
旧幕府軍はやむなく五稜郭へ撤退し、土方歳三は、日野の家族に宛てた
手紙と写真を布に包んで、市村鉄之助に託して送り出します。
我らはいずれ負ける、勝ち目はない、と読んだ土方は、せめて
新選組副長らしく潔く散りたいという気持ちでいるわけですが、
ならば俺も、と言う渋沢成一郎には生きるように説得を試みます。
生きて行く末を見届けろ、生きているほうが辛いかもしれぬ、と。
「お主の友は生きると言ったぞ」という土方の言葉を胸に、
失意と砲弾の中、成一郎はとぼとぼと戦場を離れていきます。
5日後、五稜郭は開城し、ここにすべての徳川の戦いが終わりました。
商法会所に残って、慣れない手つきでそろばんをはじく川村は
五稜郭まで戦い続けた旧幕府軍の者たちは、
最後まで忠義を貫いたのなら本望であろう、とつぶやきますが、
川村自身、平岡円四郎の命も守れず、戦でも死に損ない、
徳川に捧げられなかった命を持て余して駿府までやって来たのです。
徳川のために何かできないものかと考えあぐねた結果なのです。
別に禄だけもらおうと思って流れ着いたわけではありません。
「手伝います」と、篤太夫は川村の隣に座ってそろばんをはじきます。
築地の大隈重信邸に伊藤博文が駆け込んで、箱館が落ちたことで
自分たちが正式な日本政府だと胸を張れる、と大喜びです。
大隈の手元には、フランス政府から送られてきた
昭武のホテル費用などの払戻金15,000両があるのですが、
新政府国庫に納めるつもりが、「これは昭武のために幕府から出した金だ」と
昭武一行の財務担当が言い出し、駿府に引き渡せと要求しているらしく、
今ではそのシブサワが駿府で商人と組んで金もうけしているらしく
新政府としては、東京から徳川を追い出したというのに
駿府で力を蓄えられてしまっては油断ができぬと警戒しています。
──駿府藩に渋沢篤太夫というものあり、民部公子に随行したが
自分一個の才覚で4万両の利益を蓄え、この4万両を駿府藩内に配分──
「フランスで4万両の利ば蓄えた──!?」
あまりのことに、大声で驚く大隈重信です。
手紙に記されていた「ムッシュ・シブサワ」の名を
五代は強く心に止めおきます。
作:大森 美香
音楽:佐藤 直紀
題字:杉本 博司
語り:守本 奈実 アナウンサー
──────────
[出演]
吉沢 亮 (渋沢篤太夫)
高良 健吾 (渋沢成一郎)
橋本 愛 (渋沢千代)
成海 璃子 (渋沢よし)
藤野 涼子 (渋沢てい)
志尊 淳 (杉浦愛蔵)
板垣 李光人 (徳川昭武)
草彅 剛 (徳川慶喜)
山崎 育三郎 (伊藤博文)
町田 啓太 (土方歳三)
波岡 一喜 (川村恵十郎)
細田 善彦 (高松凌雲)
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北大路 欣也 (徳川家康)
ディーン・フジオカ (五代才助)
原 日出子 (貞芳院)
木場 勝己 (大久保一翁)
田中 要次 (萩原四郎兵衛)
大倉 孝二 (大隈重信)
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和久井 映見 (渋沢ゑい)
イッセー 尾形 (三野村利左衛門)
小林 薫 (渋沢市郎右衛門)
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制作統括:菓子 浩・福岡 利武
プロデューサー:板垣 麻衣子・石村 将太
演出:村橋 直樹
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